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第4話 夢
目が覚めたら、私は学校にいた。
あれ? 起きたはずなのに。
でも、教室の匂いも、黒板のチョークの粉の匂いも、いつも通りだ。
ああ、夢か。夢の中の学校。
机に座る。隣には友達がいるはずだ。
「おはよう」と言ったけれど、返事はない。
いや、夢だからかもしれない。いつも通りだ。
授業が始まる。
先生は笑顔で板書を進める。
でも、書いている文字が少しずつずれている。
「2+2=4」と思ったら、「2+2=5」と書かれていた。
ああ、夢だな、と思う。普通のことだ。
休み時間になった。校庭に出る。
風が強くて髪が揺れる。
友達と走り回るはずだったが、誰もいない。
笑い声も、足音も、自分のものしかない。
それでも普通に走る。夢の中だから、問題はない。
夕方になり、目が覚めた。
ああ、やっぱり現実か。家に帰る。
でも玄関を開けると、母が右手を上げて待っていた。
そう、今日も、殴られる時間だ。
夢から現実へ、ただ移っただけ。
普通の一日、また始まる。