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光の卵

 蹄の音が再び近づく。走りながら黒装束達が振り回す刀に触れると、周囲の建物が音をたてて崩壊していく。彼らの後には廃墟しか残らない。身構えたラムダにしかし、方策は無かった。緊張が走る中、シグマのカードから突然信号音が流れた。

「なんだ!?」

 すかさずシグマが怒鳴り返す。相手はセントラルだった。

「データの解析完了。今、抗体ユニットを創出する!時間稼ぎしてくれ」

「了解。ラムダ、行けるか?」

「どうするんだよ!めちゃくちゃ言うなよ!」

「一回だけでいい」

 ラムダを見ずにシグマは言った。その声は随分と落ち着いている。そのシグマの目線の先の空間が僅かに歪み始めている。

「一回だけだぞ!」

 そういうと、ラムダは高く跳び上がった。シグマは敵との間に新たな隔壁を作り始めている。今度の隔壁は横に長く伸ばしているのを、ラムダは見逃さなかった。隔壁の出現がとてものろく感じられる。間髪を入れずに黒馬の黒装束達が雪崩れ込んで来た。その俊敏な動きが隔壁に当たって、大きく鈍った。完全な形では無かったが、隔壁が黒馬を捉え足止めをした格好になっている。

 空中のラムダはビルの壁を蹴ると更に高く跳び上がった。そのまま黒装束達の背後へ回り、手にしたカードを投げつける。その狙いは外さず、それぞれの首筋を深く疵付けた。馬が棹立ちになり派手な音を立てて、騎手の一人が落馬する。

「やった!」

 しかし、もう一人の手にした鎖鎌がラムダの足に絡み付き、ラムダは地上に叩きつけられた。そのままラムダは黒馬に引きずられていく。必死に抵抗するが、足首の鎖は外れない。黒馬は隔壁を物ともせずに、馬首を巡らし走り始めた。

「ラムダ!」

 慌てて、後を追おうとしたシグマの前に落馬したはずのもう一人が立ち塞がった。シグマはいつの間にか現れた、背後の光る空間を守るように剣を構えた。光の空間は徐々に明確な卵状の形状を維持している。それは人ほどの大きさだった。

 霞む目でラムダは見た。シグマに相対した黒装束の目がにやりと笑いの形に歪むとその刀をゆっくりと振り下ろすのを。

「シグマ!避けろ!」

 一刀目を正面で受けたシグマだったが、次の薙ぎ払われた刀は間に合わずその脇腹が深く傷付けられた。思わず膝をついたシグマに黒装束が大きく振り被ったその時、シグマの背後の卵から強い光が溢れ出した。

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