初めて読んだなろう系の書籍で、WEB小説の現実を知った話
はじめに断っておくと、これはいわゆる『なろう系』を批判することを趣旨としたものではありません。
ただ、今もどこかで佩いて捨てるほど起きているであろう、WEB小説の現環境が生み出してしまった作者と読者の価値観のズレとも言えるものが、私にはかなりの衝撃でした。
忘れもしない。
数年前、とあるアニメイトにふらりと寄ったときのこと。
店員のオススメ!
面白すぎて何回も読みました!!
…………だいたいこんな感じの紹介カードを信じて、あるWEB小説原作のラノベを購入しました。
いわゆる異世界転移ものでしたね。
当時の私はいわゆるなろう系というものは認知しておらず、またテンプレ作品も知らなかったです。
でもSAOは全巻揃え、Reゼロとか転スラとかは薄っすらと知っていて、まあこれもWEBから書籍化したのなら面白いのだろうと、特に根拠のない信頼があったのです。
購入した書籍の作品名は当然伏せるとして、しかし率直な感想を簡潔に述べるなら──
驚くほどつまらない。
この一言に集約されます。
まったくストーリーに起伏がなく、全然惹き込まれるものがなく、ページを繰る度に困惑に次ぐ困惑。
異世界転移→
魔王倒してけろ→
ステータスオープン→
俺パネエ!
だいたいこんな流れでしたが、これの何が面白いというのか。
初めてラノベを読みきることが出来ず、なぜこんな作品が書籍化されているのが理解に苦しみ抜きました。
一体いくら出版社に金を積んだんだ?
なろうに自作品を投稿していた私は、そんなことを本気で疑い、Amazonで低評価をくらいまくっている事実も相まって益々分からなくなった。
これだったら私の作品の方が何倍も面白い!
そんな憤りもありましたが、評価もブクマも滓みたいなものでしたね。
まあ、この今でも同じ意見ですけど、とにかく憤りと困惑が渦巻いてました。
……というか、タイトルにある通り現実を知らなかった。
面白い=書籍化という極単純な方程式が成立していると、何の疑いもなく信じていたから。
なろう系、という言葉を知ったのはこの時でした。
こんなエッセイ擬きを読んでいる読者の方々には説明は不要だと思いますが、WEB小説とは内容以前に如何にして『認知』されるかの戦いから始まっているのです。
長いタイトル然り。ちょっとした短編かってあらすじも読んでもらう工夫。
テンプレを用いた作品が氾濫しているのも、その流れから来た必然でしょうね。
でもなろう叩きが無くならないのはこういうことだ、とか言いたい訳ではないのです。
しかし書籍化というブランドは、やはり読者にある程度の期待を抱かさせるものなので、これを裏切られるのは読者としては個人的にもかなりのショックでしたね。
でも……まあ、ね?
キャラクター、ストーリー、世界観。
小説を構成する三大要素のどれもがある程度共通している『テンプレ作品』が溢れて、書籍化されたその末に『なろう系』というレッテルを張られるのは、小説界隈にとって果たして良いことなのだろうか。
これも散々言われていることだろうけど、埋もれている面白い作品が光を浴びる仕組みは、やっぱり欲しいな~。
少なくとも、お金を払った本が面白く無さすぎて最後まで読めないなんて悲劇、二度と味わいたくはないし、何より誰にも味わってほしくないしね。
いやホント。此れだけは切実な願いですわ。