【番外編】最終話ソフィー
皆様、感想ありがとうございました。
最終話書き直しております
よろしくお願いします
今日も自分の部屋から王都を眺める。
私が見つめるその先には丁度王都のメインストリートが真っ直ぐ伸びているのが目に入る。
この眺めのよい場所を夫は用意して待っていてくれた。
5年前、私の前に現れた救世主セルジュール様はシャーワット王国の王太子だ。
子供の頃に私を見初めてくれて婚約を申し込んだけれど父に断られた。
それでも私を望んでくれて王家と重鎮総出でシャーワットの貴族や民を欺き、私を待ってくれていた。
彼との間には既に王子を二人授かった。
可愛い子供達だが最近下の子がイヤイヤ期に突入してしまい私と乳母を困らせている。
セルジュール様は昔から変わらない愛情を未だに私へ向けてくれる。
「ソフィー起きたのか」
外を眺めていた私へ起き抜けにシャワーを浴びていたセルジュール様が髪から滴をポタポタと落としながら声をかけてきた。
私が近付いて手を伸ばすと解っているのか頭を下げてくる。
そして私はいつもしているように彼の髪をタオルで拭き上げる。
「ふふっ」
「どうした?」
「変わらないなぁって思って」
私の言葉にニッコリと笑顔を返し、髪を乾かしたお礼の代わりなのかセルジュール様は私を抱き上げてソファへ移動する。
そしてサイドテーブルに置かれたベルを鳴らす。
心得た侍女がお茶の用意をテーブルへ
二人でモーニングティーを飲みながら一日の始まりを実感する。
「見た?」
セルジュール様が聞いてきたのはおそらく昨夜、私へ齎された手紙の事だろう。
「えぇ読みました、そして見ました」
手紙には新聞の切れ端が同封されていた。
私の父であるコールデン侯爵から、以前の祖国ハースティ王国の革命成功の報せであった。
「ふぅ5年とは⋯また⋯あっという間だったね」
「リランジェロは大丈夫でしょうか?」
「解らぬ、昨夜見に行った時は部屋から出てこなかったが⋯喜んでいるのか、悲しんでいるのか⋯君は?ソフィーは如何なの?」
「私ですか?」
セルジュール様に聞かれて私は少し考えた。
というか彼に聞かれるまで《《なんとも》》思わなかったというのが正直な気持ちだ。
それほどこの5年が満たされていたということなのだろう。
そのまま部屋で朝食を取るとセルジュール様は執務へ行く為に部屋を出ていったが、行く前に「今日は休め」と厳命された。
言葉通り休む事にしてソファで寛ぎながらハースティから去った5年前に思いを馳せてみた。
私の元婚約者は申し分ない程、家柄、人柄、容姿が整った人だった。
そして優しい⋯《《誰にでも》》優しい人だった。
大好きだった彼の事を支えてあげたかったけれど、彼は私との未来の途中でその優柔不断さを発揮してしまった。
私は彼を待つことを諦めた。
その選択が今は正しいと心から思うけれど、セルジュール様と結婚した当初は折に付け思い出しては、身を切られるように思った物だ。
私も優柔不断だったのかもしれない。
彼は今如何しているのだろう?
革命は民達ではなく一部の貴族が発起人になって始まっている。
どちらに付いたのかは知らないけれど、嘗ての私が知る王家は私がシャーワットに嫁いだ時点で崩壊していた。
きっと革命軍に付いた事だろうと推察されるが、その行方を追うつもりも知るつもりもない。
5年前、私が嫁いだ3ヶ月後にハースティ王国の第三王子であったリランジェロが幼いマリアを抱いてシャーワットに逃げてきた。
逃したのは国王だったそうだ。
彼から渡された書簡を読んだセルジュール様は直ぐ様、彼にこの国の伯爵の位を授け新たにマルソーという姓を授けた。
王家直轄の小さな領地を与えこの国で生活出来る様に整えた。
要らぬ軋轢や悪意、そして狡猾に利用しようとする者から守る為に王都のタウンハウスを与えるのではなく、王城内の離宮に部屋も整えた。
そこで二人は健やかに育ちリランジェロは15歳、マリアは11歳になっていた。
二人は表向き兄妹としてシャーワットでは認知されている。
5年前ハースティの国王からは私宛の文も届けられた。
それによると一連の出来事は嘗ての親友、いや親友と思っていたミシェルのただの我侭から始まった事が解った。
たった一人の暗愚の女が一つの国を滅ぼすなんて、傾国とはいうが、それ程魅力があったかしら?と今では思う。
ふとマリアに会いたくなった。
彼女は確かにミシェルの産んだ子供だが、その容姿はマーティン様によく似ていた。
願わくばミシェルに似ることなく育って欲しいと思ったが、マリアは11歳にして聡明な美少女に育ってくれて安堵している。
周りにつねに気を配り側によるものを癒やす、真鳶が鷹を産んだのだと思わずにはいられない。
離宮に向かう途中で愛しい我が子、ライツがひょこっと廊下の曲がり角から顔を覗かせた。
「ははうえ」
最近セルジュール様が王妃様をプライベートで呼ぶその言い方を真似するようになった。
彼に似た赤味を帯びたその茶色いおかっぱが傾げた拍子にパラリと落ちていた。
「ライツ⋯おはようございます」
「かあさ、ははうえ。おはようございます」
まだ偶に前の呼び方が出るのだけれどその物言いも可愛い。
素早く駆け寄り目線を合わせ愛しい我が子をギュッと抱き締める。
ライツも嬉しそうに抱きついてくれる。
ふとまえを見ると二男のトライトが廊下に置かれた花瓶からこちらを覗いてる。
彼は隠れてるつもりだろうが、いつも付き従う乳母がしっかりと彼の背後に立っているので所在は明らかだ。
左手でライトを抱え右手でトライトを迎えるべき前に差し出すと、案の定イヤイヤをするようにモジモジしている。
「トゥラーおいでぇ」
不思議なことにイヤイヤをするのは私だけのようである。
トライトは兄の呼びかけに待ってましたとばかりにトコトコとこちらへやって来る。
途中で転んだけれど心得た乳母は手を出さない。
「ううぅ」と言いながら自力で起き上がる、彼の成長が著しく母は嬉しく思う。
自然と顔が綻んで、やって来たトライトを抱き締める。
あぁ私は何て幸せなのだろう
いつまでも永遠に続きますように⋯⋯。
待ちきれなかった私を待ってくれたセルジュール様に感謝を込めて、この愛を送り続けます。
end
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