六十六話 予知夢かニアミスか②
山の上方から糸が飛び豊太郎達を拘束する。
「ホータロー!」
ヴァミラの叫びが空しく響く。さらにヴァミラと狼にも糸が飛ぶ、狼は存在に気づき避けるがヴァミラは手脚を四方から縛られてしまう。
「ヴァミラ!そっちは無事か!」
「身体が動かない」
「なんだよこれ、魔法使いの力でも千切れねえぞ」
「グルゥゥアッ」
ヴァミラは糸を引き寄せモンスター本体を引っ張り出すとそこに爪を突き立てる。
「グオオオッ」
一体倒したのも束の間、茶色い体液のようなものが飛んでくる。爆弾になっているのかヴァミラに触れると爆発しダメージを与える。狼が動き体液を撃っているモンスターを倒しその数を減らしていく。ヴァミラも負けてはいない、腕や足、尻尾を使いモンスターを倒していく。
ヴァミラがギリギリ視認出来る位置に紫の腕のようなものが現れる。
「あぶない!」
ヴァミラが叫び狼の前に出る。紫の腕から蜘蛛のモンスターの体液が飛びヴァミラに連続で浴びせられる。
「グァァァァァ」
先ほどまでの比ではない、ヴァミラは悲鳴と共にズウゥンという音を立てその巨体を倒してしまう。
「うーん」
光に包まれ小型の形態になるヴァミラ。
「ヴァミラ、しっかりしろ!ヴァミラ!くそ、どうなってるんだ」
豊太郎が悔しさに歯ぎしりする。
「あらあら相変わらず酷いことするわねぇ。わたしの子供達がまた減っちゃったじゃない。あら、さっきの狼ボーイだけかと思ったら増えてるじゃない。あなた達何者?」
上方からヴァミラを撃った腕の主が現れる。その姿は下半身が蜘蛛、上半身が人型という奇妙な出で立ちでいた。肌は人間と違い紫の硬い素材で出来ているが腰がくびれ胴体部分に膨らみが二つあることから女性型と見て取れる。
「蜘蛛軍団の、親玉?」
沙紀絵がつぶやく。
「親玉というのは違うわねぇ。あたしのことはぁ、女王様とお呼びなさぁい、アラクネ女王様でもいいわよぉ」
「キモッ。なにあいつ、喋り方キモッ」
豊太郎が蜘蛛女、アラクネのねっとりとした独特の喋り方に辟易してしまう。
「あらぁ?あなた、あたしの喋り方に文句があるわけぇ?」
アラクネが先ほどヴァミラを腕を豊太郎に向ける。ヴァミラこそ死んではいないが人間の豊太郎が受けたらその惨事は測りしれない。
「ホータローに手を出すな!」
ヴァミラが叫ぶ。
「あなたは黙ってなさぁい、あなたさっきあたしに撃たれて負けたじゃなぁい?その小さい姿で戦うなんて無理無理」
「ぐ……」
「待て、そいつらは関係ない、勝手についてきただけだ。狙うなら私を狙え」
狼も豊太郎を庇う。
「そういうわけにはいかないわぁ、だってその子はあたしを馬鹿にしてきたんだもん。それなのに黙ってるわけにはいかないでしょう?」
「なら力づくで止めるだけだ」
「あら、あなたにやれるかしらぁん」
アラクネと狼の間に見えない火花が飛び交う。
「あれ、そろそろあたし動かないとやばくね?」
沙紀絵はいよいよ持って不安になりなんとか手を動かし自分を縛る糸に触れる。
─────普通に火出したら山が燃えちまうけどちょっと火出すくらいなら大丈夫だよな。
沙紀絵は指から火を出し糸を燃やしていく。
「よっと」
糸が切れ始めると立ち上がり腕に力を込め糸を千切った。糸についた火を足で踏み消すのを忘れない。
「あなた、あたしの子供達の糸から脱出するなんてやるじゃなぁい。ただの人間じゃないわねぇ」
「あたしか?あたしはヤクザ花村組頭領が孫娘にして炎の魔法使い、花村沙紀絵様だ!覚えとけ!」
沙紀絵がアラクネに指を向け見栄を切る。
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