ReStart
周囲は真闇に包まれていた。何も見えず、何も聞こえない。ややあって、微かな起動音と共に輝線がキラリと一筋走る。
その闇の中で、ラムダは一人目を覚ました。目の届く限り闇しか無い。じっとうずくまっていると、ぽつり、ぽつりと輝線が走る様が見て取れた。
(誰もいない……)
響き渡る事を恐れて、ラムダは心の中で一人呟いた。アドミの望みは……?
やがて、遠くに一つ光が灯る。徐々にその光源は強さを増して行った。その一筋の光の線上に廃墟が浮かび上がる。しかし、光源そのものは眩しすぎて、見定める事ができなかった。何も無い中で現れた光にラムダは心惹かれて、その根源へと向かっていった。自然と足が早足になっていた。
そのうち、その光源の左右に淡く新しい光が現れる。その光の周囲に浮かび上がる物を見てラムダは悟った。それは倒れ臥すアドミとニムダだった。そうだ!都市が再起動を行われているのだった。
左右の光が強まるに釣られるように、アドミとニムダが身じろぎをした。ちょうど見開いたニムダとラムダの視線が合う。咄嗟にニムダに駆け寄ると、ラムダは剣を振りかざした。
紙一重のところで、ニムダはラムダの剣戟を転がり避けた。慌ててラムダが後を追う。まだ、ニムダが立ち上がっていない事が幸いして、すぐに追いついた。再び剣を大きく振り上げたところで、ラムダの腕がはたと止まる。ニムダを刺したらアドミはどうなる?
その時、ラムダの躊躇を感じ取ったのかアドミの声が響いた。
「ラムダ!終わらせて!」
「離せ!」
見れば、アドミはニムダの足に取り付いていた。ニムダは足を降って、アドミを引き剥がそうとしている。
「でも……」
「早く!もう、二度目は無いの。お願い!」
今にも振り払われそうなアドミは、しかし必死にニムダに取りすがっている。
「ラムダ!」
そのアドミの声に逆らえず、ラムダは一刀をニムダに浴びせかけた。剣先が光の輝線に彩られ、刃先からニムダの情報が流れ込んでくる。
「うぁぁぁぁあぁぁぁ」
堪えきれずに嗚咽するラムダの足元でニムダが、そしてアドミが徐々に塵と消え、周囲が更に強い光に包まれてラムダは次第に気が遠くなっていった。