マーティン1/4
番外編です
登場人物其々の気持ちや思惑になります
これで終わる。
私のせいで亡くなった者たちに詫びを。
そしてソフィーの幸せを願って毒入りの盃を震える手で持つ。
「宰相⋯父を最後まで頼んだ」
「⋯⋯御意に御座います」
そして震える手で盃を飲み干した。
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私はマーティン・ハースティ。
ハースティ王国の第一王子だ。
20歳の時に婚姻するまで順調に王族の道を進んできた。
幼馴染のミシェルと婚姻した後に立太子する事も既に決まっていたあの日、意気揚々と城に入る直前に刺客に襲われた。
犯人は第二王子のセルビアンだった。
セルビアンは私の全てを欲していたらしい、王太子になる地位もそしてミシェルも。
ミシェルは侯爵家の娘だった。
城へは父親に連れられ子供の頃から出入りしていた。
私の側近候補であったサミュエルと弟のセルビアンとも仲良くしていて所謂4人は幼馴染だった。
子供の頃からミシェルは可愛らしくて周りを魅了していった。
私も彼女に好意を寄せて二人の婚約が調ったのは12歳の時だった。
決まった時はサミュエルにもセルビアンにも勝ったような高揚した気持ちだったが、サミュエルに関してはお門違いだった。
彼は幼少期に私の共で行ったコールデン伯爵領で運命の相手を見つけたんだと後に話してくれたから。
だがセルビアンは違った、その時から私がミシェルを手に入れたのは私が王太子になるからなのだろうと、ならば自分が王太子になればミシェルを手に入れられるとそう野心を抱いていたのだ。
巧妙に顔には億日にも出さずその時を虎視眈々と狙っていた。
私はセルビアンの思惑には全く気付かずにいた。刺客には5ヶ所刺された、確実に仕留める為だろう。
運良く城の前だったので侍医を始め沢山の医者達のおかげで一命は取り留める事が出来たが、半身不随は免れなかった。
勿論セルビアンは毒杯を賜り弟を一人失くしてしまった。
だが陛下は立太子をそのまま行うと決めた。
第三王子のリランジェロがまだ10歳だったからだ。
ハースティ王国では立太子したら途端に公務が増える事もあり、婚姻後にしか立太子はしない。
だがリランジェロの婚姻までまだかなりの時間があるその間の繋の為に私は《《この体》》で王太子になった。
その後、ミシェルが懐妊している事も解り、私とセルビアンの事で暗くなっていた王宮に光が差すような気持ちに城の皆がなったのは言うまでもない。
だが陛下達は違った見方をしていたようだ。
セルビアンの侍従から死の間際にミシェルが思わせぶりな態度をずっとしていたのでセルビアンは両思いだと思っていて彼女を救う為に行ったのだと言ったそうだ。
だからミシェルの懐妊を陛下は疑ったのだろう、婚姻前の侍医の検診の後、ミシェルがセルビアンと逢瀬をしたのではないかと調べたらしい。
そして子供が生まれる直前に私にも陛下は訊ねた。「ミシェルは本当に純潔だったか?」と。
それをミシェルに聞かれて彼女は早産になった。
ただでさえ出産は女人には命懸けだ、それが陛下の疑いを聞いてしまったショックで早産になったのだ、ミシェルは産後に寝込むようになってしまった。
此処で私達の事で大幅に負担を強いられたのはサミュエルだった。
王太子の仕事も肩代りしてしてくれていたのに、ミシェルの王太子妃の仕事まで手伝ってくれたのだ。
そのせいでサミュエルとソフィーの結婚式は延期された。
忙しすぎたのと今回の件で自重したとの事。
本当に申し訳ない事をしてしまったとその時は頭を下げたがサミュエルは「気にするな」と言ってくれた。
その言葉に私達は甘えすぎていた。
サミュエルは勿論、ソフィーにも。
子供が一歳になる頃にはミシェルも立ち直り何とか病弱ではあったが、日々過ごせるようにはなった。
だが公務までは及ばなかったみたいで引き続きサミュエルの負担は変わらなかった。
サミュエルからは落ち着いたら結婚すると聞いた、ソフィーも待つと言ってくれたと嬉しそうに言っていた。
その言葉通りソフィーは城の近くに小さな家を購入して移り住んだ。
そこへサミュエルはよく通っていた。
まだ婚姻前だから「泊まれないのが辛い」とよく私にも愚痴っていた。
「早く籍だけでも入れたら」と助言したが「ソフィーに花嫁衣装を着せるのが夢なのだ」とサミュエルは言って夢想したのか頰を染めていた。
そんなある日ミシェルが私の所へ来てサミュエルに娘と会わせていいか聞いてきた。
娘はマリアと名付けた、とても可愛らしいミシェルによく似た娘だった。
何故かと問うと言いにくそうに、男の人が関わる方が良いと侍女たちに聞いたからと言った。
私は体が不自由になり娘をしっかり抱く事もままならない。
偶にミシェルが連れてきても私の胸の辺りに娘を乗せる形でミシェルに支えてもらいながら、手を頭にそっと乗せるぐらいしか出来ない。
だからそれを聞いた時はショックだったが娘の為に了承した。
マリアは直ぐにサミュエルに懐いたようだった。
私達の執務の殆どとマリアの相手までしていたサミュエルは王宮に用意した自室へも寝るだけしか寄ってないようだった。
その時に気づけばよかったのだ、ソフィーとは《《何時逢ってるのか》》と。