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魔導奏者りりかさん  作者: 兵郎
六章 天使の翼をなくした少年編
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五十九話 二宮家の食卓



俺、二宮豊太郎は爺ちゃん、父ちゃんと母ちゃん、姉ちゃんと夕食を食べていた。ヴァーミリオンドラゴン改めヴァミラもいっしょだ。


「おー、ヴァミは箸を使うのが上手いのー。ほれ、これも食え食え」

爺ちゃんが自分の分のから揚げを差し出す。皿に置かれたから揚げが一瞬でやつの口に放り込まれる。はええ、はええよ。つうかあいつトカゲだかドラゴンのくせに指器用だなおい。てか名前一文字減ってね?一応ヴァミラて紹介したはずなんだが。


「あの、豊太郎、このトカゲ急に暴れたりしないだらうね」

眼鏡をかけた優しそうな瞳をした父ちゃんが心配そうに話しかけてきた。俺の父ちゃんは実家暮らしだけど神社の手伝いをせずに外でサラリーマンとして働いてる。大学は神学系だから一応家は継ぐ気あるんだろうけど。


「急にはならないんじゃね?腹減ったらありそうだけど」

「おお、恐い恐い。ちゃんとご飯あげないと」


「大丈夫よ、ワンちゃんやネコちゃんみたいにちゃんとお世話すれば」

母ちゃんがおっとりした声で言う。うちは父ちゃんが爺ちゃんの実子で母ちゃんの方が嫁になってる。母ちゃんは声と同じで性格ものんびりというか大人しいんだけど姉ちゃんも姉ちゃんも何かゆっくりした性格で爺ちゃん除いて全体的に活がない家系だ。実は俺が多少荒っぽい性格なのはこの家系が原因じゃないかって思い始めてる。


「ボクはネコじゃない、ドラゴンだ!」

ヴァミラが主張する。そうだよな、喋るわ箸使うわ普通の動物なんかとは違い過ぎて犬か猫みたいな連中とは同じカテゴリに出来ないよな。


「あら、ごめんなさい。トカゲさんだったわね」

「トカ………、まあいいや」

そこは直さないんだ。まあトカゲもドラゴンも同じ爬虫類だしな。


「お母さん、おかわり!」

何か喋らないなーと思ってた姉ちゃんが俺の横から空の茶碗を母ちゃんに差し出す。姉ちゃん普段は大人しいのにご飯の時は無言でガツガツ食うんだよな、人間てやっぱ分かんねえわ。



― ― ― ― ― ― ― ―



僕、天城司がお風呂に入った後自分の部屋でくつろいでるとノックの音がした。

「わたしだけどー、ちょっといい?」


彩音ちゃんの声だ。

「いいよー」


ガチャッと音がして彩音ちゃんが中に入る。魔獣退治に僕を巻き込みたくないのか学校の放課後とかは僕のことを避けてるんだけど家の中じゃ普通接してくれる。嫌われてるのか違うのか微妙な感じ、正直不安かな。やっぱり僕はもう魔獣退治には関われないのかな。

「あのさ、李梨花さん何かあった?」


「え?」

やばい、もしかして気づかれた?今日のことは別に秘密することじゃないけど何か他の人にバレたらバレたで騒ぎになりそうなんだよね。


「えっと………」

彩音ちゃんの目が泳いでる。あ、これ絶対魔獣とか魔法使いの話だ。彩音ちゃん最近その話全然してないし。別に嫌ならそもそも無理に言う必要ないと思うんだけどな。


一分近く経ってようやく口が開く。

「別に魔獣が出たとか悪い魔法使いが出たとかじゃないんだよ、違うんだけど、何か今日あの人忙しそうだっていうか」


「何かあったの?」

「うん、今日放課後午後から暇だから特訓でもしようて約束してたんだけど急に出来ないて電話あって………。理由聞いても答えてくれないし友達のあたしにも言えないのかなて………」

うわー悩んでるよこの子、すっごい悩んでるよ。彩音ちゃんのお母さんが敵の組織の人として出てきた時も思い詰めた感じだったし悩みやすい性格なのかな。


「あ、えーと、李梨花さんにも多分人には言えない事情てのがあるんだよ。たまには一人でいたい的な?」

ヴァミラとかサイのモンスターの話はせずになんとか誤魔化す。えっと、誤魔化せてるよね?


「あの人にとってわたしは友達じゃないてことなの?」

「だからその友達にも言えないて話じゃないのかな」

「やっぱり友達じゃないんだ」


「なんでそうなるのさ」

「だって友達て何でも話せる心を許した存在かと思ってたけど李梨花さんわたしに大事な話してくれないじゃん」

うわ、痛いとこ突かれたよ。僕もアマツカと別れて魔獣や魔法使いのことに関われなくて寂しいの言ってないしそもそも今日のこと言ってないからあまり言えないんだよね。


「と、とりあえず明日直接会った時李梨花さんに聞いたらどうかな」

「うん、そうする……」

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