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お公家の事情 火にも水にもわがあらなくに  作者: 英じゅの
黄色いおにぎりと練りきりの猫
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山賊親子と豆柴の子

私がまた怪しげな脳内布教活動をしているところに、牧田がやってきた。お重箱に、私たちが夕食後に食べ損ねたデザートと、これから夜勤の父に夜食を持ってきてくれたらしい。


「もう遅い時間ですが、料理長が若様がデザートを召し上がっていないので、お腹がへっているのではないかと心配しておりまして」


あう~うううぅ。料理長の気持ちは本当に嬉しいんだけど、明楽君のお家の冷蔵庫を見た直後では、ちょっとこのワガママ・ボディが恥ずかしいんだよ。


料理長は私に激甘なので、デザートだけでなく、がっつり夜食も入っていた。牧田がいつものように、無駄のない動きで、あっという間に暗い病院のカフェのテーブルをディナーテーブルに仕上げてくれた。牧田の手際の良さと、料理長が短時間で用意してくれた料理の種類と量の多さに、明楽君の目が輝く。


「そういえば、夕飯は食べたの?」


明楽君が首をぷるぷると横に振った。いやー、私の豆柴ちゃん、食べて。今すぐ、全部!


「そうだなぁ。明楽、お前、お母さんが入院している間に、ふーにくっついて、こいつの食べているものと同じものを全部食べろ。お前も年齢より小さいからなぁ。ガキが、また支払いとか余計なことは一切考えんなよ。いいな?」


嘉承父、初対面だよね。いきなりお前で、呼び捨てで、しかもガキ呼ばわりですか。でも、そうなんだよなぁ。明楽君は、うちのクラスでは一番小さくて、女の子より華奢なんだよ。あのスケ・カクが見下ろしちゃうくらい。


明楽君は、山賊の若頭に、こくこくと頷いた。


「よし。じゃあ、とりあえず、これさっさと全部食って、とっとと寝ろ」


今度は、山賊の頭が無茶ぶりをする。もう、この親子、何とかならない?


「ふー、お前、また失礼なこと考えているだろう」

ぎゃああああ、また心を読まれた!


結局、夜食とデザートを全部食べて、歯を磨いて、寝る支度をしていたら、もう11時近かった。濃密な時間だったので、脳みそが緊張して寝つきが悪くなるかと思いきや、頭が枕についた途端に爆睡してしまった。明楽君も同じだったみたい。今朝、起きたら、お互い、妙にすっきりした顔をしていた。


あ、これ、お祖父さまの業火だ。この病院、あの上位魔法の範囲内だったよ。さすがは嘉承の先代。いい仕事するよねぇ。


お父さまは、いつもはボタンダウンのシャツにチノのズボンで幼稚舎に行かれるけど、今日は白いワイシャツにネクタイ姿だった。手にはオーダーメイドのスーツの上着を持っていらして、朝から麗しいこと。


私たちも学校の制服に着替えて、三人で病院のカフェに朝ごはんを食べに行く。


「お父さま、今日は幼稚舎じゃないの?」

「うん、今日は本業で学園に行くから、途中まで一緒に行こうね」


カフェには、思ったより多くの夜勤明けの人たちがいた。お父さまは、この病院の顧問弁護士もしておられるので、顔を知っているドクターやナースも多い。


「瑞祥先生、ご無沙汰しています」


セルフサービスのカウンターに並んでいた30代のドクターがお父さまに挨拶をしてきた。


「滝川君、ひさしぶり。お元気かな?」


「はい、状況がかなり落ち着きまして、私もようやく溜まった有休が取れそうです。そのせいか、今日は体が軽くて!」

「ああ、それは良かった。本当にお疲れ様だったね」


瘴気で重篤な症状になっていた帝都からの患者さんを沢山受け入れたため、ここ一年ほど病床使用率が危険なくらい高くなってしまった。病院に父が泊まり込むようになって、もう何か月経つのかなぁ。ちなみに、滝川ドクター、今朝体調がいいのは、お祖父さまの業火のおかげかもよ。


「滝川君、甥の不比人は知っているよね。こちらは、同級生の高村明楽君だよ」


お父さまが紹介してくれたので、明楽君と二人で挨拶をして、ぺこりと頭を下げた。


「おはよう。二人とも礼儀正しいね」


滝川ドクターが挨拶を返してくれて、そして、少しの間、明楽君を見て首を傾げた。


「えーと、高村君は、以前、会っているよね。あれ、おかしいなぁ。私はこう見えても、今まで看た患者さんは、全員覚えているはずなんだけどな。患者さんじゃないとすると、学園の健康診断か、予防接種で会っているのかな。」

「ドクター、明楽君は二学期から学園に来た転校生だから、健康診断と予防接種では、まだお会いしてないですよ」


私がそう言うと、ドクターは、「あれ、そうなの」と不思議そうな顔をした。私とお父さまは素早く目を合わせた。


「お前ら、朝ごはんは済ませたのか?」


疲れたような声に話しかけられて振り返ったら、お祖父さまだった。


「お祖父さま、何か枯れてませんか」

「うるせーわ。どいつもこいつも人の業火で快調になりやがって、むかつく。こっちは魔力低下でひどい頭痛ってのによ。あの程度でこれじゃあ、俺ももう先が知れてるよな」

「いやいやお父様、普通の人は上位魔法を使った後で、病院で夜勤は出来ませんから、まだ50年くらい大丈夫ですよ」

「お前は俺を何だと思っているんだ、彰人」


サイキック山賊っ!


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