六話 黒羽彩音討伐作戦開始
悪の魔法使いとの戦いを少し長引かせようと思う
組織のオフィスに集められた佳代子の班員達。早紀絵もいっしょだ。そこで佳代子は黒羽彩音の説明する。
「……以上のことから我々と同じ魔導システムを所持しながら非人道的行いをする黒羽彩音を討伐する必要があるわ。作戦の概要は……」
「あのっ」
「なにかしら」
班員の一人が手を上げる。
「魔法使いが三人もいてそのシステムから普通の人でも使える魔獣用の武器を作ったんですよね。なのに魔法使いの変身用デバイスて量産出来ないんですか?」
「え」
班員の質問に思わず固まる佳代子。
「えっと……その内出来るんじゃないかしら。いやあれってパワードスーツみたいなものて聞いたし普通の武器より作るのきっと大変なのよ」
なんとか答える佳代子。
「つまりおれたちはしばらく普通の戦闘服で戦えてことですね。魔獣に狙われたら死ぬかもしれないのに」
班員が皮肉混じりに感想を言う。
「やめて!李梨花と司が壁やるからあんたたちはそれで我慢しといて!」
佳代子の必死な言い訳。
「ひどっ、あたしら見殺しにする気だ!」
「いやな上司ですね」
今度は李梨花と司が文句をたれる。
「そ、それじゃあ、作戦を説明するわよ」
気を取り直す佳代子。
「まず部隊を配置して対象を包囲、集中砲火を浴びせる。弾切れ、もしくは対象が上から攻撃を仕掛けてきた場合はこちら側の魔法使いと司が狙撃、隙を見て部隊の銃撃を浴びせる、以上よ!」
「なんかちゃんとした組織なのに雑な作戦ですね」
司の辛辣な突っ込み。
「とにかくこの作戦で行くわ」
だが強気な佳代子。
「お言葉ですが班長、その作戦にはある前提条件が抜けています。そもそもその魔法使いをどうやって見つけるのです?魔獣と同様探知可能なんですか?その場合こちら側の魔法使いと誤認することはないのでしょうか?」
今までおとなしくしていた十一が指摘する。
「それは……どうなのよ?」
佳代子はとうとう誤魔化せず美海に聞く始末。
「えっと、魔法使い同士は共振で引き合うので李梨花さん達が表に出て探すんじゃないかと……」
美海が苦し紛れ答える。
「悪いけどこの間発動した時正確な位置は分からなかったわよ、地図が頭に出るわけじゃないし」
李梨花が実体験に基づき答える。
「李梨花、花村さん、頼んだわね」
李梨花と早紀絵の肩に手を置く佳代子。
「へ、え?」
「結局いつもの脳筋作戦なのね……」
なにを言われたのな分からず戸惑う早紀絵と諦め顔の李梨花。彩音の探索を佳代子は魔法使い同士共振能力に頼りきるつもりなのだ。
そこへ部屋の扉が開かれる。
「技術部でーす、注文の品を届けにきましたー」
白衣の男が扉の奥から現れる。
「別になにも頼んでないけど」
「上からここへ届けるようにとのご注文ですからね。魔獣探知用のパソコン借りますよ」
「はあ……?」
事情の飲み込めない佳代子をよそに男が作業を始める。パソコンのスロットにUSBを挿しプログラムをインストールさせる。
「これでオッケー! 黒羽彩音の魔力がこちらパソコンに表示されるようになりましたー、ぱちぱちー」
プログラムをインストールした後はしゃぐ男。
「もしかしてわざわざ魔法使い同士を共振させなくても黒羽彩音に会える?」
「いえす、いえーす!」
佳代子の質問に男が肯定する。
「いっしゃ、やった!いえーい!」
そのままガッツポーズをする佳代子。
「うちの技術部ていったい……」
魔法という非科学を探知するプログラムという科学の前に美海は驚きを隠せない。
「組織の技術力は結構進んでるからねー、魔法使いを探知するのは無理だけどデータとした残ってたヨミを識別するのはわけないよ」
男がインストールさせたプログラムの詳細を説明する。
「すいません、ヨミてなんです?」
美海が聞きなれない言葉に反応する。
「黒い魔導システムの名前だよ、知らない?」
『それって名前あったの!?』
男の説明に司、李梨花ら美海、早紀絵が声を上げて驚く。そもそも魔導システムはそれ単体ではなく持ち主で呼んでいたため各システムに固有名詞があるなどつゆも思わないのだ。
「いや、わたしがつけた」
だが男の返答は全く予想外のものだった。
「ちょっと、由緒ある魔導システムに勝手に名前つけないで下さいよ」
司が思わず苦情を入れる。
「かっこいからいいだろう?」
「否定はしませんが」
笑って答える白衣の男。
「因みに青いのがイズミ、赤いのがホムラかな」
どうやら他の魔導システムにも名前がついていたようだ。
「まあいいんじゃない」
「ホムラ、ちょっといいかも」
それぞれの持ち主が喜んだ表情になる。
「逃げられたじゃないのー!ほんとわけわかんないわよ、魔獣と同じで探知出来るんじゃなかったのー」
その夜オフィスに戻った佳代子が不満気に叫ぶ。彩音の魔力反応が出た直後現場に向かったのだが到着した時にはもう彩音に襲われた人間のみが残り彩音本人は消えており、魔力反応が消えたいたのだ。佳代子達は病院への通報だけをやりオフィスに戻ってきたという顛末である。
「魔獣と違い動きが早く武装を解けば反応がなくなる魔法使いを探すというのは無理があるようですね」
十一が眼鏡をクイッと押し上げ言う。
「じゃあどうやっても捕まえらんないじゃない」
佳代子が文句を言う。
「班長、結局どうします?」
班員の一人が不安気味に言う。
「いつも通り反応が出たら現場に行くしかないわよ」
「法則性とかないんですか?」
「探してみれば?ないと思うけど」
佳代子の反応に班員達も困り果てるしかない。