九十話 京之助対彩音
司と梨李花が京之助の分身と戦闘を繰り広げていた頃、彩音も分身の一体と対峙していた。
「ヒャハハハハハ!楽しいよなぁ、命を懸けた戦いってのはよおっ!」
弾けたような性格の京之助が腕に装着された爪を使い彩音を攻め立てる。
「何か面倒な人」
京之助の攻撃を避けつつ彩音はうっとおしさを感じていた。
「おいおい、いいのかよ。俺ばっか遊んでてさぁ、そろそろてめえも反撃しないとやられちまうぜ」
京之助の挑発、彩音も正直いい加減爪を避けるのに飽きてきたところだ。
彩音は大きく飛び退き、魔導システムの端末を取り出す。番号を入力し音声入力をする。
「魔導演奏!」
ショートパンツやノースリーブのロングコートの出で立ちの上にアーマーが装着されていく。肩や手脚のパーツは先端に屈折した鋭利なパーツがつき死神のイメージをさらに加速させる。背中から生えた羽根コウモリではなくカラスのような羽根が連なった翼がさらに闇の暗さを付け加える。それでいてへそや肩と二の腕の間、肘や膝付近、ショートパンツと太ももの間からアーマーから所々素肌が露出し独特の色香を醸し出す。
「へえ、姿を変えたってわけか。見せてみろよ、その新しい力を!」
京之助が姿を変わった彩音を見るとさらに意気揚々と攻撃をしかける。爪を直接当てるのではなく魔力を纏わせることでソニックブームを飛ばす。爪の本数、三つ分の衝撃波が彩音を襲う。
「ハッ」
彩音は腰に吊るされたチェーンを振るいソニックブームを弾く。ブン、ブンと振り回し先端についたペンデュラムを京之助に投げつける。
「へっ、当たるかよっ」
京之助はバックステップでかわそうする。しかしバックステップした先でペンデュラムが頬をかすめる。頬から出た血指でなぞりそれを舐める。
「やるじゃねえか、それでこそ遊びがいがあるぜ!」
攻撃を受け興奮した京之助は跳躍し上空から攻撃を仕掛ける。
上空の京之助目掛けチェーンを飛ばす彩音。チェーンが足に絡まり拘束する。そのまま京之助を横に振り回し地面にぶつける。
「流石は黒羽紗栄子の娘だけあるな」
「どういうこと?」
突如彩音の母親の名前が出る。彩音の父を殺し彩音自身をも狙った彩音の母親が今頃どうしたのか。
「てめえの母親は旦那や娘を手にかけてまで日常を手放そうとした。死神と呼ばれるてめえだって似たようなもんだろ。戦いたくて殺したくて壊したくてウズウズしてる、そういうやつだろてめえは」
人の命を、しかも家族までも手にかけようとしたという非倫理的行いをした母親と彩音が似てるというのだ。そして彩音も殺人や破壊を望む心があるのではと迫る。
「そんな、わたしは…………」
京之助の言葉にひどく動揺する彩音。その彩音に京之助の爪が接近する。反応が遅れ、チェーンを束ねて防御することになる。
「ぐっ、うっ」
「情けねえなぁ、それでも黒羽紗栄子の娘かよ」
ギッ、ガッとチェーンの間から爪を押しつつさらに彩音を挑発する京之助。
「違う」
彩音の口から言葉が漏れる。
「ああん?」
「違う違う違う!わたしも、母さんもあなたの思うような人じゃない!」
蹴りを入れ京之助を吹っ飛ばす。京之助は立ち上がり体勢を立て直そうとするがそれがもう命取りだった。チェーンが身体に巻き付き彼を拘束したのだ。
「消えろ」
「ぐあぁぁぁぁぁ!」
自分と母を侮辱した人間を許さない、その怒りが彩音を本気にさせた。チェーンを伝い魔法を発生させる。京之助は苦しみに悶え叫ぶ。暫くすると肉体が消失、影のように消え去る。そこにはまるで何もなかったように虚空だけがあった。
「ハァ、ハァ………」
魔法を使用した反動で息を切らす彩音。彼女の中には京之助の言葉が呪いのように暫く頭に残っていた。
今回の京之助の分身は狂人ぽいイメージでやってみました、てかもう別人じゃね?てくらい喋ってますが。ブックマークや評価お願いします




