六十八話 沙紀絵を女扱いしてはいけない
新たなモンスター使い、さなえ誕生と思いきやさなえと司の揉め事が起きる話
四人が争ってる間にも光はさなえの目の前に移動していた。光はさなえを包み込み拘束していた糸を消失させる。眩しさに目を瞑り短い悲鳴を上げる周囲。豊太郎達は光の中にあるものを見つける。
「あっ、あれって!」
「ええ、間違いないわ」
「俺と同じ、ヴァミラを、いや、モンスターを操るデバイス!さなえ、そいつを取れ!」
「わ、分かった」
デバイスを取るさなえ。その時、一瞬だけそばにいる狼と繋がった気がした。
「ガルム……?」
頭の中にそう流れた。恐らく狼の名前だろう。さなえは夢中でデバイスをかざす。
「ガルム、召喚」
声と共にガルムの身体が光に包まれる。毛皮の部分が硬い材質に変わり四肢にブレードがつき顔も所々鋭い角が生え全体的に鋭利に変わる。
「すげえ、変わったぞ」
「かっこいー」
「進化、した?」
「こいつらは一体………」
「ふん、姿が変わったところで!」
「グオォォォ!」
ガルムが吠え沙紀絵とアラクネの間に切り込む。ブレードがアラクネが沙紀絵を縛る糸を切断し解放する。
「ひゃっ」
ゴロゴロと転がりさなえのところに落ちてゆく。
「大丈夫、沙紀絵?」
「う、うん。なんとか」
沙紀絵はさなえに心配をかけまいとすることよりさっきの気娘のような悲鳴を聞かれていないかと不安になってしまう。
「ここはわたしに任せて、ガルム!」
さなえの命令でガルムが切り込む。
「沙紀絵さんて、たまに可愛いですよね」
沙紀絵の様子を見ていた司が言う。
「ああん?」
すると沙紀絵が反応し司の首元まで一気に跳躍する。
「え、沙紀絵さん?」
「わーお」
驚いて戸惑う司と声を上げる李梨花。
「グエッ!ちょ、沙紀絵さん、苦しい苦しい、首閉まるって!」
司の首に沙紀絵の足が絡まり息が詰まりそうになる。それ以前に二人揃って下に落ちかねない。下手したらゴロゴロと山の真下まで真っ逆さまだ。
「るせー!人を女みたいに扱いやがって。あたしは女じゃねぇ!」
「いや女じゃん」
「そうだけどだからって気安く女扱いすんじゃねえよ!」
「ええ………」
「いやてか沙紀絵、司から降りなさいよ。転んでも知らないわよ」
李梨花が横から注意する。
「大丈夫ですよ李梨花さん、今どうにか安定させてるんで。よっ、はっ、とっ」
「お、おい。足掴むなって」
司は器用に沙紀絵の脚を掴みよろめきながらも山の坂にしっかりと踏ん張ることに成功する。
「おお、器用ねぇあんた」
李梨花が関心して拍手する。
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