七十九話 魔法使いが役立たずてどういうことですか
もはやタイトルがネタバレ、魔法使いは使えない
司の家で彼が以前いた自宅から通っていた小学校の書類を見つけた二人はバスを乗り継ぎその小学校の前に来ていた。
「で、ここからどうする?学校の中に入る?」
「いや、そんなまどろっこしいことはしない。来い、ヴァーミリオンド………」
さなえがMギアをかざしヴァミラを出そうとする豊太郎を止める。
「なんだよ、邪魔すんなよ」
「ここで召喚はよくない、目立ち過ぎる」
「じゃあ小さい方で」
「それも目立つ」
「あー………。じゃあガルムの方はどうよ?犬てことにすれば大丈夫だろ、ほんとは狼だけど」
「その手があった」
「おいで、ガルム」
さなえがMギアをかざす。が、ガルムは出なかった。
「ガルム?」
「私は召喚には応じない」
「どうして?」
「わたしは狼型のモンスターだ、断じて犬などという人間の家畜ではない。よって、わたしを犬扱いするならお前の命令聞かない」
「犬扱いしたのは豊太郎でわたしじゃない」
「いやいや、お前もその手があったって乗ってたじゃねえか!なんで俺だけ………むぐぐぐ」
抗議する豊太郎の口を塞ぐさなえ。
「とにかく、この間の黒いライオンを探すのにあなたの力が必要。お願い、力を貸して」
ガルムはしばし間を置くがなんとか承諾する。
「………………分かった」
召喚されるガルム
「ガルム、昨日のライオンの臭いを探って」
「了解した」
鼻を使いレオパルドの臭いを探る。
★ ★ ★ ★ ★ ★
場所を戻し司のいる公園では黒い恐竜が暴れ回り子供達が逃げまどっていた。そんな中、男の子に恐竜の巨大な顎が迫る。
「危ない!」
司が勢いよく飛び出し男の子を抱き上げる。地面を滑るようにしたがなんとか難は逃れた。
「大丈夫?」
「うん……」
「ここは危ないから早く行って」
「分かった」
司の元を離れ走る男の子。
「グルルル………」
恐竜が獲物を失ったことに怒りを覚えたのか司を睨み唸る。
「やば、てかなんでこいつがいるって分かったんだろう」
冷や汗を司の頬を伝う。先ほどは偶然よ蹴られたが今度こそ終わりか。
「おまけにアマツカがいた頃みたいな感覚出てるし、どうなってるのさ」
恐竜の顔が徐々に迫って来るが不思議と恐怖は感じない。むしろこの恐竜が現れてから感じる謎の感覚の方が気になって仕方ない。
「伏せろ、司!」
恐竜の口が司を捕らえようとした時、新たな乱入者が現れた。司は言われるまましゃがむと黒いライオンが恐竜を吹き飛ばす。
「レオパルド?」
司が振り返る。
「悠!」
「おい、何て無茶をするんだ。生身の人間のくせに、下手したら死ぬぞ」
「ホントだよ、心配したあたし達の身にもなりやがれ」
「沙紀絵さん、みんな………」
そこには悠だけではなく、沙紀絵、美海、彩音もいた。
「あれ、二人足んなくないすか?」
李梨花と美羽羅はどこに行ったのだろうか。
「お二人は魔獣が出たのでそちらを任せました、わたし達はこっちです」
「あ、そう」
「ま、悠くん一人でどうにか出来るとも限らないしね」
「心外だな、俺達が頼りないとでも言うのか?」
「一応てめえは司の知り合いだがあたしらはてめえを信用してねえ。いつ裏切るか分かんねえしな」
「ふん、まあいい。今はあの化物を倒すぞ」
「ああ」
「はい!」
「うん!」
沙紀絵達魔法使いが恐竜に挑もうとしたその時、恐竜の口から火炎弾が飛ぶ。
「うわー!」
吹っ飛ぶ魔法使い達。
「くっ」
腕で防御の構えを取る悠、しかし攻撃は当たらない。
魔力を持つからか奇抜な格好をしてるからか悠が近くにいたのにも関わらずなぜか魔法使いのみが攻撃を食らう。
「マスター!」
レオパルドが悠の身を案じる。
「いや、俺はいいが…………」
後ろを見ると魔法使いの変身が解けボロボロな状態で地面にひれ伏している沙紀絵達がいた。
「なにしてんのさ!怪物退治に来たのに倒す前にやられるとか!てか彩音ちゃんと沙紀絵さんに関してはまだ魔導奏者になってないよ!美海ちゃんもまともな出番ないし!」
司が全力で突っ込む。
「なんもいえねー」
「それは水泳で全力で泳いだ人の台詞だよ!君らまともに動いてすらないよ!」
「それこそなんもいえねー」
「殴っていいすか?」
「やめろよ、怪我人だぞあたしー」
司はめったにないであろうの量のため息をつき握りしめた拳を収める。なんだろう、肉体労働を長時間したわけじゃないのにどっと疲れた気がする。
「悠………」
もう頼れるのは彼しかいない、司は悠の方に向き直る。
「司、任せろ」
悠は無言で司に向け親指を立てる。
「悠!」
その頼もしさで言ったら天にも登るものだろう、いつもいる自分の仲間は役立たずの屍状態、そして同時に現れた古い知り合い、もう頼れるのは彼しかいない!
「レオパルド、そいつを始末しろ!」
「イエス、マスター!」
悠の命令でレオパルドが動く。タテガミからバルカンを発射しつつ恐竜に挑みかかる。レオパルドは恐竜の巨大な頭ではじかれながらもかかんに食らいつく。
「レオパルド、一旦下がれ!」
「イエス、マスター」
「意外と面倒だな。レオパルド、レオパルドガンナーだ!」
「レオパルドガンナー!」
たてがみ状のパーツがスライドし内部の銀色の金属パーツが剥き出しになると口からエネルギー弾を発射する。銀色のパーツは放熱版の役割をしエネルギー使用によりレオパルドの内部に熱が籠り過ぎるのを防止するのだ。
技が直撃し恐竜が怯む。
「やった!」
喜ぶ司。
「いや、まだだ」
煙の中から恐竜が現れる、ダメージは負っているがまだ充分動けるという感じだ。
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