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他国の王子がきましたわ!

「王国の光であられる王太子殿下にご挨拶申し上げる。ルチルート国第二王子、ルサハルト・ルチルートである」


「はじめまして、ルサハルト王子。僕はフィシパル王国王太子のダイアだ。よろしく頼む」


 かわいい略奪女の処遇を家族裁判所に放り投げ、その処遇が未だが決まらない中、ルチルート国から会談のための使者が我が国にいらっしゃいました。ルサハルト王子という方です。わたくし独自の調査ではなかなか優秀なお方なようです。何があってもフォローできるように殿下の後ろにわたくしもついております。ふと視線をこちらに向けたルサハルト王子とばちりと視線が合ってしまいました。


「……そちらのお方は?」


「失礼いたしました。わたくし、王太子殿下の婚約者のマリアーシャ・フィラルフィアと申します。よろしくお願いしますわ」


 名前を聞かれたからには名乗らざるを得ないです。単なる文官の振りをして殿下のおそばにつく予定でしたが、失敗いたしました。


「……婚約者?」


 単なる婚約者がなぜこのような場に? という表情を隠すように微笑んだルサハルト王子。……ポンコツ殿下が何かやらかさないように、答えられない質問を横から補助するようにつけられたことが、わたくしの本日のポジションの理由でございます。文官の振りに失敗したのですから、殿下の横に堂々と着席し、対応するほかないでしょう。わたくしが、目線でそのように指示を飛ばすとすぐにわたくしの席が整えられました。


「大切な外交相手であられるルチルート国との会談に同席したいと、わたくしが我が儘を申し上げたのです。それに、殿下のおそばにいつも侍りたいと思うのは、婚約者として当然ではございませんか?」


 わたくしがそう小首を傾げると陛下たちが軽く頭を抱え、ルサハルト王子は面白そうに笑みを浮かべ、殿下は喜色満面の笑みでわたくしの方に向き直りました。


「マリア! 僕も同じ気持ちだ! いつもマリアと一緒にいたいと思っている!!」


「まぁ、殿下もですの? 嬉しいですわ!」


 わたくしたちがそう微笑み合っていると、ルサハルト王子が陛下たちに向き直り、おっしゃいました。


「……貴国の次期国王夫妻は大変仲がおよろしいようで」


「……ごほん、仲もよいが、マリアーシャ嬢は大変優秀である。そのため、今回の会談に同席してもらったという背景があるのだ」


「そうなのですね」


 ルサハルト王子は訝しんだ表情を隠さぬまま、わたくしの方に向き直りました。




「では、陛下がお認めになるフィラルフィア公爵令嬢のお手並みを拝見といきましょうか?」












「……しかし、それでは我が国の食品の価値が下がってしまうことを考慮いただきたい」


 わたくしが隣にいることでご機嫌な殿下は、会談の間静かに座っていました。しかし、議論が行き詰まり、殿下も退屈そうな様子が目に見えてきました。仕方ありません、口をはさみましょうか。


「僭越ながら、意見を提案してもよろしいでしょうか?」


「ふむ、頼んだ。マリアーシャ嬢」


 陛下の許可が下りたため、わたくしはそれぞれの国の特産物を保護する方法を提案します。


「……このように、貴国の特産品である小麦を我が国に輸入する際には価格を上乗せし、我が国の特産品である魔術具を輸出する際にも同様の措置を行えば、国内での価格が安定したまま、交易をすることが可能になり、」


 わたくしの語りを殿下がキラキラした瞳でみつめています。おかわいいことですわ。


「……”婚約者の傍にいたいから”と言い出した時には、どうなることかと思ったが、噂に違わぬ優秀さであったな」


 わたくしの意見を検討するという形で本日の会談が収まり、ルサハルト王子が見直したと言いたげにわたくしに声を掛けます。少し不機嫌そうな殿下の手を机の下で握り、お礼を申し上げます。


「恐れ多いことにございます」


「……もしかして、最初にあえて愚かな言動をしたのも、策略家?」


「ふふ、殿下のおそばにいつもいたいということは、わたくしの本心でございますわ?」


「そういうことにしておこう。そうだ、()()()()()()()。先ほどの件について、もう少し議論の機会がほしい。後ほど、二人で話す時間をいただけないだろうか」


 ルサハルト王子の言葉に、わたくしの手を握る殿下の手の力が強まります。安心させるように握り返し、申し上げます。


「大変申し訳ございません、ルサハルト王子。我が国では、婚約者以外の異性と二人きりになることは認められておりませんので……」


 そう申し上げると、少し悩んだ素振りを見せた後、つづけられました。


「しかし、マリアーシャ嬢。ダイア王子派一時期、別の女性と親密にしていたと聞いている。それに、君にも異性の友人がいるのではないか?」


「まぁ! ルサハルト王子。彼の女性は問題のあるお方でしたので、あえて殿下が共に行動して見張っていたのですよ? すでに投獄済みですわ。それに、わたくしの友人は性別は女性ですわ。……そこまで調べた上でのご発言でしょう?」


 そう問い、話は終わりとお過ごしいただく部屋への案内を指示して、ルチルート国の皆さまをみおくりました。




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