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お公家の事情 火にも水にもわがあらなくに  作者: 英じゅの
黄色いおにぎりと練りきりの猫
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西都の百鬼夜行

真護の訳の分からない声明に、大爆笑が起こった。


「真護、お前は、正しく東条の嫡男だな」

「いや、敦ちゃん、南条の大姫の色香に惑わされるなんて、とんでもない。廃嫡して、うちは絢子に継がせるよ」


いきなり真護の廃嫡問題になってしまった。曙光帝国では、瑞祥のお祖母さまのように、女性も家長になることが出来るが、それは嫡男がいない場合だ。嫡男がどうしようもないバカは、残念ながら、その対象にはならない・・・はず?いや、でも、私に代替わりすることを考えて、しっかりした姉の東条の大姫に家を継いでもらった方がいいような気もするな。


「いやいや、享護、うちの暁子が好みだとは、真護の審美眼は大したもんだよ」


南条家は先代も当代も嬉しそうだ。


「うちの雅子も負けていないと思うがな。まぁ、真護には年上過ぎるか」


東条の絢子あやこ姫が私たちの二つお姉さんで、南条の暁子姫は中等科で、北条の雅子姫は高等科だ。明楽君に説明してあげると、「真護くん、弟もお姉さんもいるんだ。いいなぁ」と羨ましそうにしていた。


私と同じで明楽君も一人っ子だからね。でも、私は、瑞祥の従兄の兄さま達といるので、年の離れた兄が二人いるつもりだけど、確かにお姉様がいるというのは憧れるかも。


「お姉様っていいよね、ふーちゃん。うちは男ばっかりだから、姫が欲しかったなぁ」


先代の西条侯爵が、羨ましそうに言った。


「博實おじさま、姫によるんじゃないですか。うちのサブ子みたいのだと地獄ですよ」

「兄さま、頼子です」


お父さま、嘉承では、もう頼子叔母さまはサブ子でいいんだって。


「敦人、そう言うな。頼子は、正しく嘉承の姫で、帝国一頼りになる漢だと俺は思うぞ」


いやいや、お祖父さま、帝国一頼りになる漢という時点で、姫としてどうよ?


「そうやって父様が甘やかすから、ああいう輩になるんですよ。あいつと学園時代の取り巻きが何て言われていたかご存知ですか」


珍しく嘉承の父が祖父に食ってかかっている。この二人は、山賊の周波数が同じのせいか、普段は仲がいいので珍しいことだ。漢で輩なのか、うちのサブ子姫は。


「兄さま、頼子とお友達は、この間、私の野点に参加してくれたんですよ。皆、学園時代と変わらず上品で可愛らしい」


瑞祥のお父さまがニコニコしながら仰るが、お父さまは、今、明楽君以外は、全員が嘉承一族で、完全にアゥエーなことに気づいておられない。


「彰人、学園時代と変わらず上品で可愛らしいのはお前だけだ。頼子とその取り巻きが集まるとな・・・」


そこで嘉承の父が、言葉を区切り、自分のはす向かいに座る側近を見た。ダンディー南条が肩をすくめてみせた。いちいち気障だな、織比古おじさま。


「あいつらは、百鬼夜行って呼ばれている」


は?


ちょっと待って、何で西都の名門貴族家の姫君が集まって百鬼夜行?瑞祥のお父さまは、白皙のお顔に大きな疑問符を浮かべているし、私も真護も明楽君も訳が分からず、周りにキョロキョロと視線を這わせた。


「百鬼夜行って、鬼とか妖怪が集まって練り歩くことでしょ?」


明楽君の無邪気な質問に、嘉承の父が真顔で答えた。


「そうだ、明楽。でも、西都公達学園の百鬼夜行は、並みの鬼や妖怪のレベルじゃねぇぞ。あいつら、まとめて武闘派だからな」

「兄さま、明楽君に変なこと教えないでください。何で貴族家の姫君たちが武闘派なんですか」


瑞祥のお父さまが呆れたように仰った。


「彰ちゃん、本当だって。拳に魔力を纏わせて、物理で襲ってくる連中なんだ。な、時影?」

「ああ、特に頼子姫の右腕の東久迩ひがしくにの大姫な。あの土魔法で作った巨大ゴーレムの腕を自分の腕に纏わせた時は、南条家は嫡男を失ったと確信したな」


東条侯爵の真剣な訴えに、普段は能面のように表情を出さない北条侯爵までもが、真顔で頷いた。何でここで南条家?皆の視線が、当代の南条侯爵に集まった。


「えーと、それは私が東久迩の大姫の妹以外に、八人ほど可愛らしい姫たちとお付き合いしていたので、頼子姫にヤマタノオロチより質が悪い九股男は成敗してくれると言われて、【烈火】で焼かれそうになったからだったかな」


ダンディー南条、九股って・・・。本物のスケコマシがいるよ。ちょっと、そんなんで、明楽君の後見人になるつもりだったの?それと、東条侯爵の顔を、ちゃんと見た方がいいよ。


「だったかな、じゃなくて、間違いなくそうだろうが。俺がお前と一緒に【風壁】で東久迩の大姫のゴーレム腕を防いでいるところに、英喜と時影の火が、頼子姫の火と真っ向からぶつかり合って、余波で、こっちまで頼子姫に焼かれそうになったのは一生忘れないからな」


頼子叔母様は、火と風の嘉承の家の姫ながら、その魔力は火のみに振り切れているため、怒らせると、嘉承の長兄である父でも手こずる脅威の存在だ。そして、風の侯爵家二人の魔力で練った【風壁】をもってして防ぐという土魔法を操る東久迩の大姫というのも凄まじいな。魔力を拳に纏わせて物理で襲うって、何?怖すぎるよ。そんな姫君たちが何人も集まれば、本当に超武闘派の百鬼夜行じゃん。


私の学年の女子は、温厚で真面目な梨元の香夜子姫がリーダー的な存在だから、助かったかも。隣を見ると、真護も似たようなことを考えているようで、大きく頷いていた。ところが明楽君の反応は私たちと全く逆で、くりくりの目を輝かせながら、声を弾ませて、おじさま達に訊いた。


「それで、どうなったの?みんな、お姫さまにやっつけられちゃったの?」


嘉承の父も、当代の三侯爵たちも、皆が明楽君を見つめた。


「いや、小野の二の君が南条と東条の張った風壁に加勢してくれて、頼子と東久迩の大姫から守ってくれた。その間に西条が俺のところに来て事情を説明して、俺と西条で頼子を止めた。東久迩は、小野と南条と東条と北条で止めてな。あの後は、全員、魔力切れを起こしそうになって大変だったな」


嘉承の父が、面白そうに話すと、三侯爵が苦笑しながら言った。


「敦ちゃんと賴子姫以外は、全員、完全に魔力切れで立ち上がることも出来なかったよ」

「そうそう、学園長が稲荷屋に緊急依頼して、山ほどお菓子を運んでもらって必死に食べたよな」

「俺は頭痛がひどくて吐きそうで、何をどれだけ食べたかも覚えてないなぁ」


当時の稲荷屋というと、今の店主こんちゃんか、亡くなった先代店主かな。うちの一族みたいなのがいるから、あの菓子屋は急な大量依頼を、こともなげに捌くのか。だんだん西都の歴史とカラクリが分かってきたわ。


「明楽、そんなわけでな。俺らは全員、お前の父方の血筋に恩があるんだよ。特に南条な。だから、何があっても俺らがお前も母親も助けてやるから、心配することは一つもないぞ」


嘉承の父の言葉に、明楽君が、最近消えていた大好きな豆柴の笑顔を見せてくれた。



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