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お公家の事情 火にも水にもわがあらなくに  作者: 英じゅの
黄色いおにぎりと練りきりの猫
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東風と南風の無意味な争い

恋多き南条家だが、当代の織比古おじさまには、子供が暁子あきこ姫しかいない。そのせいか、もう明楽君を引き取る気満々だ。私の癒しの豆柴ちゃんに、エロ侯爵の影響が出たらどうしてくれるんだよ。絶対に阻止するぞ。


「明楽君と、お母様を引き離すんですか」


そうして、ふるふると可愛く首を横に振って、ちょっと涙目っぽく瑞祥のお父さまを見る。名付けて、スナギツネの目にも涙作戦、どうよっ。


「小さな子から、母親を取り上げることはできません。織比古、諦めてください」


お父さまが、はっきりと仰った。これでもう、南条家は明楽君に手を出せないはず。


「まさか、まさか。もちろん、母親込みで引き取るに決まっているじゃないですか。この南条が女性を泣かすとお思いか」

「お前ら南条は、先祖代々、女性を泣かすことしかしとらんだろうが」


お祖父さまの鋭いツッコミに他の三家の当主は、にやにやしている。さすがのお父さまも、これには苦笑された。


「とはいえ、南条家が後見につくのは悪い話ではないな。その辺りは、本人たちの希望を聞いてから考えることにしよう。彰人、陰陽寮が学園に送って来た資料の中に、明楽の魔力測定結果や、両親のことは書いてあったか」


学園理事のお父さまは、すでに学園長から明楽君のことが書かれた書類の写しを入手していたらしい。おっとりしているようで、仕事は早いな、お父さま。


「ええ、これなんですけど・・・」


お父さまが困った顔で、書類を一枚、テーブルの上に置いた。覗き込むと流麗な手蹟が見えた。


『風。結構、魔力のある子なんで、制御と鍛錬と保護を宜しく。』


ええっ、これって国家公務員が作成した正式な書類じゃないの?小学生の作文でも、もう少し内容があるよ。無駄に綺麗な筆跡が、何か腹がたつな。


真護と私が絶句しているのに、お祖父さま達は、ああ~という感じだった。

「土御門か・・・」


土御門!出たよ、丸投げ陰陽師。


「あいつにまともな報告書を期待するだけ時間の無駄だからな。西条、誰か帝都に派遣して、高村親子のことを調べてくれ。北条は、明楽の魔力の再測定な。不比人、付き合ってやれ。東条は、制御を教えろ。真護と不比人と一緒なら、明楽も安心だろう。南条は余計な手は出すな」

「御前、それはない。風の制御なら、考えなしの東条よりも南条の方が優れておりますよ」


魔力の制御や練り方は、東条が感覚派で、南条は理論派。どちらが正しいか、優れているかという話ではなく、個人の好みの問題だから、この辺りは、明楽君次第ではないかな。明楽君は、割ときちんと筋立てて話ができるから、南条のやり方があう気もするかなぁ。


「喧嘩売ってんのか、南条。売値で買うぞ」


享護おじさまが、織比古おじさまに絡む。父親に触発されて、真護まで織比古おじさまを睨んでいるよ。


「うるせー、お前ら。彰の前で揉めんな。まとめて焼くぞ」


山賊のお頭に逆らったら本当に殺られちゃうよ。享護おじさまと織比古おじさま、西都では、名にし負う風の名門侯爵家当主だけど、嘉承の火には勝てないと思う。ちゃんと成仏してね。


あきも、ふーも、今日はこれでいいな」


お祖父さまに、私は大きく頷いた。明楽君、良かったね。我らが嘉承一族が守るからね。


「西条の報告が上がり次第、次の手を打つ。いいな」

「「「「御意」」」」


四侯爵が一斉に頭を下げた。


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