詮索
前回までのあらすじ
校長から氷見、沙耶と共に呼び出され、英名学園に人間が入学した事実を知らされ、特別試験『人間狩り』を実施することになった。
クラスに戻ると、新宮から自己紹介を促され、学校周辺を散策することになった。散策後に、女子組と解散した後、九条は新宮と別れ、単独で行動を起こすことにした。
氷見視点
九条君、新宮君と別れてから少しショッピングをすることになった。私はあまり乗り気ではなかったのだけど、楓子さんのあの下から覗き込む目はずるいわ。
それにしても今日出会った人は個性的だけどいい人そうで良かったわ。個性的という部分は特に楓子さんのことですが。
「沙耶さんと楓子さんは初対面なのよね。あなた達のどちらかは意志を読み取れる魔法でも持っているのかしら」
「音ちゃん、凄い。よく分かりましたね。実は私コミュニケーション能力が高いんです」
「音ちゃん!?...そう呼ばれたのは初めてよ」
「音ちゃんって呼び方いいね。後、私達が意思疎通取れてるように見えるのは私の魔法だよ。私の魔法はコミュニケーション能力が低い人の意志を読み取れることが出来るんだ」
「何!?沙耶ちゃんそれはつまり私のコミュニケーション能力が低いと言ってるの!?」
またコントを始めだしたわ。この子達といると退屈しなさそうだけど疲れるわ。
「あははは、冗談だよ。本当の魔法は相性のいい人の意思が読み取れるって言うのが私の固有魔法だよ」
「その相性はどう測るものなの」
「うーん、よく分からないんだよね。えへへ」
いや、それであなたはいいの?でもこの子入試順位10以内に入ってるのだから頭はいいはずだし。
「今まで意思が読み取れる人はどんな人だったの」
「えーっと、ママにパパに妹と、あと数人程度かな」
逆にこの子でも相性のいい人が数人しかいないのね。意外だわ。
「偶然入学式で隣に座った人が相性のいい人だったって事?すごい確率ね」
「ほんと偶然ってより、友達を作りたいって意思が流れ込んできたから、そっちの席に寄って行ったんだよね」
「なっ」
「なるほど、そういう事ね。楓子さん良かったわね友達出来て」
楓子さんはさすがに恥ずかしいのか耳を赤くしている。...かわいい。
ショッピングも終わったため、みんなで帰ることにした。帰り道にふと考えてしまった。今日出会った人達、今隣で歩いてる人が人間だった場合、私は指名することができるのかしら?
いや、沙耶さんと、九条くんは、試験を受けているのだから、人間の可能性は低い。とりあえず、九条くんと沙耶さんを信頼して、他の人間を見つけるしかない。
友達の中に人間がいる考えは排除することにした。
×××××
九条視点
俺は急いで学校へ向かっていた。他クラスが人間を探すため動いてないか確認するためだ。俺は人間狩りの説明を聞いた時、必ず初日に動くクラスがあると考えた。
俺らAクラスも初日である今日動くことを考えたが、他クラスから人間狩りに参加してる者がバレる可能性があったので、沙耶と氷見さんと話して動かないことに決めた。
そのデメリットを理解した上で動くクラスを俺は危険視している。情報は早ければ早いほど力となる。その情報を独占させては、情報戦において独走状態になる可能性がある。それを阻止、もしくは同じ情報を得るために学校へ戻ってきたという訳だ。
学校へ到着して過去の資料を調べるために、資料室へ向かった。XRDが普及した今紙媒体での資料や本を読む人物は限られており、資料室は閑散としていた。XRDで見れる資料は一般向けの資料が多いが、資料室にある資料は学園内でしれか見れない資料である特別試験や過去の研究資料などが見られた。
資料の中には人間狩りに対する資料は見つからなかったが、興味深い資料が見つかった。
『ギフテッドと5種のOEの関係性』
OEとはGATE設立者である立山薫が提唱した概念で、ギフテッドにみられる心理特性のひとつである。ギフテッドに見られる5つのOE(精神運動性、知性、感情性、感覚性、想像性)は、それぞれが異なる形で刺激に対する過剰な反応を示す。これらの特性は、ギフテッドの強みとなる一方、過敏さゆえに困難を感じる場合もある。OEを理解することで、ギフテッドの子どもが持つ特性をサポートし、適切な成長を促すことが重要であるという内容だ。
俺はギフテッドであるが、OEを感じたことがない。逆にギフテッドでなくとも、OEを感じる魔法使いは存在するが、大半のギフテッドはOEにより、自分の能力の特異性を知り、他人との疎外感等や普通との違いに苦難することが多い。それを克服、理解するためにもギフテッドを探し、保護して育成するまでを行う施設がGATEである。
沙耶がギフテッドであるかは分からないが、恐らく感情性OEを強く感じるため、他人の思考を読み取れるのだろう。沙耶の例のように、各OEによって特性が異なり、その特性に影響され、魔法や能力に発展するのがOEの特徴である。
この研究資料を書いた人物はギフテッド研究に力を入れていたのだろう。GATE設立前に学生の身でこの資料を書いていることから、その優秀さが伺える。きっと今はGATEにスカウトでもされて働いているだろう。
興味無い資料だった。ギフテッドに関する資料はXRDでは一般公開されておらず、GATEに保管されているため、このように学生の研究結果として、学校に残っている資料は貴重である。
ついつい、人間狩りと関係ない資料を読み耽ってしまった。この資料室には人間狩りの資料は置いて無さそうだし、他の手段を探すか。
とりあえず資料室を出て、情報収集の手段考えながら歩き始める。今俺が1人で取れる手段は限られてる。俺は他クラスの動向を探ることにした。入試成績10以内の生徒は公表されている。それ以外の生徒から、クラスの内情を探れないか、確認するためにまずBクラスへ向かった。
×××××
Bクラスの教室に着いたが、中には誰もいなかった。Cクラスも確認したが、誰1人教室には残ってなかった。
どうやら、BクラスとCクラスは既にクラスを統制する者がいるらしい。それを確認できただけ、収穫とするか。
最後にDクラスを見に行くと、B、Cクラスとは逆に全員が教室内にいるようだった。
これは意外だった。Dクラスは他クラスと比べて、能力の低いものが集まっていると思っていたのだが、少なくとも、クラスをまとめる人物はいるらしい。
Dクラスの教室を覗き見ていると、どうやらクラスのリーダーを決めかねているようだった。
リーダー候補として名乗り出ている人物は2名。桐生蓮という金髪ショートでハーフの男と、如月景という黒髪のセンター分けの、優等生らしい見た目の男だ。
確か、桐生蓮は入試順位8位で、如月景は10位以内には入ってなかったはずだ。桐生が頭角を表すのは納得出来るが、実力としては如月には分が悪そうに思える。クラス内でも桐生をリーダーに推す空気になっていたが、桐生の横暴な態度に納得できない者たちが、如月派になっている様子だ。
「このクラスで1番強いやつがリーダーをやればいい。入試順位4位の白露が立候補しないなら、次点で俺になるべきだ。白露もそれでいいだろう」
「私は誰がリーダーでも興味が無いので、誰でもいいです。それより帰ってもいいですか?」
「てことで、リーダーは俺になるべきだ。如月、お前の出番は無い。大人しく降りろ」
「...別に俺がリーダーじゃなくてもいいけど、お前はないな。自己中には務まらないだろ」
言い争いが激化しそうだったからか、白露という人物はため息を吐いて、帰るために扉へ歩いてきた。
ま、まずい。こちらへ歩いてきた。とりあえず隠れるところを探そう。
扉が開く音と共にじーっと刺すような視線がこちらに向いている気がする。
「...」
「...」
Dクラスでは、リーダーを決めるために、WBL《Wizard Bet League》で決着をつけることにしたようだ。WBLとは、APを賭けた魔法使い同士の1on1のことであり、桐生と如月が魔法を用いて戦うということだ。
「桐生君、そのWBLですが同じクラスのものが審判をすると、不公平が生じると思います。なので、審判にはここにいる鼠、いえ九条君を推薦します」
こいつ、やりやがった。今度はDクラス全員から、敵意を向けられる。この空気を脱するには、これしかない。
「推薦された九条だ。たまたま、廊下を歩いていたら、Dクラスが話し合いをしていたから、気になって見ていただけだ。邪魔したが、話し合いを続けてくれ」
「これは、これは、Aクラス様のお出ましか。そんなつまんねぇこと言うなよ。他クラスの偵察しといて、タダで帰れるわけねぇだろ」
「偵察なんて大したものじゃないさ。ただ、他クラスに友達を作りに来たんだ」
「なら、ちょうどいいぜ。俺らが友達になってやるよ、なあ、如月。せっかくだ。こいつも入れて三つ巴と行こうぜ」
「勝手に決めるな。まあ、Aクラスに舐められたままなのは、腹が立つ。その勝負受けてやるよ」
「いや、待て。俺は争う意思は無い」
「そっちに無くても、こっちには争う理由も意思もあるんだよ。それとも勝てる自信がないのか?」
これが挑発なのは目に見えて分かってる。しかし、ここで引くとAクラスの面子も潰れる。これは戦うしかないか。なら、こちらも挑発しておくか。
「いや、お前らに負けることは無い。なんなら2対1でも構わないぞ」
「...上等だ。Aクラスの優等生に吠え面かかせてやるよ」
この口論の行く末を見てた白露は明らかに笑っており、面白がっていた。
XRD
現実世界と仮想世界を融合した魔法と科学の融合産物。「VR(仮想現実)」「AR(拡張現実)」「MR(複合現実)」などの先端技術を複合した情報デバイス。
指輪やネックレスなどのいろいろな形態があり、魔法使いの好みや特性によって、デバイスが異なる。




