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お題シリーズ

水と油の勝負

作者: リィズ・ブランディシュカ



「水」

 私は彼とだけは交わらない。

 あんなテカテカ、ネトネトした見た目の彼のどこが良いのだろう。


 私が彼に振り向く事など一生ないだろう。


 たとえこの世界に、私と彼しか残されていなかったとしても。

 彼だけは選ばない。





「油」

 何であんな奴と一緒にならなければならないんだ。

 俺様のこの高貴な体が汚れてしまう。

 近づいただけで拒絶反応が起きてしまうよ。


 俺様とあいつがまじわる運命など二度とこないだろう。

 天変地異が起きたって、ありえるものか。

 あんな奴、路傍の石ころを相手にするので十分だ。





「水」

 ああ、本当に近づくだけで嫌になるわ。一緒にいたら同類だって思われちゃうじゃないの。

 火にあぶられて消滅してしまえばいいのに。





「油」

 真夏の太陽の熱光線にやられて蒸発してしまえば良い。俺様は断じて、あんなどこの馬の骨ともいえない人間受け入れないからな。





 まぜまぜ





「水」

 きゃあああっ! 混ぜないで! いくら混ぜたって私達は交わらないのよ。

 一緒にならないのよ。

 どんなにくっつけたって、くっつくはずないじゃない。

 私とあいつは、氷と炎。夏と冬のように相いれない存在なのよ。





「油」

 うわあああっ! 貴様ぁぁぁぁっ! 無理やり人をくっつけようとするなど言語道断。なんたる非情!

 人の対人関係に、恋愛事情にあれこれ口をはさむなと、親から教わらなかったのか!

 やめろ! そんなに勢いよく混ぜたって、俺達はくっつかないんだ。

 そういう生物なんだ!





「水」

 ああ、分裂しすぎて、意識が遠くなってきたわ。

 だって私達は水と油。

 永遠にくっつかない運命なんだもの。

 どれが私で、どれが私じゃなかったのかしら。





「油」

 おいっ、しっかりしろ! こんなところでやられるような女じゃないだろ!

 威勢のいいお前はどこに行ったんだ! どんなに小さくなったって、この身を蹂躙されたって、俺達の魂はけがされない。

 俺達は俺達のままだ。

 自分は自分であるという事を忘れるな!





「水」

 そんな事、言ったって。

 ああっ、もうだめ。

 無数に分かれすぎて、形をたもてなくなってしまったわ。

 最後だから言うな。

 私、あんたの事以外に嫌いじゃなか。





「油」

 みずぅぅぅぅぅぅっ!!

 うぉぉぉぉぉぉっ!

 俺達が一体何をしたっていうのだ。

 なぜこんな目に合わなければならない!


 俺達は互いが互いの好敵手。

 それで満足していたんだ。

 燃え尽きるための、恋愛なんていらなかったんだ。





「???」

 どうかね?

 界面活性剤の効果は出たかね。

 これで十分なデータがとれれば、新たな商品の開発に役立つだろう。


 うむ、引き続き他のデータも頼むよ。





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