表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/14

00いきなり追放




 「今日よりお前を『地獄の裂け目』へと”追放”する」

 「え?追放?」


 父親に追放と言われ、俺は首を傾げる。


 追放とは、どういう意味なのか……そう尋ねようとした瞬間。


 トン。

 軽く背中を押される。


 その後に、俺の全身に浮遊感が漂う。


 落下しているのだ。


 「……………………………………へ?」


 俺は素っ頓狂な声を出す。


 実の父親の手によって、底の見えない大穴の中へ突き落とされた。


 そう理解出来たのは大穴へ落下している最中に、不意に大穴の淵に立つ父親を見た時だ。


 「父さん?!」


 実の息子を大穴へ突き落したのに、父親の顔には一切の憂いも後悔も無かった。


 獅子が子育ての際に、我が子を崖に突き落として、這い上がってきた強い子だけを育てると言う話は聞いたことがある。

 もしや、これも…そうなのか?


 ……………………って!


 いや!いや!いや!いや!

 可笑しいだろ!!


 俺が突き落とされた大穴は、『地獄の裂け目』と呼ばれている大穴。


 穴の広さは数個の屋敷が丸々入るぐらい大きく、『地獄の裂け目』と言う名前の通り、まるで地獄に続いているのかと思うほどの底が知れない大穴である。


 『地獄の裂け目』の下がどうなっているのかは、誰も知らない。

 入る者はいれど、出てくる者はいない。

 生還不可能の地底の入口である。


 …………と、突き落とす前に父親は俺に、そう言った。


 そんな大穴に突き落としておいて、這い上がらせる気なんてないだろ!


 『地獄の裂け目』に落ちる中、俺は何度も困惑の感情が芽生える。


 突き落とした父親は何を考えているのか。

 一体全体、何の理由、俺を突き落としたのか。

 何で、一人息子を突き落としておきながら、そんな平然とした顔しているんだよ!


 だけど、ふと…思い出す。


 ……………………ああ、そう言えば、俺が物心を突いた時から、父親が平然とした顔以外の表情をしたのを見たことが無かったな。


 日常生活を送っている時も平然としており、俺が怪我をした時も平然としていたし…………俺が【ジョブ】で不遇職である『ドラゴンテイマー』を授かった時も平然としていた。


 何の感情も抱いていない顔。

 きっと俺なんかに興味も無かったのだろう。


 だけど、自身の息子が不遇職の持ち主。

 そんな事実は父親的には許せない事だったのだろう。


 だから、俺を追放した。


 「クソ!」


 俺は悪態をつく。


 ちきしょう!

 ちきしょう!

 ちきしょう!


 心の中を満たしていた困惑が徐々に、父親への怒りに変わって行く。


 何で、俺は父親の都合で、こんな場所へ追放されなくちゃならない!

 そりゃあ、父親の【ジョブ】に比べれば、俺の【ジョブ】なんて大したことが無いかもしれない。


 でも、俺だって、望んで不遇職を得たわけではない。


 俺だって、出来れば父親のような”超当たり職”を得たかったよ。


 俺はどんどんと大穴の底へ落ちていく中で、不遇職を得てしまった自身の不運さと父親への憤怒を持ち合わせていたが、次第に別の考えが浮かんでくる。


 このままでは、終わりたくない。

 不遇職と馬鹿にされながら、終わるのなんて、嫌だ。


 そんなに不遇職が気に入らなかったら、強くなってやるよ。

 国で最強と言われている父親を超えるほどに。


 俺を馬鹿にした連中、そして父親を見返したい!!


 俺は誓う。

 もし、この先…『地獄の裂け目』から脱出して、また父親と出会う事になった際は、自身の【ジョブ】で最強となり、父親を必ず見返す!!


 そう、心に誓いながら、俺は大穴の底目掛けて落ちて行った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ