六十三話 沙紀絵と司の学友達
学校の放課後、俺は友達の司やさなえといっしょに魔法使いの李梨花さんと集まることにした。なんでも司の夢の話をしたいんだとか。少し前俺が見てた夢もただの夢じゃなかったし司もその線かもしれないてさなえが。なぜか司の夢なのに司よりさなえのが張り切ってるけど。
「というわけで、助っ人の花村沙紀絵です」
李梨花さんがセーラー服の女子高生を紹介する。助っ人かあ、ヴァミラだけでも何とかなりそうだけど場合によっちゃあ他の奴の助けもいりそうだしまあいてもいいか。
「助っ人はいいけどなんで一人なんだよ、他の連中は?」
「ヴァミラの存在が必要以上漏れて組織に退治される恐れがあるからよ」
「なんで?」
「だってヴァミラの本来の姿てどう見ても怪物じゃない」
「まあ確かに、でも何でヴァミラの見た目が怪物ぽかったら駄目なんだよ」
「豊太郎、李梨花さんのいる組織は?」
司が聞いてきた。
「えっと、怪物退治の専門家?あ……」
「うん、そゆこと」
ヴァミラが李梨花さんの組織に倒されるかもしれないってことか、それは何としても避けないと。まだ会ったばかりなのにお別れなんていやだからな。
李梨花さんが花村とかいう人に俺達を紹介してく。
「紹介するわね、もう知ってると思うけどこの女っぽい男が天城司、女装させたら間違いなく合うわね」
「間違いなくていうかもう一回やりましたよね李梨花さん」
司が突っ込む。そういや昨日魔法使いというか魔法少女の格好してたっけ。実験みたいなもんだけど。
「司も今回の事件の当事者の一人だったのかよ」
花村さんが司を睨む。司て確か李梨花さん達の仲間だったっけ、今は怪物退治してないみたいだけど。
「お久しぶりです、沙紀絵さん」
「おう、元気してたか?」
「はい、お陰様で」
「そうかー、そりゃ良かったよー。たく、心配させやがって」
「ちょ、くすぐったいって沙紀絵さん」
花村さんが司の首をホールドして司の顔に頬を擦り付ける。司お前、まさかその人と恋人的な関係になってたのかー!彩音というものがありながら家の外に彼女を作っているとは、なんてヤツだ………。
「あ、でこっちが藤田さなえ。廃人ゲーマーで昨日遅刻しかけたらしいわよ」
さなえは何も言わないが無言の威圧感で李梨花さんを睨んでやがる。こええ、こええよ。せめてなにか言ってくれよ………。
「ゲーム?何のゲームやってるんだよ?」
花村さんはそんなさなえにもビビらずに話しかける。こいつ、強い……。
「マジモン、個体値の厳選とかやってる」
マジモン、正式名称マジカルモンスター。モンスターを捕まえて育成するゲームなんだけどモンスターに性格や個性があってそれで能力に個体差が出るらしい。普通のやつはやらないが廃人レベルまで行くと個体差の厳選まで始めるんだとか。俺はそこまではやらないけど。
「マジモンか、あたしも昔やったことあるな……」
「あなたは?」
「あたしか、あたしはアイドルワーカーズ、かな………」
どうして疑問系なんだ。アイドルワーカーズて確か女子小学生に人気のアイドルアニメだっけ。アーケードゲームも稼働してるんだとか。
「可愛い……」
「え………、か、可愛い?」
おいどうした、動揺してるぞ花村さん。この人意外とうぶってやつなのか?
さなえは無言で親指をグッと突き出す、サムズアップだ。
「お、おう」
花村さんも親指を突き出す。何かよく分かんないけど意気投合したみたいだな。
「で、こっちが二宮豊太郎。この神社の神主さんのお孫さんで絵ばっか描いてる根暗よ」
「根暗じゃねえよ!充分明るい性格だよ!確かに学校でも絵ばっか描いてるけどさぁ」
てか根暗言うなら無口でポーカーフェイスのさなえの方だろ、交遊関係も狭そうだし。
「なんだよ」
なぜかさなえがこちらを睨んでくる。
「豊太郎、何か失礼なこと考えてない?」
「別になにも」
やっべえ、一瞬頭の中読まれたのかと思ったぜ。
「わたしは根暗じゃない」
前に向き直りボソッと呟いた。当てやがった、エスパーかこいつは!
「いいじゃん絵ばっか描いてても。そういうの、好きだぜ」
「ありがとうございます。あの、そういうのやめてくれません?」
花村さんが俺の頭をくしゃくしゃにしながらなでやがる。うっとおしい性格だなこの人。
「あ、わりいわりい。司や美海にたまにやるからつい………」
彩音にはやらないのか。
「そしてこいつが今回のいや、これからの主役、ヴァーミリオンドラゴン、略してヴァミラ!」
「ボク、ヴァミラ。よろしくー」
「お、おう。よろしく」
握手を交わす二人。
「なあ、李梨花。このトカゲ、一体なにもんだよ。魔獣か?」
「チッチッチッ、それが魔力なんてものは一つもないんのよね」
李梨花さんがキザに指を振る。魔獣か魔獣じゃないかて魔力が出てるか出てないかで分けるのか。
「じゃあこいつが昨日の事件の犯人?」
「むしろ犯人を倒した功労人よ」
「こんなちっちゃいのが?まっさかぁ」
疑い深い花村さん。そりゃそうだ、今のヴァミラは本来の姿とはサイズがかなり違う。初見でこいつの正体を見抜けるやつはいない。
「ホントだよー、信じてくれよー」
「つってもなぁ」
「ヴァミラを信じるか信じないかはさておき、そろそろ本題に入りましょうか」
「ああ。メールでも話したが今回司が夢で見た話、あんたはどう思う?」
「どう思うってもねえ、そんな正夢みたいな話あるわけないって思うけど豊太郎の話もあったしあながち間違いじゃないてとこなのよねぇ。問題はそこからどう動くかなんだけどまさか本当にその森がある、とかじゃないわよね?」
「森なら神社の裏手の方にあるぞ。森っていうか山だけど」
「うわ、シャレになんないわね。というとあれかしら?その森だか山に蜘蛛のモンスターが出て?あたし達がやられるってこと?冗談じゃないわよ、あたし達魔法使いが簡単にやられてたまるかっていうの」
いかにも不服という感じの李梨花さん、まあお前が負ける光景を夢で見たつっても信じないのは当然か。
「おい李梨花、結局これは何の集まりなんだよ」
「ああ、言ってなかったわね」
李梨花さんが花村さんに今回の事情を説明する。いや先に言っとけよめんどくさいから。
「ふーん、あたしにはさっぱりだな」
理解してない様子。
「あの、なんでこの人ホントに使えるんですか」
「頭はあれだけど戦力としては充分かなーって」
「はぁ……」
戦力てあんただってこの間大して役に立たなかったのに大丈夫かよ。
「沙紀絵さんはこの話に関してどう思います?」
司が聞く。サラッと花村さんのこと下の名前で呼びやがった。俺は李梨花さんのことも心の中でしか下の名前で呼んでないのに。やっぱいっしょに仕事してると距離感も近くなるのか。
「え、とりあえずその森に行ってみればいいんじゃねえか?場所が合ってるか夢の話が正夢かはおいといて」
「沙紀絵さんらしい答えです。なら、行ってみます?その森へ」
夢が正夢かも分からない、夢にあった場所がそことは限らない、けどそこかもしれない。おもしれぇじゃねえか、このわけの分からなさ、何か冒険ぽくなってきたぜ。
「よし、行こうぜみんな!」
俺は立ち上がりみんなを誘う。
「おお!」
「よっしゃ探検だー!」
「フッ、魔法使いと龍使い御一行の出動ね」
さなえだけは無言で立ち上がる。こんなとこでもポーカーフェイスとは、流石だぜ。




