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イジメ冤罪

作者: 秋

 私はイジメを行った人間とされました。

 この事は今でも納得出来ていませんし、全く理解できていません。


 もちろん、人の悪口を言ったり、嫌がる事をするのはいけない事です。相手を傷つけるためになんらかの行動を起こすのは論外と言えます。



 やってはいけないと理解しているのに何故、私がイジメを行ったのか……イジメを行ったことにされてしまったのか。



 それは「された側がイジメだと思った」からです。

 そして、先生が認めてしまったからです。

 先生が認めたのだし、被害者は今も苦しんでいるんだから、言い訳せずに反省しろと多くの人が思うでしょう。今でも被害者とされる子やその家族は私達を恨んでいると思います。

 実に迷惑至極。



 さて、反省しろと言われる前に、そこに至る経緯をお話ししようと思います。



 そもそもの事の始まりは、Aちゃんが喧嘩をして、今までいたグループを抜けた事です。喧嘩の理由は同じグループのBちゃんの彼氏に、Aちゃんが手を出したから。

 そんな理由で半ばグループから追い出されるように抜けたAちゃんに対して、私を含めクラスの女子達は腫れ物を触るような感じで接していました。

 Bちゃんはかなり怒っていて、下手に関わって飛び火しても困るし、Aちゃんが他人の彼氏に手を出したのは2回目で、ちょっと常識がない子と言う認識だったからです。



 ある程度時間が経って落ち着いてきた頃、Aちゃんは再びグループに入ろうとしました。

 しかし、人の彼氏に2度も手を出した前科のある彼女は、彼氏がいる子達からしてみれば、関わりたくない人No. 1。Aちゃんはどこのグループにも入れいない状態が続きました。

とはいえ、Bちゃん以外のクラスの女子達は話さなかったわけでも、体育や行事でハブにしたわけでもなく、あくまで仲良しグループとして常に一緒にいるのは遠慮したいという感じでした。


 しかし、どうしてもグループに入りたかったAちゃんは1つのグループに目をつけました。



 私達のグループです。



 当時、私はCちゃんとDちゃんと一緒に行動していました。マンガやゲームが大好きで、3人で絵を描いたり、小説を書いたりしていた、いわゆるオタクグループでした。

 そこに毎日Aちゃんが話しかけてくるようになったのです。

 その時点では、私達はあまり気にせず仲間に入れて話をしていました。Aちゃんがいる間はオタクな話はあまり出来ませんでしたが、学校の話をすれば良かったし、自業自得とはいえAちゃんが孤立気味な事は分かっていたので、皆で気を遣っていたのです。


 しかし、今思えばその気遣いが間違っていたのだと思います。

 最初から周りの子達と同じようにやんわり拒絶すれば良かったんです。他人の彼氏に何度も手を出す人間が、普通の神経をしている訳がありませんから。


 その状態がしばらく続くと、Aちゃんは調子に乗り始めました。本性が出てきたと言っても良いかもしれません。



「ゲームとか好きな奴って、根暗だよね。他の趣味探した方が良くない? 服もダサいし喪女じゃん」


「マンガなんかよりファッション誌の方が絶対いいって。お前らセンス無いんだから」


「ドラマ見ないとか、頭おかしいよ」



 というように、毎日私達を否定するようになったのです。Aちゃんからしてみれば、毎日学校の話ばかり、たまに出てきてもマンガやゲームの話でつまらなかったのだと思います。


 Aちゃんは本はファッション誌と芸能雑誌しか読まないし、大のジャ○ーズファンでドラマ大好きだったのに対し、方やマンガ好きのオタク、ドラマは見ないし(そもそもテレビが家にない子もいた)、ジャ○ーズは顔の区別がつかない、そんな私達とそもそも話が合う訳がなかったのです。



 そこで諦めて他のグループに行けば良かったのに、何を考えたのか私達に自分が好きなものの話をする様に強要し始めたのです。



 朝集まると言ってあったドラマは見てきたのか、見てなければなんで見てこなかったのか詰問し、怒鳴り散らしたり、休日に集まる時は誘ってもいないのに勝手に来て、自分が行きたいところに行くように我儘を言ってきたり、無視して置いていこうとしても勝手について来て文句を言い続ける程でした。



 本屋に行ってラノベを手にとれば、

「うわ、そんなものが好きなの? 気持ち悪い」


 ペットショップで子犬を可愛いと言えば

「お前らみたいなダサい奴らに囲まれたら、子犬がかわいそう」


 二次元創作のイベント会場に入ろうとすれば

「え? そんな所に入るのヤバくない? お前ら犯罪者予備軍じゃん」



 正直、本性が出てきてからAちゃんは近寄りたくもない、見ただけで吐き気がする存在でした。

この状態が続いて、私達は限界でした。



 やめて欲しい、好きなものを否定しないで欲しい、全てをAちゃんに合わせる事は出来ない、気に入らないならほっといて欲しい、散々Aちゃんに言いましたが、聞く耳を持ってもらえませんでした。

 それどころか、「お前らの為に言ってやってるんでしょ」「私が可愛いからって僻んでるの?」と言ってくるのです。



 もう、同じ人間と話しているとは思えませんでした。

 どれだけ言っても、全く改善されず、自分が正しいと言わんばかりで話にならなかったのですから。



 限界を感じた私達は、Aちゃんを相手にしないことにしました。それ以外対処方法がないと思ったからです。



 ここで担任のT先生に言っていれば変わったかもしれません。変わらなかったかもしれません。

 T先生は特定の子を贔屓する事でクラス内では有名な先生でした。

 普段私達や、地味な子、大人しい子が話しかけても、ハイハイと流される事が多いのに対し、クラスでも可愛かったり、ムードメイカーな子が話しかければいつまでも楽しく話しているし、自分から話しかけるので、正直な所あまり信用が出来る担任ではありませんでした。だから言いませんでした。



 しかし、この事で私達はイジメ加害者のレッテルを貼られることとなったのです。



 私達がAちゃんの相手をやめてから数日で、Aちゃんは学校に来なくなりました。

 正直、会わない日が続いてホッとしたのを覚えています。



 しかしAちゃんが学校に来なくなってからしばらく経ったある日、T先生に呼び出されました。


「なんでAのことをいじめたんだ?」



 問われた時意味がわかりませんでした。私は、私達はいじめていません。

 むしろ逆です。私達が嫌がらせをされていました。やめて欲しいと何度言ってもやめてくれませんでした。だから、挨拶や連絡以外は相手をしない事にしたんです。

 なのに、何故、イジメになるのでしょう?


 T先生には説明をしました。


 嫌がる事を言われ続けた事。

 好きな事を否定された事。

 やりたくない事を強要された事。

 やめてと言ってもやめてくれなかった事。



 でも、全く通じませんでした。



「嫌だからって、やり返していい訳がない」

「Aはお前たちともっと仲良くなりたいと思って言っていたのだから、それは理解してやるべきだ」

「一人だけ会話に入れないなんて、相手がどう感じるかぐらい考えられるだろう」

「相手がイジメだと思ったなら、それはイジメなんだ」

「Aが可愛いから僻みもあったんじゃないのか」



 やり返した訳でも、僻んでいた訳でもありません。

 ただ、もう嫌だと意思表示した、それだけでした。

 それにこれがイジメなのだとすれば、私達はAちゃんにいじめられていたと言い切れます。



 なのに通じない。



 Aちゃんは確かに可愛い子でした。読者モデルになれるのではないかと言うぐらい、クラスで一番可愛い子でした。

 そしてそのAちゃんが、不登校になって、可愛い子を贔屓するT先生に訴えた。



 もう、最悪でした。



 結局私達の言い分は考慮されず、一方的にイジメ加害者として反省文と謝罪の手紙を書かされました。



 もう、世の中可愛い者勝ちで、先に言った者勝ちなのだと思います。



 その後、T先生から親に話がいきました。

 私達は親にはAちゃんに何をされていたかを言っていましたし、これはおかしいのではないかと言う事で、3家族で校長先生に訴えました。



 そこから色々な話し合いをして、結論から言うと喧嘩両成敗のような形になりました。

 嫌がる事をしたAも悪かったし、教師に相談する事なく仲間外れにした3人も悪かったよね。

 と言う事になりました。

 そして、T先生は多少注意を受けた程度でした。



 その後はT先生が今後私の担任にならないように両親が申し入れた為、担任になる事はありませんでした。


 Cちゃんは引越しをしてしまい、Dちゃんはあまり学校に来なくなくなりました。話はするものの、あの時のことを思い出して辛いということで、疎遠になっていきました。


 Aは進級すると学校に来るようになり、あんな事をしたのに、楽しそうに毎日登校していました。

 そしてAも、Aの親も私を見るたびに睨んで、私達がイジメを行っていたと、言いふらしていました。


 幸いだったのは同じクラスだった子達が、本当の事を言ってAの話を否定してくれていた事です。なので悪評が広まる事なく、なんとか卒業まで登校することが出来ました。


 AとT先生のことが無ければ、本当にいい子ばかりで、クラスメイトに恵まれていたと思います。今でも感謝しています。こんなことが無ければ、一番良い学年であったと胸を張って言えたでしょう。



 でも、結果として最低な一年でした。イジメ加害者とされた事は今でも許せないです。



 イジメられた事を言い出しやすくなるのは良いことです。

 だからと言って、言い出した人の話を鵜呑みにするのは間違っています。

 どうしてそうなったのか、言った人、やったとされる人、周りの人達の話を聞いてから判断すべきです。

 そうしないとイジメを行なっていない人まで糾弾されてしまいます。それこそイジメなのでは無いでしょうか?



 だから、私は


 好きなものを否定されたこと、忘れません。

 気持ち悪いと言われたこと、忘れません。

 机を何度も蹴られたこと、忘れません。

 やめてと言ってもやめてくれなかったこと、忘れません。

 お前が悪いと決めつけられたこと、忘れません。

 イジメを決めつけられたこと、忘れません。

 謝罪を強要されたこと、忘れません。

 友達との仲を引き裂かれたこと、忘れません。



 全部、忘れないし、今でも、恨んでいます。

 私をいじめたのはAとTです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 世の中には度し難い愚か者がいくらでもいるんですね。 許せませんね!
[良い点] 詳細に経緯と心の流れが書かれていて良い作品だった。 女の子だなーって思った。
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