君と僕の100年の旅
【A 9歳】
AとBは豊かな日本で生まれた小学三年生。ある日、路地裏の奥で穴に落ちるようにAとBは異世界転移する。落ちる中で、AはBと手を繋ぎ、抱きしめ、絶対忘れないと誓う。
目が覚めると、Aは一人、砂漠の上で転がっていることに気づく。
三日三晩の飢餓を乗り越え、ようやく街に着くA。心優しきお爺さんに飯を食わせてもらい、そこで暮らさせてもらうことに。その中で言語や、その世界の常識を教えてもらう。
【A 13歳】
しかし、その生活も数年で終わる。おじいさんが死んでしまったのだ。
Aはスリや泥棒で生計を立てるようになった。何年もスラム坊として生きたAは、街で有名な泥棒になってしまう。そんなある日、泥棒に失敗し、騎兵に腹を弓で撃ち抜かれる。
虚ろな意識の中で、なんとなく、肉体の外にある何かの存在をぼんやりと感じた。
次の瞬間、Aは自分を見ていた。Aは、自分以外の眼から、世界を見ていることに気づく。その眼は物理を無視して、壁をすり抜け、地を潜り、空を飛ぶことだって出来た。Aは、自分が千里眼に目覚めたことを知った。
Aは騎兵の追っ手を千里眼で潜り抜け、命からがら自拠点へ生還した。
【A 14歳】
それからというもの、千里眼の能力を得たAは強盗や密売、殺人が絡まない限り、あらゆる裏の仕事でその力を発揮し暗躍していた。
裏の王として、国中にその名は知れ渡り、王直属の騎士隊がAを捕らえに来る。
逃亡の中、千里眼を酷使しすぎたAは、自分の中の何かが酷く澱んでいくのを感じた。しかし、そんなことを気にしている余裕はない。騎士隊は一人一人が異能を持ち合わせていた。
彼らから逃げるのは容易ではなかった。Aは捕らえられてしまう。
目が覚めると、彼は牢獄の中にいた。騎士長はAと話をしたかったようで、よく牢獄にやって来た。騎士長は今この国が隣国との政治争いで戦争の危機にあること、騎士の異能には必ず大きな穴があること(例えば強力な罠を設置できるが、全員その罠について忘れてしまう。火を出す異能があるが、自分もその火の熱さを感じるなど)、Aの能力には何故か穴がないことを教えてくれた。
騎士長はAに、騎士隊への勧誘をする。Aを騎士隊に入れたなどと、公には言えない。そのため、特殊部隊へAは入った。
国を上げて捕らえるほどの犯罪者を騎士隊に入れたのだから、騎士長の判断に戸惑う特殊部隊の者たち、最初は蔑みの目を向けられていたが、Aの才能、根にある正義感を知り、部隊とAは仲良くなる。
【A 17歳】
ある日、特殊部隊として活躍するうちAは、隣国の革命軍のスパイに任命される。Aのいる国は隣国と支配関係にあり、そのレジスタンスが決起を起こしそうだと言う。
彼はそのレジスタンスの中で、成長した姿のBと出会う。しかし、彼は記憶を無くしており、Aのことが誰なのか分からなかった。
Aはスパイ活動の中で、初めて人を殺した。殺した後、ふとした拍子に気づく。殺した相手に、千里眼を使った状態だと乗り移れることに。Aは自分の能力が千里眼と死者乗っ取りであると考えるようになった。
Aはスパイとしての活動を終えたあとも、時々千里眼でBの様子を覗き見するようになる。
また、Bと会った日以来、夢を見るようになった。幼少期の、異世界に落ちた頃のBが白い空間に立っている夢だ。
【A 19歳】
その後も色々活躍。一度殺しをしたAは、殺人に躊躇がなくなる。暗殺の仕事も引き受けるようになり、その中で死者乗っ取りも頻繁に使った。夢の中に出てくるBは、いつしか廃人になっていった。
んでなんか色々あってBともなんやかんや一緒にいるようになる
AはBに記憶を取り戻させることを誓う
その後なんか色々あってB死にかける
Aは泣きながら異世界に落ちたときのように、手を繋いで、Bとおでこを合わせる→Bに記憶を送ることに成功する→ Bがなぜか廃人化。
ここでネタバラシ。
Aの能力は千里眼と死者乗っ取りではなく、記憶の保存と移動である。PCのファイル移動のように、相手の記憶や知識を移動することができる。使いようによっては、記憶の略奪と言える。
ただ、Aの魂という容れ物は容量が無限ではないので、相手の記憶全部奪うとかは普通は無理ということに注意。
だが、Aは異世界転移者、つまり、現世界人としての魂(現魂)と異世界人としての魂(異魂)の二つがあることに注目してほしい。
Aは異世界に落ちる途中でBを忘れたくないと願った。そのときに、Aは本来では不可能なはずの他人の人生の記憶の全部を奪うことに成功してしまう。これが出来てしまったのは、まっさらな異魂という容れ物が用意されてしまっていたからだ。空っぽの魂は、新品のUSBのようなもので、他人の人生をまるまる移動保存できるだけの容量があった。
故に、異魂はBの記憶を持ち、Bという存在を、意識を、宿らせてはいるものの、肉体を持たないB´のような存在になっていた。その上で、Aはその持ち主として、異魂に命令を下すことができた。すなわち、千里眼とは、B´を動かしていたということだ(あるいは、異魂を動かしていたのは自分だが、B´にも強制的にその体験を強いていたという設定でもいいかもしれない)
今まで使ってた千里眼はB´を動かし、その視点を共有していただけというわけだ。初めて千里眼を使えたのは、Aが泥棒に失敗し、死にかけた時だった。それは、死にかけることで現魂が霊体に近くなり、異魂が見えるようになったからだ。異魂への意識の転送がイメージできるようになったため、疑似千里眼が使えるようになった。
また、死者乗っ取りは、魂の抜け殻となった死者に、異魂を宿らせていたということだ。しかも、肉体の損傷や、その痛みは、B´だけが感じていた。その結果B´の意識は崩壊しており、その崩壊した意識をBに上塗りしてしまった。
Bが廃人になってるのを見て、後悔と絶望を胸に、塔の崩落から逃げずに死ぬ。
忘れたくない、懺悔の気持ちを抱いたまま、死者となったAの現魂と異魂は輪廻装置の元へ。記憶を消し、魂をリサイクルする輪廻装置が異魂の記憶を消す。が、現魂の方は現世界から持ち込まれたもの。輪廻装置の管轄外の存在。故に、記憶を消すことが出来ず、輪廻を遂行できない。このような致命的なエラーを検知した装置は、ゲームのロールバックのように、世界の巻き戻しを試行。異世界転移直後に舞い戻る。現魂に記憶があるAは、実質的なタイムリープを達成。今度はB´の力に頼らず、Bを救いに行く