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婚約破棄

「マリアーシュとの婚約を破棄する! 次の婚約者はこのリリールナだ! 僕はリリールナと素晴らしい国を作るんだ!」


突然、呼び出された王太子殿下に婚約破棄を突きつけられました。


「あの、王太子殿下のおっしゃる意味がよくわかりませんわ。王太子殿下が国王陛下のお決めになった婚約を破棄できるとお思いでして? せめて代執行権が授けられていれば可能かもしれませんが……ございませんよね? そもそも、わたくしが王妃となることが、王太子殿下が立太子できている理由ですわ。わたくしを王妃としないのならば、次期国王は王弟殿下の息子であるアラン様ですわ。あといつも申し上げておりますけど、マリアーシュではなく、マリアーシャですわ。発音は正しくしていただかないと、言葉の意味が違ってきてしまいますわよ?」


「うるさいうるさいうるさい!」


わたくしの言葉に駄々をこねる子供のように暴れられる王太子殿下。


「うわぁん。マリアージュ様がこわいこと言うよぉ」


リリールナ嬢もお子様のようで愛らしいですわ。


「リリールナ嬢。わたくし、あなたに名前を呼ぶ許可を出した記憶もございませんし、発音はマリアーシャでございます。そして、こわいことではなく正当な指摘、でございます」


「小難しい言葉ばかり使って……馬鹿にしているんだろう!」


ふてくされたご様子の王太子殿下に、ご忠告申し上げます。


「馬鹿になんてしておりませんわ。普段王太子殿下とお話しする時は、わかりやすいように平易な言葉を使っておりますのに……。王太子殿下こそもう少し勉学に励まれた方がよろしくて?」


「馬鹿にしやがって! マリアーシュとの会話はどこか馬鹿にされていて、いつも楽しくないんだ! マリアーシュだって、そこのガリ勉伯爵令息と話してた方が楽しそうじゃないか!」


「ガリ勉伯爵令息……? あぁ、メルティア様とはいつも国をよりよくするためにという題で課題を出し合っております。大変有意義な議論ですが、わたくしは王太子殿下とお話しする時も楽しく新鮮に感じておりますわ?」


メルティア様が伯爵令息かという問題はさておき、とても良い会話の相手でいらっしゃいます。しかしながら、わたくしは王太子殿下とのお話も新鮮で楽しいのですわ。


「え? 僕との話、楽しいの?」


喜色を浮かべられる王太子殿下。単純でいらして大変愛らしいですわ。


「えぇ。王太子殿下がお楽しみいただけていないのでしたら、わたくしの不手際ですわ。お楽しみいただけるように善処いたしますわ。参考までにリリールナ嬢とは普段どのようなお話をなさっていらっしゃるのですか?」


「え、私? 私はただ、王太子殿下のお話を聞いているだけというかぁ……」


「リリールナとは会話の感じが同じだから、話しやすいんだよな」


「わかりますぅ。とっても楽しいですもん」


「大変勉強になりますわ。王太子殿下はお話を話す方がお好き、と。内容はとりとめのないこと。ふむ。なかなか議論のしがいのありそうな……。では、今後の会話のために検討を重ねてまいりますので失礼いたします」


「あぁ……」


「はぁい」



おふたりとも婚約破棄のことはすっかり頭から抜け落ちておいでですわ。ふふ、とても愛らしい。では、わたくしは目撃者の口を塞ぐため、少し忙しくなりますわ。


喜劇を見せたらそのモノマネをするのか、という今回のテーマ、とてもいいものでしたわ。次に王太子殿下にお見せする喜劇は、婚約者との純愛物にいたしましょうか?

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