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異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~  作者: RightWorld
第1章 マヤちゃん、異世界に立つ!

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第2話「異世界少女との遭遇 ~その2~」

 

 異世界で出会った同じくらいの歳の少女、サンドラちゃん。

 金髪に青い目をした彼女は、わたしの事を「異国の方?」と問うた。


「それで、どうして異国の人だと思ったの?」

「だって、つやつやでさらさらの黒い髪。黒い瞳。そこまで黒い人はこの辺りにはいないもの」


 わたしは両手をペタペタ頭にやる。そういえば、飛ばされたんだか転生したんだかしてから、わたしは自分の姿を全く見ていない。もともと日本人だし、黒髪も黒い瞳も日本人なら当たり前。同じ姿だろうか。

 お師匠様の荷物から何か姿見になるものがないかと見回すと、50cmくらいの長さの剣が目に入った。鞘から10cm程を引き出し、ピカピカの剣に自分の顔を映し出す。

 そしてほっとする。凹凸の少ない顔、肩の下まである黒髪、黒い眉、黒い瞳、黄色人種の肌色、いつもの見慣れた自分の顔だった。つまり日本人のそのままの姿でここに現れたのだ。服装も家を追い出された時のもの。シャツにニットのセーター、カーゴパンツ、スニーカー、ポケットが沢山ある男物のアウタージャケット……。


 わたしはあの家に住むようになってから、制服以外でスカートを履いたことがなかった。わたしが女の子っぽい格好をすると、従姉妹の子が嫌がるのだ。自分で言うのも何だが、わたしは目を引くようなのだ。横にいる従姉妹は完全にガン無視される。それがとてつもなく嫌ならしい。それで『作業服のレイバーマン』で買ったような服を着てるわけだ。でも実はわたしはボーイッシュな服が好みなので、こういった出で立ちは全然嫌じゃなかった。少年に間違わられる事以外。


 そんなわたしの姿はこの辺りには珍しいということなので、ヨーロッパにぽっと現れた観光客のような感じなのだろう。

 あれ、そうするとお師匠様も確か東洋系の顔立ちに、黒に近い焦げ茶の髪だった。お師匠様は旅行でこっちに来てたんだろうか?


「そ、そうね。遠くから来たの。位置関係は分からないからどれくらいって言えないけど」

「そうなんだ」


 彼女はにこっと笑う。


 わたしは大きな丸焼きをもう一度見る。

 これは貴族に売れるらしい。


 ……そうか。これはお金になるんだ。


 どこだか知らないところに突然飛ばされて、凄い法力は戴いたけど、この先どう生きていけばいいのか分からないこの状況。

 法力。お肉(=お金。それもかなりの額)。少女。これが今わたしの前に置かれた全てだ。これを有効に使わんとしてなんとする!


「そ、それじゃお仕事のお邪魔でしょうから、わたしはこれで……」


 立ち去ろうとする少女を慌てて止めた。


「ま、待って!」

「ほえ?」


 お金と同等かそれ以上なのは情報! 今、この世界の情報を安全に仕入れられるのはこの少女のみ! この子を手放しちゃいけないわ!


「ね、ねえ、これもっと食べても、なんなら少し持って行ってもいいから、もうちょっと話を聞かせてもらえないかな。わたし、この辺り来たの初めてで、いろいろ教えてほしいんだ」


 口を大きく丸く開けてびっくりした少女は、見えないほどの勢いで首を縦に振ると、わたしの傍に寄ってきた。


「なんでも教えてあげる!」





 こうしてわたしは、この世界の事を、まあこの周辺だけだろうけど、仕入れることができた。


 少女ことサンドラちゃんは、近くの村「リトバレー」に両親と暮らしている。年齢は13歳だった。くっ、なんて成長いいんだ! 体つきがわたしとあんま変わんないから同じ年くらいだと思ってたのに。逆にわたしが17歳だといったら、物凄い仰天された。

 木の実を取りに来てたら、漂ってくる香ばしいいい匂いに誘われてやってきたのだと。


 村は90人ほどで、主に狩猟と薬草や山菜取り、小規模な畑でほぼ自給自足しているらしい。山で獲れる薬草とかキノコ、薬用人参が高く売れるそうで、あとは動物の肉や毛皮が村の貴重な現金収入になっている。電気やガスなどはないようで、聞いた感じでは、転生前の世界でいえば3,400年前くらいの感じだろうか。


 この辺りを収めている領主様は比較的良い人だそうで、領民には親しまれているとのこと。領主様が治めている領とは、どこかの国の一地方自治領とかではなく独立した準国家であり、名をヘキサリネということ。


 さて、重要なのはこれだ。

 人々は通常1つ法力を持っており、5,6歳くらいから発現し、鍛えることで大体15歳くらいで確立する。水や火を出せる、手を使わず物を持ち上げる、遠くが見える、暗闇でも見えるなど、法力は様々あり、強さも人それぞれだ。

 サンドラちゃんは薬の効能を上げるという、結構レアな法力が発現したとのこと。何でも薬の効き目が5倍以上になるのだそうだ。まだ成長中らしい。普段は5分の1の分量で薬を処方するとかいう使い方をして、村の薬の消費を節約しているのだとか。


 法力が現れない人もごく稀にいて、そういう人は捨てられてしまうのだという。法力のない人の子供も法力を持たないからだ。法力は村にとって生存する上で必要な財産であり、法力のない人が増えてしまうと、村は外敵や自然の脅威に対して極端に弱くなってしまう。生存に関わるのだ。

 お師匠様に会ったとき、

『少女よ。お前は、法力は発現したか?』

『その様子じゃ、発現しなかったみたいだな』

と言っていたのは、わたしは法力が発現しなくて捨てられた者だと思われたということだ。


 とは言っても、法力は日常生活で役に立つかわいらしいものが大半で、人に危害を与える程強い人は、村では収まりきらず外へ出て行ってしまうという。権力者に取り付いたり、軍隊に入ったり、盗賊団を率いたり……。


 わたしのは確実に人に危害を与えるレベルだ。お師匠様が「力は良いことに使え」って言ったのが分かる。

 しばらくわたしの法力の強さは言わないでおいた方が良いかな。転生モノによくある無双ではないけど、下手に知られるとアブナそうだ。能ある鷹は爪を隠すのだ。


 話を聞いて、サンドラちゃんは信用できる人との確信を得た。この分なら村の人達も頼れるかな。よし頼っちゃおう。


「色々教えてくれて、ありがとうサンドラちゃん」

「お役に立てたなら、嬉しいの」

「そしたら、もう少し頼っちゃってもいいかな。迷惑でなければ」


 サンドラちゃんはぶんぶん首を縦に振った。


「ぜんぜん! マヤちゃんのためなら、なんだってお手伝いしちゃうよ!」


 なんだってかぁ。気前いいなあ。都会と違って田舎の人は、自分が貧しくても他人に親切なんだよねえ。助け合わないと生きていけないからなのかな。


「ありがとう」


 わたしは自然と微笑み返していた。


「それで、どうすればいいの?」

「うん。まずこのお肉の塊。お師匠様は好きに使えって置いていっちゃったけど、こんな量わたし一人ではさばけないし、運べないから、サンドラちゃんの村の人に手伝ってもらっていいかな。勿論お手間賃は払うよ。後ろ足でどう?」


 サンドラちゃんがまた目を飛び出さんばかりにした。

 さっきいろいろ聞いた話では、サーベルタイガーの肉の価値は、松坂牛の飛び切りいいのより高そうな感覚だ。皇室御用達のだったら100gで5千円くらいってとこかな。解体して肉だけにしたら、仮に半分の250kgになったとして、えーと1キロが5万円だから1250万円だ。

 なにそれ、もうひと財産じゃん! 燃やさなくてよかったー。

 両足で50kg肉が取れたら250万円だね。どうだろう? モノがモノだけにもっと出さないとかな。


「す、すぐ人呼んでくる!」


 猛ダッシュでサンドラちゃんは走っていった。

 あの様子だと、もっといい値が付くのかな? まあいいよ。お世話になるからサービスしよう。知らないのをいいことに騙されないよう気を付けないとだけど。


「さて、動物やカラスとかに取られないよう、火でも焚いておこう」


 枯れ枝や枯れ木を集め、下に積んだ枯れ葉に火打石で火を着ける。そこに手を差し出し、「そーれ」とやると、酸素が吹き込まれた。とたんにガスバーナーでも見るように火は勢いを増した。すぐ上の枝にも火が移って、あっという間に焚火は完成した。

 焚火は家族キャンプで学んだんだ。だけど着火剤なしで、それよりも早くできるとは思わなかったよ。


 酸素はほんのちょびっと出しただけだった。その気になればこの何倍も出せるんだから、森を燃やすのも訳ないんだろうな。恐ろしい。

 これは技に名前を付けた方がかっこいいかも。発動するときに技名叫んでアクションも付けよう。魔女っ娘と少年ヒーローもののどっちがいいかな。


「もうちょっと、お肉堪能しとこうかな」


 取れたての焼きたてなんて、もしかするとお貴族様でも簡単には食べらんないかもしれないもんね。




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