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しあわせバトン

しあわせなら、手をつなごう

作者: 三稜 諒

 今日は二ヶ月会わなかった彼との久々のデート。の、はずだったけど。

「ご、ごめんな、椿。やっぱりダメんなったわ」

 大変申し訳なさそうに──でも、これで連続三回目になるキャンセルの電話。まぁ仕事なのは分かってるし、出張中だし、しょうがないか。

「もういいよ、その代わり……次のデートではおいしいご飯、ご馳走してね?」

 がっかりしてるのは本当なので、ちょっとくらい美味しいもの食べさせてもらってもバチはあたるまい。

「ほんとごめん。ご飯な、まかせとけ!ついでにお前のすきなボヌールのケーキもつけるわ!」

 直孝はそう言って電話を切った。

 ──さて。今日の予定が丸々つぶれちゃったわけだけども。

 もともと約束してた時間は十八時。

 そしてキャンセルの電話があった今は十五時。

 直孝が出張先から戻ってきたらそのまま合流する気だったから、その前にちょっと秋物の服でもと思ってすでに街に出てきていた。

 でも、もう服は買っちゃったし……。

 お茶でもして帰る?

 あー、そういえば直孝くんの誕生日が来月でないかい?

 ついでだしブラブラと探してみようかと思い立ち、椿は今来た方向と逆に歩き始めた。



 今何か欲しがってたっけ?

 うーん、なにせ二ヶ月も会ってないからな。リサーチ出来てないんだよねぇ。

 バッグ……は、すでにあげたし。

 お財布も別に傷んでないし、靴も服も試着したほうがいいしな。時計もキーケースも直孝くん持たないし、あー困ったな。

 普通みんな何をプレゼントするんだろう?毎回ネクタイもなぁ。

 そういう意味では女の子向けのプレゼントのほうが選びやすいのかも。困ったときはアクセサリーあげれば大体は喜ばれるし。

 アクセかぁ……直孝くんブレスくらいつけないかな?

 ──つけたのなんか見たことないな。ネックレスもつけてないもんなぁ。基本的に身に着けるもの苦手なのかしら?


 まてまて。男の子といえば電化製品?

 うーん、でもそれこそ好みがあるでしょう。外しちゃったら嫌だし、やっぱりパス。

 まいった。何も浮かばない。

 ショッピングモールを一巡したところで諦めかけていた椿はふとおもちゃ売り場に目を向けた。

 ──何も浮かばないなら、いっそおもちゃをあげようか?

 じゃあ……プラモ?それともラジコン?

 やってるイメージがまったく思い浮かばない。──だめか。

 サプライズをやめて聞けばいいだけなんだけど、それもなんか負けた気がするじゃない?

 


 あーもう!だめだ。何にもいい案が浮かばない。

 うん、よし。出直そう。

 そう諦めてショップから出ようとした時、ふとレジ横のショーケースが目に入った。

 ん?これとかいいかも。

「これ、ください。プレゼント包装をお願いします」

 あれこれ悩んだ割にはあっさり即決。





 さて。プレゼントは買ったし、他に買いたいものもないし……うーん?お茶して帰ろうか?

 あ、今映画観たいのあったんだっけ。

 じゃあ映画でも観て帰ろうかな。今からだと次は十七時の回かな。

 その前にお茶でもするか。

 カフェの席に案内され、メニューを見ると何やら見慣れない表記ばかり。普通のでいいんだけどな。

 メニューと格闘する気にもなれず、すぐに閉じる。

 注文を聞きに来た店員さんにアッサムティを頼んで一息ついた。

 あー、映画ね、映画。

 座っちゃうとどうでもよくなっちゃったかも。

 バッグに入れていた文庫本を出し、読み始める。五分ほどして注文したアッサムティが届いた。んん、ちょっと遅かったな。

 文庫本を続けて読みながら、アッサムティを飲み干すまでゆっくり三十分。

 さて、そろそろ映画にでも向かいますか。

 徒歩二十分の場所にある映画館へ向かう。あー、割と混んでる?でもまぁ、急ぐでもないし……待ちますか。

 十分ほど待って目当てのチケットを購入し、指定の席へ向かう。




 映画も終わり、家へ帰るとマンションの前に不審な男が。

 え、変質者?ちょっとコンビニに寄って帰ろうかな。と、来た道を戻ろうとしたところ、後ろから「え?ちょう待ってや!そんなに怒っとったん?」と声がする。

 はて。何やら直孝の声に聞こえるけども、ヤツは出張から戻れなくなったはず。

 恐る恐る振り向くと、やっぱり直孝だった。

「帰ってくるなら、連絡くらいしてよ……」

 脱力して文句を言うと、直孝は

「したって、電話!つながらへんかってん!」

「えぇ?そんな訳──あ」

 そういえば、映画館に入って電源落としたんだっけ?

 ほれみろと勝ち誇ったようなドヤ顔をする直孝をその場に放置し、部屋へと向かう。

「え、ちょっと待って!椿さん!」慌てて直孝も追ってきた。


 リビングに入ると、直孝はいそいそとお土産をテーブルに広げ始めた。

 右から順に京都の西陣織のブックカバーと扇子、軽井沢のりんごジャム、名古屋のきしめん。

 そして今日の神戸の──。

「観音屋のチーズケーキ!」

 元より怒っていたわけでもなんでもなかったので、あっさりと上機嫌になって紅茶を入れにキッチンへ向かう。

 紅茶を入れている途中でチーズケーキのカップを外し、オーブントースターで少々焼く。

 するとチーズが溶けてケーキがほろっとくずれるのだ。

 チーズとバターのふんわり甘い香りが漂ってきたところでトースターからチーズケーキを取り出し、紅茶と一緒にお盆に載せてリビングへ戻る。

「──あ」

 またやられた。

 ニヤリと笑って「本日のメイン」と、直孝が指差すのは恐らく老祥記の肉まん。

 だから、紅茶と合わないでしょ!

 お茶を入れ直しにキッチンへ……行けるか!

「あたしは先にチーズケーキ食べるんだからねっ?!」

 この素敵な香りがするチーズケーキは温かいうちに食べなくちゃ、チーズが硬くなっちゃう。

 ふわっと甘いバターの香りを口に頬張り、うっとりしていると直孝は三口で完食していた。──早。

 もっと味わって食べないと、観音屋のチーズケーキに失礼でしょ!

 不穏な空気を感じたか、直孝は肉まんを持ってそそくさとキッチンへ向かう。

 そして、戻ってきたときには温めた肉まんとジャスミンティがお盆に載せられていた。

 うんうん、ありがとう。

 そして肉まんを美味しくいただいてから、まったりしていたら突然思い出した。

 そうそう。今日は貰ってばっかりはいられないんだった。


「直孝、ちょっと早いけど、これ──」

「へ?」

 きょとんとする直孝。

 んん、もしや忘れてる?

「誕生日プレゼント」

 今日選んだばかりのプレゼントを渡す。

「あ……開けてえぇ?」

 と言いながら、ゴソゴソと袋をあさり始めた。

 袋に入っているのはシャツと小箱。

 小箱を開けて目を見開いた。

「これ──カフス?」

 そう。カフス。持ってないでしょ?

 でもって、カフスボタン付けられるようなシャツも持ってなかったはず。なのでセットでプレゼント。

「ありがとな!椿はオシャレやなぁ」

 と笑いながらしげしげとカフスを見ていた。

 うんうん、サプライズ成功、かな。


 でもな、椿。おれももう一個あるねや。

 ──と、ぽん、と直孝があたしの手に小箱を置いた。

 ふたを開けると、中に鎮座しているのはアクアマリンのピアス。

「椿に似合いそうだったから」

 しれっとそんなことを言いながら自分はいそいそとシャツを広げていた。




 あぁもう!サプライズは直孝には絶対敵わない。

方言がなんかおかしいのは重々承知です。。。

関西地方にお住いのかた、ごめんなさい。正しい発音教えていただけたら修正します……。

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