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市街地に出没した魔獣を狩った私は、危ないからと非難され魔法杖を没収された。外国に行ったら、元婚約者とその両親が訪ねて来た話

作者: 山田 勝

 ☆☆☆ザルツ帝国冒険者ギルド



「サツキに貴族の家族が訪ねて来ているよ。ギルドの応接室だ」


「ヒューヒュー!」

「まさか、そんな。馬鹿な。パーティー解散?」


「ギルマス、誰?」

「さあ、この国の貴族ではないな。武器は持っていない確認済みだ」



 私はサツキ・サナダ。勇者の家系だ。

 今はこの国で冒険者をしている。栄光あるアタッカー、前衛魔道士というカテゴリーだ。


 どこか物好きが私に縁談を持ち込んだのか?

 と思ったが、見知った顔だった。



「オオ、勇者サツキ殿、久しいな」

「喜びなさい。また、好きなだけ魔法をぶっ放せるわ」

「また、婚約してやる!」



 最悪だ。昔の婚約者とその両親がやってきた。




 ☆



 私のお父様は異世界から召喚された勇者様だ。ドラゴン討伐で名をはせた。

 しかし、王宮を嫌って市井の魔道士と結婚した。

 お父様はこの国を嫌っていた。


 召喚という誘拐をしたこともさることながら、ドラゴン討伐で実力を示したお父様を毛嫌いした。


 曰く。その武力が王国に向かうのではないかと。

 やがて、お父様とお母様は、魔獣討伐で命を落とした。

 二人だけのパーティーだったそうだ。


 その後、私は王子の婚約者に指定されたので、やむなく王宮に住み。

 両親の跡を継ぎ要請があれば魔獣討伐を行う日々を過ごしていた。




「これで、分かっただろう。異国の地は厳しい」

「ドレスと宝石をあつらえさせます」

「僕と婚約をすれば王族になれるぞ」



「いいえ。この地では大事にされています。斥候、タンク職がいますから、私は守られているのです」



 私が祖国にいたときは一人で全ての役割を行っていた。


 しかし、外国の冒険者は分業制だ。


 特に斥候は危険な仕事だ。斥候が犠牲になり魔獣が潜んでいる藪を発見なんて珍しいことではない。


 タンクも1番最後に逃げる。皆を大盾で守る。


 それが、私の祖国以外ではごく当たり前のことだった。




 ☆回想



『サツキ、市街地で魔獣を討伐したんだって』


『はい、何とか討伐できました』


『はあ、周りに家があって、平民がいたんだぞ。危険だ』


『意味が分かりません』


『そうだ、杖を取り上げる!』


『そ、そんな。杖がなければ魔法の威力は半減します』


『だから?』


『じゃあ、どうやって、魔獣を討伐するんですか?外敵が攻めて来たら・・』

『それを考えるのが君の仕事だ。あ、母上』


『リスタールの言う通りよ。危険な勇者はこの国にはいらないわ。国防も話し合いで解決します。

 どこの国が攻めて来るっていうのですか?』


『それは余りにも楽観的な考えです』



『大丈夫だ。いざとなったら、平民を徴兵して軍隊を作る。槍と剣を持たせれば大丈夫だろう』


『あ、そうそう。それと、婚約者を交代します。聖女のジョブを持つ者がこの国にこられました。平和の象徴としてリスタールの隣で外交をしてもらいます。今、説得中です』



 まるで、仕事の指示のように婚約者の交代を告げられた。




 ・・・・・・・



「そうそう、魔法杖を作ったわ。貴女を将軍に任命します。好きよね。魔獣や敵を殺すのが」

「そうだ。君の部屋を作ったよ。早く見せたいな」

「フム、しばらくは、子作りは控えて、魔獣狩りと外敵に当たって欲しい」



 私はソファーに座らず。壁に背をかけて腕を組み。彼らの話を聞く。


 まだ、夢の世界にいるようだ。



「で?私がいなくなった後、蛮族が攻めて来たのですって?」


「「「!!!!」」」

「・・・それは」

「そうよ。カロナ地方を占領して、出て行かないわ・・・」

「軍隊を編成しても、皆、全然戦えない。10倍の戦力を与えたのに」



「はあ、

 昨日まで

 クワを持っていた農民に

 算木を持っていた商人に

 道具を持っていた職人に

 剣を持って戦えという方が無理です。

 軍隊というのは、命令書一枚で誕生するものではありません」



「・・・いや、君は慧眼だ。街に魔獣が現れたのは大発生の予兆だった」

「そ、そうよ。騎士団に討伐させているけど・・・」


「死傷者多数・・・そりゃ、人間相手と魔獣相手は違います。騎士は悪くない」



「謝罪をするから、帰って来てくれ!」

「ワシが、国王が頭を下げるのだ!」



「もう、無理ですね。たとえ。私がやる気になっても無理です。国土は蛮族に浸食され、山や森には魔獣があふれ。街中まで出没する。

 女神信仰圏会議では・・・」



 コンコン!


「カール、入るぞ。サツキ!」

「殿下、来客中ですよ」


「・・・殿下、どこの国だ。どうせ小国に違いない。出て行きたまえ!」


「サツキは、俺が予約済みだ!ザルツ帝国第4皇子だ!」


「「「ザルツ帝国!」」」

「あの大帝国・・」

「何故、こんな冒険者ギルドに?」



「はあ、予約済みって、貴方様はいったい何様ですか?」

「君の皇子様だよ!」

「それ、自分で言うことではありませんよ!」


 この子は三歳年下、16歳のカール殿下だ。騎士団との共同魔獣討伐で知り合った。

 とは聞こえはいいが、その時は縄張り争いで一触即発だった。


 王族たちはキョトンとしている。説明をするか。


「ザルツ帝国では、民政と軍政を分けません。軍事を肌で知らない文官による軍隊への指示、また、逆に、民政を知らない軍人による専横を防ぐための教訓です。

 ですから、貴族子弟は幼い頃から、騎士団と文官両方から学ぶのです。

 メリットは、退役した騎士の文官就任が容易、文官も騎士団の事務をしやすくなる・・・」



【もう、御託は良いから!帰ってくるか。来ないか!返事をはっきりしろ】

「そうか。ブヘン族の侵入もサツキの仕業か」

「ま、まさか、仕返し??」



 こらえ性がない王族だわ。それは変わっていない。


 私は頭を下げ。謝罪をしながら諭した。



「申し訳ございませんが、本当に帰っても何も出来ないのです。仕返しをするしない以前の話です。何故なら・・・貴方方の国は滅びる寸前だからです」


「そんな。事はないわ・・」


「なら、何故、家族で来られたのですか?聖女様は逃げ出したのですね」


 亡命する気満満ね。国を出るのに、いったい何人の騎士が犠牲になったのかしら。

 無言になった彼らを背に部屋を出た。





 ・・・・・・・



 その後、ザルツ皇帝が直々に訪ねてこられた。

 この国のトップだ。



「挨拶は良い。貴殿の祖国の王族が亡命申請してきた。国土と引き換えに侯爵の爵位と領地が欲しいとのことだ。忌憚のない意見を聞きたい」


「もう、関わりのないことでございます。意見はございません」


「もちろん、断った。今ごろ、国境でウロウロしているだろう」


「お知らせ頂き有難うございます」


「ところで、王命クエストだ。大規模な遠征を行う。どうしても、冒険者の魔獣狩りのスキルが必要だ。騎士団は蛮族討伐を行う。助けたい人材はおるか?」



「実は、あの国は役人、騎士で優秀な者はおりますが、かくそれぞれの組織のトップが、組織に有利になるようにだけ考えて行動する傾向が強いです。

 中間層はそのまま取り立ててはいかがかと愚考します」



 そして、遠征のトップは、カール君だ。名目上・・とは言えない。半々だな。



「殿下。偵察は私達に任せて下さい」

「はあ、地形の説明を受けただけじゃわかんないよ。私も行く!サツキを護衛にすれば大丈夫だよ!」


「分かりました」



 私の魔法は、無詠唱で、中級の魔法を大規模に沢山撃てる類いのものだ。

 父には遠く及ばない。


 およそ数百の蛮族の斥候部隊と鉢合わせをした。


「敵の斥候部隊に燃えた硫黄をふらせます。騎士様は巻き添えを食わないようにカール殿下を守って下さい」


「畏まりました」


「サツキ・・・惚れ直したぜ!」



「「「「ウギャアアアアーーーーー」」」

「ヒィ、この魔法は、サツキ・・この国にいないのではなかったのかよーーー」



「殲滅終わりました」


「貴殿、もしかして、独りで敵を倒せるのではないのか?」

「いえ、いえ、騎士様、冒険者の同志がいなければ服も繕うことも出来ない無能です」

「謙遜しすぎだ。そこがいいーー」

「カール君、いや、殿下、本当の話です」






 蛮族は私の名を聞くとすぐに撤退を始めた。

 やがて、魔獣討伐を行うようになった。

 私の専門分野だ。



「探知魔法、3時、300の方向に、魔獣、キメラ級、数1!」


「タンク前へ!」

「斥候は、陽動を担当するぜ!」

「後援職は待避!と警戒対応よ」



 そうだ。これがないから、お父様とお母様は亡くなったのだ。

 如何に強者でも、ふいをつかれたら危ないのだ。

 勇者でもパーティーを組むのは当たり前だ。



 だから、私の魔法は冒険者パーティーの全てをカバーするように進化した。

 斥候、タンク、後方支援の魔法、しかし、中級まで限定だ。


 決して、祖国に感謝することはないが、私が頑張りすぎたから、騎士、冒険者が不要と思われたのか?



「で、何故、カール君は泣いているの?そこにいるの?」


「ウン、サツキの魔法から、悲しみが伝わってくるよ。独りで頑張っていた感じが伝わってくる。グスン、グスン。ここにいるのはサツキの婚約者候補だからだ」



 こいつ。思ったよりも思いやりがあるのかもしれない。


 後に、カール殿下は大公に叙勲され、この地は帝国縁の公国になった。

 公妃は冒険者出身の魔道士であるが、誰も反対はしなかった。

 妻を愛したカール大公は、妻の家名を国名にした。

 名をサナダ公国と云う。



最後までお読み頂き有難うございました。

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― 新着の感想 ―
 猟友会への同情だけじゃなくて、移民問題での行政や司法への不満までちょっと混ぜられてる味がしますね。
北海道の猟友会かな?w
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