マーティン3/4
数日後ミランダが登城して私の部屋に陛下と王妃、そしてミランダが集まった。
私のベッドの周りに椅子を設え話す事になる。
「ミランダ態々呼び出てて済まない」
「そんな陛下、皆様私にその様に頭を下げる事はお止めください、お呼びと伺えば馳せ参じますわ」
久しぶりに見たミランダは相変わらず綺麗な人だった。
「学園に入学した時の進言を詳しく話してくれないか?」
「えっ?あんな昔の事をですか?」
「頼む」
再び陛下が頭を下げた為、ミランダは恐縮しながら話し始めた。
「昔ですわね、私達がまだ10歳にも満たない頃、王太子様の婚約者候補は3名いました、覚えてお出でですか?」
「あぁ覚えている」
「その中に初めはミシェル様は入ってなかったことは?」
「⋯⋯そうだったか?」
「なんだお前はそんな事も覚えてなかったのか?」
陛下に言われ記憶を辿る。
そもそもあんなに近くにいた上位貴族の娘が婚約者候補に入ってなかった事が不思議だ。
その疑問も合わせて訊ねると陛下が教えてくれた。
「王子の婚約者候補は議会で2名選ばれる、3名だったのはお前が王太子になると皆の心積もりがあったからだ、人数の制限があれば当然公爵家から先に選ばれる。お前の婚約者候補は公爵家が2名と後辺境伯の娘の3名だった」
そうだ!辺境伯⋯⋯いや待ってくれそれは⋯。
「そうだ、ソフィーが入っていた。忘れていたのか?」
「⋯⋯」
「ソフィーもコールデン伯爵も公には辺境伯と名乗ってはくれなかったからな。軍事を鍛えるつもりはないと言っておったから、それを免除したんだ。公爵位を尽く断られて私も意地になったのもある」
コールデン伯爵家は何度叙爵を打診しても断る家だった。
国にとって重要な家だからこそ公爵家になって欲しかったのだろうと陛下の気持ちを推察する。
「ソフィー様はこちらに来られた時に挨拶させて頂きました、2つ下でまだ8歳であられたのにとても丁寧な所作で私も圧倒されましたのでとても印象に残っております。でもその挨拶のみで辞退されたと聞きました、おそらくそれでミシェル様が入られたのかと推察しました。でもそれがミシェル様の学習にもなったのかと思われます」
「どういうことなんだ?」
「誰かが辞退をすれば自分が残れると思ったのでは?」
ミランダの言葉がよくわからなかった。
そしてソフィーの幼い頃を思い出す、そうだ確かにソフィーの所作はとても美しかった。
何故忘れていたんだ!辞退されたから説得に領地に行ったではないか。
その時にサミュエルはソフィーに一目惚れしたんだな。
「王太子殿下が覚えていらっしゃらないかと思いますので、不敬ではありますがお話しますね。婚約者候補のお茶会は覚えておいでですか?」
「あぁ覚えてるとも」
「本当に?」
「どういう事だ?」
「婚約者候補とのお茶会は仲を各々深める為の物でした、そこで第一段階として相性などを見ると王妃様にご説明頂いたのです」
「あぁ」
「ピンときませんか?」
「なんだ?謎掛けか?」
「いえ、王妃様は王太子様と各々の相性を見ると仰ったのです、だからお茶会は個別に設定されておりました。そうですよね王妃様」
「えぇそうよ、スケジュールも私の女官達が決めていたわ。でも報告によるとマーティン貴方が滅茶苦茶にしてしまったのよね、思ってることがあるなら言ってほしかったわ」
「えっ?」
「私とのお茶会の日は必ずミシェル様、セルビアン様、サミュエル様がいらっしゃいました、個別のお茶会の筈ですのに可笑しいですわよね。そして私は他の方々のお茶会には呼ばれておりませんわ」
その時の事を思い出そうとする。
そういえばもう一人の婚約者候補の公爵家の娘の時もミシェル達はいた。
常に4人でいたからミシェルの時に他の婚約者候補はいなかったのに気づかなかった。
「私は常に皆とお茶会なのだと思っていたのだ」
「それでも変に思われなかったのですよね、それほどミシェル様と一緒にいらしたという事です、そしてそのお茶会のあとに必ずミシェル様に言われましたわ」
「「「?」」」
「『ごめんなさいねミランダ様、断ったのだけどマーティンがどうしてもというから、3人だとミランダ様も気まずいと思ってサミュエルとセルビアン様もお呼びしたのよ、感謝してね』と」
「何だそれは!」
「それで私は辞退しました、そんなにしてまでミシェル様をお望みならば私は不要だと思いまして」
「そんなことはない!」
「ですがマーティン様は主旨を理解されておられなかったとしても、お茶会の時は4人でずっとお喋りされて、話題も私の知らぬことばかりでした、それでは相性も何も図れませんし、そうまでして排除したいのかとお父様と話して辞退したのです」
「そんな⋯⋯ではもう一人も⋯」
「あちらは2回のお茶会でミランダは6回のお茶会で辞退したわよ、今の話しを聞いたらよく6回も我慢してくれたものだわ、ごめんなさいねミランダ。でも何故あの時にそのミシェルの言葉を教えてくれなかったの?」
「王妃様、10歳の私にもプライドはあったのです、望まれていないと自分で認めるのは意外と苦労したのです」
「そう、全てどれもこれも王家の責任ね」
私は言葉が出なかった。なんて事を!王家が決めた決まり事の茶会を私は自分の手で壊していたのか。
「その後エザリー公爵家のスノー様とお話しする機会がございまして、そこで聞きましたのは私に言った言葉よりも酷いものでした」
「⋯なんと?」
「マーティン様がスノー様と二人で話したくないから何を言われてもミシェル様にそこにいるようにと頼まれたと仰ったようです」
「言ったのか?」
「言っておりません、そもそもそんな事をミシェルに頼む筈がない、ただあの頃は⋯」
「何だ」
「ミシェルの婚約者に誰がなるのかと言う話をよく、セルビアンとしていました。3人で張り合ってたような気がします」
「それで解ったわ」
王妃様が何か知ってるのか?そう思って顔を向けると泣いていらした。
「セルビアンはミシェルを貴方から解放してあげないと行けないんだと言っていたの。最後に私へ遺言のように。きっと何かミシェルに言われていたのよ!あの女は兄弟で寵を争わせて二人の間をきっと行ったり来たりしていたのよ、そうでなければセルビアンがあんな事するわけ無いわ!」
「あの、こんな事を言うのは気が引けるのですが気のせいかもしれないと思って言えなかったのです。夜会の時にミシェル様とセルビアン様がすれ違いざまやクラバットの歪みを直して差し上げていた時に手紙を渡していたような気がして、見間違いではないかと思って言えなかったのですが、お二人は手紙のやり取りをしていたのではないでしょうか?」
私はミシェルの裏の顔を見なければならない。