六十五話 予知夢かニアミスか①
いよいよ蜘蛛の軍勢との戦いスタート
豊太郎達三人と二匹がたどり着くとそこにはとんでもない光景が広がっていた。何体もの巨大な蜘蛛が蠢き、木々には山登りに来たのか糸で老人達が拘束されている。若者や家族連れがいないのは平日だからだろう。
「なんだよこれ、どうなってんだよ!」
豊太郎が憤る。
「恐らく、人間達を捕獲して自分達の栄養分として食らう気だろう」
狼の解説。
「やらせるかよ、ヴァミラ!」
「おお!」
豊太郎の命令と共にヴァミラが巨大化し本来の姿になる。火を吹くヴァミラ、しかしすぐさま沙紀絵に止められる。
「待て待て、ここで火なんか出したら山ごと燃えるぞ!火はやめとけって!」
「わ、わかった」
火を消失させ爪を使い蜘蛛型モンスターに襲いかかるヴァミラ。狼もそれに続く。
「さなえ?」
沙紀絵が様子を伺うとさなえは顔を動かさず固まった表情でいた。
「沙紀絵?」
「大丈夫かよ、さっきからボーッとして」
「だい、じょうぶ。やれる」
「そうか、じゃああいつらに捕まったやつを助けに行くぞ。ヴァミラとあの狼が戦ってる今がチャンスだからな」
「わかった」
「豊太郎も行くぞ」
「ああ」
老人達の元に近づく豊太郎達。それぞれ各所に
「もう大丈夫だぜ、あたし達が助けるからな」
「あらあら、可愛いお嬢さん。でも駄目よ、ここにいては危ないから」
老婦人が自分どころか沙紀絵の心配をする。
「それも大丈夫、今蜘蛛野郎をやっつけてるやつがいるからな。婆さん達は安心していいぜ」
「それは心強いわねぇ」
沙紀絵は婦人を拘束してる糸を取るが糸の本数が多く切りがない。
「あーもうっ、キリがねえっ。こうなったら」
スカートのポケットから携帯のようなものを出す沙紀絵。だがそれは携帯ではない、特定のボタンを押すことで人為的に魔法使いの力を得られるデバイスになっているのだ。
「魔法演奏!」
ボタンを押し音声入力をすることで赤いゴスロリ服へと変わる沙紀絵。
「あらまあ可愛いお洋服だこと」
「すぐに出してやるから安心しな」
沙紀絵は婦人から腕が届く距離まで下がり糸に手刀を食らわす。すると綺麗に切断され糸が落下する。
「ありがとう可愛いお嬢ちゃん。あ、お礼をしないとね」
「そういうのいいって、早く下降りな。あんま急ぐと危ないからゆっくりな」
「はいはい、今行きますよー。あ、これ飴ちゃん、助けてくれたお礼よ」
婦人がバッグからキャンディを取り出し沙紀絵に渡す。
「だからいいってそういうのー」
「今日はありがとねー」
沙紀絵の言葉は無視し下山する婦人。
「なんだったんだあの婆さん」
続けて他の老人達も解放していく沙紀絵。
「すげえなあんた流石魔法使いだな」
「本物の魔法使いみたい」
豊太郎とさなえが沙紀絵を褒める。
「みたいじゃなくて、本物の魔法使いだぞあたしは」
「魔法使いていうか不良かと思った」
「不良っていうかヤクザの娘だぞ」
「え………」
「マジで!?」
驚きのあまり言葉に詰まる二人。
「ごめんなさい」
「何か色々、すいませんでしたー!」
思わず謝罪してしまう。
「な、何だよ急に改まって。あたし何か変なことされたか?」
「いやー、ヤクザの人相手にちょっと馴れ馴れしくしちゃったからもしかして後でヤクザの仲間に襲われそうかなーて」
「わたしもさっき呼ばれたのにすぐ答えなかった」
「そんないいって気にしなくても。組の連中とか来ねえから。あ、お目付役の執事はたまに来そうだけど」
「そ、そうすか」
「良かった」
二人は気づいていない、本当に恐ろしいのは花村組のヤクザではなく沙紀絵専属の執事ということに。彼の前でひとたび沙紀絵に迂闊なことをすれば二人は世にも恐ろしい目に遭うだろう。
「数が多すぎる、なんだこいつらは!」
蜘蛛型モンスターを倒していたヴァミラが悲鳴を上げる。一体一体の耐久力はないが如何せん数が多く倒し切れないでいる。
「気をつけるのはこれからだ 」
「なに?」
狼が意味深なことを言う。
良かったらブックマークや評価お願いします




