入学
ほぼ初投稿です。
書きたい構想は思いついてるのですが、
文章にするのが遅いので、ご了承ください。
ハーメルンにも投稿してます。
よろしければ、ご一読、感想などお願いします。
ギフテッドとは何かをご存じだろうか?
ギフテッドとは高い知能や創造性を持ち、一般の同年齢の人々よりも学習や成果を示す個人を指す。
人口の上位2.5%であるIQ130以上の知能指数を持つ人々を対象としているが、一般に広く受け入れられているギフテッドの定義は存在しない。
また、ギフテッドの定義は文化によっても異なる。
幼少期の特性の差が、成人後の能力の差にどのように影響するか、また、どのような教育的内容やその他の支援が成人後のギフテッド的特性に影響するかについては、現在も論争があり、研究が行われている。
ギフテッドの語源は、贈り物を意味する「ギフト」であり、神または天から与えられた「天賦の資質」、または遺伝による生まれつきの「特質」である。
非ギフテッドが早期教育や先取り学習によってギフテッドに成長することはなく、「ギフテッドの才能を伸ばす」という言い方はできるが、「こうすればギフテッドになる」とは言わない。
「ギフテッド」の子供を教育するのは非常に難しく、一般の子供と同様の教育ではその資質を活かしきることはできない。
そのため、ギフテッド教育を施す機関が存在しており、通称「GATE」と呼ばれている。
GATEの出身者は歴史に名を残すものが多いが、卒業資格は極めて困難とされる。
その全容は一般には公表されておらず、詳細な教育内容を知るものは関係者以外に存在しないとされる。
そのGATEを若くして卒業し、英名学園に入学する者がいるという情報が流れだしたのが数日前のことだ。
だが、入学することは確かだが、その人物自体の情報は一切公表されなかった。
英名学園は魔法を学べる学園の中で一番有名で歴史のある学園だ。
しかし、ギフテッドの扱いは非常に難しく、その能力を隠して過ごそうとする者もいるため、普段は世間の目にギフテッドが触れることはめったにない。
ではなぜ、ギフテッドが入学する情報が流れだしたのか?
それはGATEの目論見なのか?
英名による他校への圧力なのか?
それはギフテッドである本人にも知りえない事柄かもしれない。
×××××
英明の校門を抜けた周りは、新入生以外にも人で溢れていた。
Gateからの卒業者が入学するという噂を聞き付け、興味本位で在校生が見に来ているのだろう。
仮に姿を見ただけでGate卒業者か判断なんてできないだろう。
では何故見物に来ているのか。未知を探求する魔法使いとしての性なのか。新入生全体を査定しに来てるんだろう。
それにしても、今までもGateから魔法学園に入学することはあった。
その際は、Gateの名前を出さず隠しての入学だったはずだ。
なぜ、俺だけGate出身者と公表し、入学する必要があったのか?
また、名前などの情報自体は公表せず、あえて興味を引くような情報のみ公表したこと。
つまり、入学者のなかでGate出身者である者以上に隠したいことがあるということだ。
一体何を隠しているのか?
まあ考えても分からないものは仕方ない。
案内通り入学式が始まる前に講堂へ向かおう。
講堂に到着すると既に席が沢山埋まっていた。
かろうじて空いていた席を見つけたので、隣の人に座ってもいいか聞いてみよう。
「すいません、ここの席座ってもいいですか」
赤髪を後ろで結んだ元気そうな子へ声をかける。
「はい、いいですよ!」
赤髪の子が返事をしてくれて、話をしていた白髪を編み込んでる子は会釈をしてくれた。
「どうも、俺の名前は九条晴、ハレと呼んでくれ。よろしく」
「私の名前は鬼灯沙也加です。この娘は流川楓子、私のことは沙也って呼んで。よろしくね」
「...よろしく、楓子でいい」
「じゃあ沙也に楓子って呼ばせてもらうね。ところで君たちは初対面なのかい、それにしては仲が良く見えたんだが」
「いえ、私たちさっき会ったばっかなんですけど、楓子ちゃんが言いたいこと何となく分かるので話しやすいんですよね」
おそらく沙也の魔法によって楓子の思念のようなものが分かるのだろうか…。思考を読まれないよう注意しておこう。
「私たちはズットモ」
沙也は苦笑している。この子は不思議な雰囲気を持っている、いわゆる不思議ちゃんというものなのだろう。
「もう友達が出来たのは羨ましいな」
「...ハレくんももう友達ですよ」
首を傾げながらそう言ってくれるのはありがたいが、距離詰めてくるの早いな!
「ありがとう、ところでみんな何クラスだった?俺はAクラスだったんだが」
「私はAクラスだったよ〜、同じクラスに友達がいるのは心強いね」
「私もAクラス...。友達出来て嬉しい」
沙也は安心したように、楓子は嬉しそうに言葉を漏らす。
こちらとしても同クラスに友達が出来たのは、嬉しいものだ。
「あ、そろそろ入学式始まるみたいですよ、静かにしてましょう」
俺と楓子は頷き、壇上を見る。
教頭の挨拶や祝辞とかは退屈そうな話だったので聞き流していた。
どうやら次は生徒会長の在校生挨拶らしい。
さっきの校長や知らない人の話より聞く価値はあるだろう。
英明学園の生徒会は文字通り格が違う。
生徒の自主性を重んじる英明の生徒会は強大な権力を持つ。
その生徒会のトップの言葉だ。
少しすると紫髪のショートヘアを揺らし、凛々しい先輩が登壇した。
「皆さん、こんにちは。生徒会長の西園寺蘭です。
新入生の皆さん、ようこそ英明学園へ!
今日から新しい学園生活が始まります。
英明学園は、多様な才能を持つ生徒が集まる場所です。
皆さんも、ここで自分の才能を見つけて磨き、学園をより良くするために、その才能を存分に発揮してください。
生徒会は、学園全体の調和と活力を保つために活動しています。生徒会は、生徒会長である私が推薦した人たちで構成されています。
自主性を重んじる英明学園では、生徒会という立場は強大な権力を持ちます。しかし、その権力に溺れることなく、私たちは真に才能ある人材を求めています。
新入生の皆さんには、私たちの期待に応えていただきたいと思います。
改めて、新入生の皆さん、英明学園へようこそ。これからともに学び、成長していきましょう。
どうぞ、よろしくお願いいたします」
鳴り止まない拍手がしばらく続いた。
これが七賢者の一人である西園寺家の長女か。
実力だけではなく、そのカリスマ性で皆が付いていきたくなるのも分かる。
しかし、実力主義を掲げている英明で新入生全員に期待を向けているわけではないだろう。
いったい誰に向けての言葉なのだろうか。
少し考えていると壇上には水色髪を腰まで伸ばした可憐な娘が登壇していた。
どうやら新入生代表らしい。
「皆さん、こんにちは。新入生代表の氷見音羽です。
暖かく、やわらかい風に包まれ、春に咲く花に命が芽吹き始めました。
日ごとに温かさを増すこの良き日に、歴史と伝統のある英明学園に入学できることを、心より嬉しく思います。
英明学園は、多様な生徒が集まる場所です。異なる背景や能力を持つ仲間たちと共に、新たな学びを得ることができると思います。
お互いを尊重し、助け合いながら、素晴らしい学園生活を共に送りましょう。
私たち新入生は、さまざまな価値観を持つ人々が共に過ごすことで、より強く、より豊かなコミュニティを築いていくことを目指しています。
個々の違いを大切にし、共に協力しながら、より良い学園にしていきたいと思います。
最後に、私たち新入生全員が、この英明学園で共に学び、共に成長していくことをお約束いたします。
どうぞ、これからよろしくお願いいたします」
まばらな拍手が起きた後、連鎖するように全体に広がっていく。
その美しさ、可憐さに見とれていた生徒が大半だったようだ。
主に多様性について話していたが、魔法は家系や伝統、歴史が重要視されるがゆえに、その他の魔法使いを差別する風潮がある。
恐らく、氷見さんは俺と同じく差別について思うことがあるのだろう...。
×××××
「式が終わりましたし、一緒に教室に行きませんか」
「ああ、もちろん」
教室に向けて歩いていると鬼灯が話を回してくれる。こういう子がいるとやりやすいな。
「2人は何の部活に入るか決めましたか?」
「俺はまだ決めてないけど、生徒会に入りたいと考えている」
「私は楽しそうな部活に入りたい。風紀委員とか」
風紀委員は楽しいのか?あとキャラ的に合わないだろ。
「へー、楓子ちゃんは一緒に部活紹介見に行こうね。ハレ君は生徒会か。生徒会長に興味を持たれなきゃだね」
楓子に苦笑を向けながら言っていたが、本人は部活紹介に一緒に行けることに喜んでいるようだ。
「ああ、生徒会に入るためにどうしようか考えているんだ」
「なんで生徒会に入りたいの?」
「ある目標があってね。そのために生徒会に入らなければいけないんだ。今度時間があるときに話すよ」
話していると教室に着いていた。
席を確認したところ、3人ともバラバラだったため、そのまま着席する。
しばらくするとスーツを着た青髪で片目が隠れた人が教室に入ってきた。
おそらく担任だろう。それまで喋っていた人達は静かになり、教卓の奥にいるスーツの女性に注目を向ける
「私の名前は水上涼子、この学園はクラス替えがないから3年間私が担任となる。よろしく。
これから学園のルールや寮について説明する。なにか質問がある場合は挙手するように」
随分若くてクールな担任だ。
「知っての通り、この学園の生徒は全員寮に入ってもらう。
また、生徒は全員魔法学園の敷地外に出ることは出来ない。
代わりに敷地内にある施設で生活用品や必需品は全て揃うようになっている。
またそれらの施設を利用する時は現金の代わりにアーク・ポイント、通称《AP》を使用する。
最初は全員に10万円相当である10万APを付与する」
少し教室がざわついた。
10万円を学生に無償で与えるとはずいぶんと羽振りがいい。
「これは入学時の君たちの価値だ。
君たちにはそれだけの価値がある。
APを稼ぐ方法はいろいろあるが、主な方法は依頼をこなしたり、敷地内で働くことだ。
一度に多くのAPを稼ぎたい場合は、クラス対抗の代表選に勝利するか、APを賭けたWBL《Wizard Bet League》で勝利することだ。
WBLはお互い同意の上、行う魔法を使った実戦だ。学内でランクが付けられ、ハイテーブルを維持したものには別途APが付与される。
また、年に一度開催する魔法大学付属高校同士の対抗戦、通称『アーカニア』で優秀な成績を残すと多くのAPを獲得することができる。
卒業時にはAPを回収するが、APを多く保有するものほど、有望な進路が用意される」
なるほど。面白いシステムだが、APを最低限稼いでさぼることもできるのだろうか?
そういうことを考えてしまう自分に少し呆れてしまう。
生徒会に入るためには、まず何をするべきだろうか...。
生徒会長の目につくようにWBLを仕掛けまくるか。
ついでにAPも稼がせてもらおう。
「質問があるやつはいるか」
周囲は理解が及んでない生徒がほとんどだった。
「...いないか。情報が多かったため、全容をつかめていないものも多いだろう。
情報や単語はXRDでいつでも確認できるようになっている。
各自確認しておくように」
XRDとは、科学力の発展と魔法の応用により、発明された魔法具だ。
色々な形があるが主に指輪やピアスなどのアクセサリー型が多い。
昔のスマートフォンやPCといった端末は無くなり、脳波を感知してそれらの機能をXRで使用できるようになった。
つまり、情報を見たい場合は、考えるだけで言語的情報やそれらの動画が複合現実で映し出されるということだ。
魔法大学付属高校はXRDを所持していないものには入学前に無料で配布しているので、新入生全員それだけで入学した価値があるというものだろう。
「最後に九条、氷見、鬼灯、校長がお呼びだ。職員室に付いて来い。それ以外の生徒は自己紹介でもしておけ」
...もう呼び出しか。前途多難だな。
GATE:Gifted and Talented Education
ギフテッド育成機関
主に幼少期のギフテッド対象者に教育することを目的とした機関
GATEはあくまでギフテッド育成機関であり、人間と魔法使いを差別していない。あくまで中立の立ち位置。