ミシェル1/4
ミシェル始まりました
「サミュエル元気出して?」
馬車を降りた私は意気消沈しているサミュエルに慰めの声掛けをしたけれどサミュエルは返事もしなかった。
何故王太子妃の私が声を掛けて《《あげてるのに》》返事もしないの?
天使のミシェルなのよ!
この男は昔からそうだ。
この天使のような私に少しも靡かない、靡かない男は要らないけれど、他の女にましてや私の親友に微笑む姿は前々から気に食わなかった。
だから邪魔してあげたけれど別に別れなくても良かったのに、まさかそんなに会えないほど邪魔していたなんて思ってなかったわ。
やり過ぎちゃったわね。
でも誕生日の事は私の責任じゃないわよ。
私は別にマリアのお祝いに来なくても良かったけれどあれはマーティンが固辞したのだから私は関係ないわ。
あ~ああの女は親友にしておけば便利だと思っていたけれど、仕方ないわね、他の人に切り替えなければ行けないわ。
夜会の参加は認めてもらってないけどマーティンに頼んでみよう。
王太子妃にお友達がいないのもマーティンには都合が悪いでしょうから、きっと許してくれるわ。
貴族の付き合いなんて面倒臭いけど一人くらいはいないとね、格好つかないでしょう。
そう思いながら部屋に帰るとマーティンの侍従が呼びに来た。
何だろう、あぁソフィーの説得に行ったから結果を知りたいのね。
報告はしないと行けないわね。
そう思って部屋に行くと王妃様も居た。
私この人昔から苦手でどうにも相容れないのよね、マーティンがこんな事になってからは数えるほどしか会ってないし、何故いるのかしら?
「マーティンただ今帰りました」
「⋯⋯」
アレ?いつもならご苦労様って言うのに何なの?
「ミシェルこれにサインをするんだ」
マーティンがそう言って侍従から渡されたのは離縁届。どうして?
「どうして?なぜ離縁届けなど書かなければならないの?私達喧嘩などもしたことないわ、ねぇマーティン何故なの?」
寝耳に水とはこの事よ!
何故私がこんな物突きつけられなければならないのよ!
「ミシェル体が弱いのは嘘なんだろう?侍医に確認しているから嘘はいらない」
「えっ?何故そんなことを言うの?体が弱くても強くても関係無いじゃない」
「大有りだよ、体が弱くないなら王太子妃の執務くらい熟せるだろう?何故やらずにサミュエルに丸投げしてるんだ」
「それは、私には難しかったのよ」
王妃とマーティンが同時に溜息をつく、でも本当に面倒臭かったのだもの、私がしないといえばしなくて良い筈よ、だって王太子妃なのだから。
「姑息な手段で王太子妃になったのにまともに執務も熟せないなんて王族の資格はないわ」
王妃は好き勝手に言うけど、姑息な手段て何なのよ。
「王妃様あんまりです、私は正当にマーティンの婚約者に選ばれたのです」
「ミランダに聞いたわ、貴方みんなを騙していたのね」
王妃の言葉に頭が真っ白になった。
バレてる⋯どうしよう
何か言い訳を考えなければ⋯でも何処までバレてるの?
下手なことは言えないわ。
《《アノ事》》がバレたらとんでもない。
墓穴を掘りかねない、何も言えないなら黙っていよう。
そうしてだんまりを決め込むことにした私は子供の頃の記憶を思い起こす。
あの頃はこんな事になるなんて思わなかったわ




