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魔導奏者りりかさん  作者: 兵郎
六章 天使の翼をなくした少年編
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五十八話 ヒーローはスピードが命


李梨花が立ち上がり部屋を後にしようとする。

「あ、司。ところでなんで魔獣が出た時他のやつじゃなくてあたしにしたの?」


「あー、えーと、彩音ちゃんは何か避けられてるし海浦姉妹は二人共生徒会だろうし沙紀絵さんは呼んだら呼んだでめんどくさいことになりそうだし李梨花さんが無難かなーて」

司は目を泳がせながら答える。


「あ、そう。じゃっ」

なるほど、と理解しフッと笑いながら今度こそ出ていく李梨花。


「海浦に彩音てあいつらも魔法使いやってんのかよ」

豊太郎が驚く。

「まあ言ってなかったしね」

「もしかして彩音や美海がお前に絡んでたのも……」

「うん、魔法使い関係だね」

「マジか。てっきり俺、お前が色んな女子にモテるハーレム体質かと思ってたわ」

「そんなすごい体質ないってば、普通だよ普通。魔法使いの知り合いがいるくらいで後は普通だって」



― ― ― ― ― ― ―



あたし、城野李梨花は豊太郎の家を出た後、ウィザードマテリアル技術部に来ていた。

「アリエルー、ちょっといい?」

あたしは紫のツインテールにピンクの目とかいう現実離れした女の子に話しかける。実際人間じゃないから現実離れした見た目も普通だろうけど。


「あ、李梨花さーん。今日はですねー」

「あ、今日はそういうのじゃなくて、頼みたいことていうか作って欲しいものがあるんだけど」

「はい?」


あたしは今日出たサイのモンスターみたいなのがまた出てもいいようにそれ用のアイテムを作るよう頼んでみた。


「ええっ、それは流石にちょっと、難しいんですけど………」

眉を寄せるアリエル。やっぱ無理があったかー。この子の発明品て基本銃とか弾丸くらいだからそれ以外となるとうーんてなるみたい。


「いいから頼むよー、ねっ?」

手をパンッと叩いて頼み込む。あたしの顔見知りの技術者と言えばこの子とルシフェルさんしかいないから正直他には頼みづらいのよねー。


「はあ………。とりあえずやってみますけど得意分野じゃないんで性能はあまり望まないで下さいね」


「やったー!ありがとー!愛してるー!」

あたしは喜びのあまりアリエルに抱きつく。

「え、あ、李梨花さん!?」

「あ、ごめん強くし過ぎた?」


「い、いえ、そういうわけでは……」

「ん、赤いわね。風邪でも引いた?」

アリエルの額に手をやる。

「熱は……ないわね。じゃああたし行くから、この件は他のやつには秘密で」

「あ、はい」

あたしは挨拶代わりに手を上げ立ち去る。


今度はルシフェルさんのところに来た。組織にあった魔導システムのパワーアップ版や新しいものを作ったりしてるすごい女の人。耳が尖っててアリエルといっしょで普通に見えないけど人間じゃなくて悪魔なの、人間の科学力じゃ魔導システムは作れないみたい。魔導システムの技術を流用した武器とか医療器具とかは作れるみたいだけど。いや技術流用出来るなら魔導システム本体も作れるでしょて思うけどなぜか作れないのよねぇ。


「あの、ルシフェルさん、魔導システムの改良とかて今出来ます?」

「どうした?やはり魔導奏者の使用は少々きついか?」

ルシフェルさんは女の人なんだけど男っぽい口調で喋っててなんだか侍みたい。見た目は日本人ぽくないし眼鏡にアップの髪に白衣ていうキャリアウーマンてイメージだけど。


「まあ、そんなところですね。変身してるだけでも結構キツイんで端末の方で逐一リミッターかけたり解除したり出来たりしたいんですよ」


「それは変わった注文だな。もしや高速移動に特化した使い方を所望かな?目的地に速くたどり着きたいが魔導奏者になったら肉体への負荷が大きすぎて着いたはいいが禄な戦闘にならないとか」


「あ、はい。そうですそうです」

すごいルシフェルさん、あたしの言いたいことを寸分違わず言い当ててるエスパーなの?テレパシーでも使ったの?


「まるでわたしがエスパーか何かと思ってる顔だな」

「まあ、はい……」

そこまで見抜けるんだ……。


「なに、簡単な推理だよ。魔導システムの強化版を全員分完成させてからまだ日は浅い、目下の脅威である魔王院ありさと交戦したという報告もない。つまりまだシステムが弱いということで改良をすることはない、ということだ。何しろわたしの魔導システムは世界一いや、宇宙一ィィィィィィ!だからな、容易にやられるということはありあんよ」


「すごい自信ですね」

悪魔の世界なのか人間の世界で一番なのか謎だけど。


「当然だ、でなければこんなところにスカウトなどされんよ」

「まあ確かに…… 」


「つまり、単純な戦闘力で問題があることはない。よって戦闘から戦闘への移動についての話になる、ということだ」


「なるほど。それでこの話は……」

「問題ない、やってみよう。端末を預けてくれれば明日の放課後までには調整が完了していよう」

「ありがとうございます!」

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