五十五話 ゴミ箱から出てきた世界
公園のゴミ箱、そこには様々なゴミが入っている。お菓子の袋、学校のプリント、トレーディングカード、ゲームソフト、果ては誰か婚約しようとして破局したのか婚約指輪まである。そのゴミ箱を豊太郎は漁っている。頭の中に響いた声がこの辺りからした気がしたため漁っている。
いつも夢の中で会うあの声の主はどこにいる。いくらゴミ箱を漁れば出てくる、豊太郎は焦るばかりだ。そこへ司が現れる。
「僕も手伝う」
「司………、ああ」
二人でゴミ箱を漁り出す。近くでは李梨花がサイのモンスターと戦闘をしているためかなりシュールだ。ゴミ箱を漁ってるだけでも奇妙だが。
「その前にこのゴミ箱倒した方がよくない?」
さなえが後から突っ込みを入れる。
『え………?』
思わずフリーズする二人。
「だから、これ横に、倒す」
わざわざ文章に点を入れて言い直すさなえ。
「なんで言い直したの?」
「分かってるよそんなこと!倒せばいいんだろ倒せば!」
ドグシャァァァッ!
ヤケクソ気味にゴミ箱を蹴り倒す豊太郎。中身が無残にも地面にぶちまけられる。その中に奇妙な機械が一つある。
「こいつは………」
機械を拾う、濃い赤の塗装が施されており細長い形状になっている。
『ホータロー、やっと見つけてくれたんだね!』
「その声はっ、ヴァーミリオンドラゴン!夢じゃなかったんだな!」
豊太郎が夢で見たドラゴンの声、それが今手元の機械からしている。
「クッ」
李梨花がモンスターに吹っ飛ばされこちらに転んでくる。
「まだよ!まだくたばるわけには行かない!」
銃を変形、剣にしてソニックブームを放つ。モンスターに直撃し後退したが思いも寄らぬ反撃が来た。モンスターは口を開き火球を発射してきたのだ。
「くっ、シールド!」
シールドを展開するが押されてしまう。
「はあぁぁぁぁぁ、はっ!はぁ、はぁ………」
何とか弾き返すが体力も限界なのか膝をついてしまう。
「李梨花さん!豊太郎、それで戦えるんでしょ?!お願い、早くして!李梨花さんでもこれ以上は持たない!」
司が焦る。
「おい、どうすればいい?どうすれば戦える?」
豊太郎が機械の中のドラゴンに話しかける。
『ボクを前にかざして、そうすれば戦える』
言われた通り機械をかざす豊太郎。
「分かった。来い!ヴァーミリオンドラゴン!」
「なにっ」
「うっ」
「まぶしい」
眩い光が発生し目を細める一同、光が止むとそこには人の身長を遥かに超えるドラゴンがいた。
「新手の魔獣?なんで………」
「来やがったか」
「これが豊太郎くんの……」
「大きい」
ドラゴンは赤い皮膚に鋭い爪や角、幾重にも重なる牙、巨大な羽を携えていた。
モンスターがドラゴンに気づき突進する。ドラゴンは難なく受け止め耐える。
「行けー!ヴァーミリオンドラゴン!」
「グォォォォォ!」
ドラゴンが雄叫びと共にモンスターを投げる。
「ヴァーミリオンシュート!」
ドラゴンは口に炎を一瞬貯めたかと思うと一気に噴射する。モンスターは炎に包まれ丸焦げになると肉体を消滅させる。
「やったぜっ!」
ガッツポーズをとる豊太郎。
「すごいや豊太郎!」
「うん」
盛り上がる司とさなえ。
「サイの方はドラゴンが倒したからいいとしてそっちは一体どういうやつなわけ?」
李梨花が立ち上がり豊太郎に尋ねる。
「ああ、それなんだけど」
豊太郎がドラゴンに目線をやるがその姿はなかった。
「あれ、どこ行った?」
「ねえ、ちっちゃくなってんだけどそいつ」
李梨花が指差した先にいたドラゴンは爪や角に丸みができ八頭身から二頭身程度のバランスに変化しサイズ自体も人間の五歳児並になっていた。
「ホータロー、お腹減ったよー」
ドラゴンが腹を抱える。
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