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牧野の闘ひ

〈秋立ちて日本の猫はにやあと啼く 涙次〉



【ⅰ】


 * カンテラ事務所付「開發センター」の庭樹に巢食つてゐる【魔】、「翁」だが、最近近所の子供たちにモテモテなやうである。庭樹の中には、樹齢100歳になんなんとする(珍しい事だと聞いた)(くぬぎ)があるが、まだまだ元氣で(「翁」の如く)、その甘い樹液には、兜蟲、鍬形蟲など、夏の甲虫類が集まるのである。近頃の子供たちは、それら蟲たちの獲り方を知らない。「翁」が、好々爺然としてその方法を教えてくれる、それから、木の登り方を教えてくれると云ふので、近所の子供たちは、「翁」彼に懐いてゐるのである。



* 当該シリーズ第47話參照。



【ⅱ】


 もともとフォトグラファー・安条展典の持ち物だつた地處である。彼が* 乱心し、自らのスタジオに放火をした、その業火を潜り拔けて、先の櫟の樹は生き殘つた。庭樹類は他は全滅したが、櫟の老木は助かつた。それに、「翁」は憑依してゐるのだ。植樹された樹々の中で、櫟は重鎮(?)らしさを振り撒いてゐた。



* 前シリーズ第147話參照。



【ⅲ】


 安条が、* この焼け殘つた地處を、カンテラ一味に権利移譲した事、そして一味がそこに「開發センター」を建てた事、羨んでゐる、或る黑い影があつた。** 魔界の「メカニック集團」、である。カンテラ一味との死闘の末、斃された彼らであつたが、いとも簡單に蘇生した。例の(前回參照)「八人委員會」が決めた事である。尚、「もう一人の」肝戸が拔けた穴はその儘になつてゐるから、正式には「七人委員會」なのであるが... 彼らは云ふ、「カンテラの一味が手出しをしなければ、本來我らの地處となるべき土地だつたのだ。そして、『開發センター』を建てゝゐたのは、我らだつた筈‐」。他人の物は、慾しくなるのは人情。尤も、【魔】最前線バリバリで働く彼らに、「人情」なるものが備はつてゐたかだうかは、定かではないが。



* 前シリーズ第174話參照。

* 当該シリーズ第41~43話參照。



 ⁂  ⁂  ⁂  ⁂


〈何でもない事ばつかりを歌句にする我が権限の及ぶ劃りは 平手みき〉



【ⅳ】


 で、彼らが一團となつて、「開發センター」を攻めて來た。使ひ魔含め、大勢の【魔】たちが、「センター」敷地を包囲してゐる...!! 一大事である。管理者である、牧野は拳銃に彈丸を籠めた。飽くまで、自分一人で、この「センター」を守つてやる、と云ふ悲愴な覺悟である。だが... やはりと云ふか、牧野は「使ひ魔」たちに捕らへられてしまふ。時軸はやさ男だから、全く役に立たないし、「翁」は老齡である。万事休す。と、牧野の體内から聲が聞こえる...



【ⅴ】


 謝遷姫の聲だ。「ふる、キツサウダカラ、助太刀スルゾ」‐「あ、遷ちやん。正直助かるよ!」‐牧野、使ひ魔の頭をこづいた。十倍返しになつて、牧野はボコられた。失神‐ すると「ハゝゝ、莫迦メ。眠レル『龍』ノ目ガスツカリ醒メタワ」‐久し振りの「龍」の立ち昇る様は、壯観だつた。龍の首筋に、遷姫が乘つてゐる。

「全ク、男ヲ見セヤウトシテイルふるニ、大勢デ寄ツテタカツテ、ハ卑怯ダゾ!!」‐その通り、牧野は自分は「センター」管理者なのだから、カンテラたちの手を借りず、自分ひとりで自分の持ち場を守らうとしてゐた‐



【ⅵ】


「龍」は軒並み【魔】どもをばりばりと嚙み潰した。「こ、これは‐ この男にこんな術があるとは、聞いてゐなかつたぞ!!」‐「七人委員會」色めき立つた。これは、「もう一人の」肝戸から齎された、一味の内部情報には、牧野と「龍」の関はりは、示されてゐなかった、と云ふ事である。「七人委員會」は、これ以上メンバーを減らす事は出來ぬ、とか尤もらしい云ひ譯をしながら、魔界に帰つて行つた。「メカニック集團」は見殺しにされた譯である。



【ⅶ】


 氣が付いた牧野。「龍」と遷姫を再び體内に格納すると、云つた。「有難う、遷ちやん。これで俺の男が立つたよ、感謝します」‐「イエイエ。久シ振リニ暴レラレテ『龍』モサツパリシタツテ」


 で、前述の通り、この事はこの場に居合はせた面々のみの知るところとなつた。牧野の誇りが、「センター」を救つた、と云ふお話、でした。牧野は、一味メンバーとして、成長したな・笑(永田)。



 ⁂  ⁂  ⁂  ⁂


〈大事ない事の一つや秋が立つ 涙次〉



 ぢやまた。アデュー!!


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