第2話 家族
今日は少し早く起きられた。
朝ご飯はいつも通り、パンと牛乳。
トースターの音がキッチンに響く。香ばしい匂いが部屋に広がる。
それだけで、今日は良い日になる気がした。
玄関に向かう途中、また殴られた。
右手で、肩のあたりを。少し強めだった。
「今日は強いな」と思ったけれど、別に驚かない。
うちでは普通のことだ。朝の支度のひとつとして数えてもいいくらいだ。
学校に行くと、友達といつも通り話した。
授業もいつも通り。板書を写し、先生の話を聞く。
頬が少し腫れているのに、誰も気づかない。自分でも気にしない。
友達と笑うことが、こうして普通にできることが少し不思議だった。
昼休みには弁当を食べた。
母が作ってくれたらしい。美味しかったかどうかはよく覚えていない。
でも、昨日よりも赤いものが多いような気がした。
「今日は彩りがいいな」と思った。特に理由はない。
帰宅すると、また殴られた。
夕食前に、右手で肩と背中を。やや力が強い。
「宿題をしてなかったからだろう」と思う。
怒られることも、こうして受け止めることも、すべて普通のルールの一部だ。
今日で2回目だ。少し多いほうだろうか。
でも、明日はどうだろう。何もない日かもしれない。
明日もまた、普通に起きて、普通に学校に行く。
普通に…家に帰る日になるだろう。