報告会
「というわけで、殿下の愛は勝ち取りましたわ。あれ以来、あの小娘は殿下に追い払われておりますの」
うっとりした表情を浮かべるわたくしの言葉にメルティア様は不審そうに問いかけます。
「我が国の王族に向ける言葉ではないけど、本当に国を任せて大丈夫なのか?」
「ふふふ、わたくしがついておりますもの。1000年に1度のレベルの発展をさせてみせますわ!」
「マリアーシャなら本当に可能だと思うけど」
わたくしがはしたなくもガッツポーズをとり、少し呆れた様子のメルティア様のお言葉を遮るように大きな足音が鳴り響き、ドアがバンと開けられました。
「マリア! 探したぞ! ここにいたのか!」
「まぁ! 殿下!」
「またこの男と一緒にいたのか! 僕を放って!」
「そんなにやきもちを焼かないでくださいませ。ふふふ、そもそも、メルティア様は、女性でいらっしゃいますわよ?」
「え?」
そう言った殿下は処理落ちしたかのように固まってしまいました。
「……言っちゃなんだけど、本当に大丈夫?」
「わたくしがついてますもの! 大丈夫ですわ!」
メルティア様は殿下が国王となる将来に不安を覚えておいでです。しかし、わたくしが既に障壁となりうるさまざまを取り除いております。問題ございませんわ。
「中性的な顔立ちだとは思っていたが、女だったとは……しかし、恋愛対象が同性の可能性もある! マリアーシャはこんなにも美しいんだ! 僕が女でも惚れてしまいそうだからな!」
「まぁ! 殿下ったら! 嬉しいですわ! でも、心配しなくても大丈夫ですわ。メルティア様とわたくしは友人なだけですもの」
心配そうに叫ぶ殿下のお言葉が嬉しくて、はしたなくもわたくしははしゃいでしまいます。胸がきゅんっとなりましたわ。は! もしかして、わたくしの心臓に何か負担がかかってしまったのかしら? わたくし、殿下の素敵さのせいで死んでしまったら困りますわ!
「……」
呆れ返った視線をメルティア様から感じますが、今はそれどころではありません。
「友人なら問題ないか。いや、しかし、僕よりも優先されるのは悲しいな……」
お悩みになる殿下の愛らしさにわたくしは悶え、殿下は悩み続け、メルティア様は呆れる、そんな不思議な三角関係ができあがりましたわ。
「メルティア様、心配なさらなくてももう大丈夫ですわ。ありがとうございます」
「……そこにいるあの人影は放置でいいの?」
こちらを覗き込むように柱の影からリリールナがハンカチを噛み締めながら見つめています。ふふふ、そうでしょう。わたくしの殿下を簡単に落とせたとお思いでしょうが、すべてわたくしの掌の上ですわ。もう少し、役立っていただきますわ。リリールナもお可愛らしかったけど、少しイタズラしすぎましたわね?