五十話 夢で会ったドラゴン
またまた視点変えて司の親友豊太郎の話をやります
魔導奏者りりかさん50
俺、二宮豊太郎は最近夢を見ている。それもいつも決まって同じやつが出てきやがる。しかもそいつは人間じゃない、ドラゴンだ。ありえないと思うだろ?そのドラゴンは俺が小さい頃に考えたキャラクター達の一体なんだがそれを親友の司に話したらもっとありえないて顔しやがるんだ。ああ、確かにありえないさ、けどこうやって時折夢に出てかれちゃ本物なんじゃないかって思うしかなくなっちまうぜ。
あいつと夢の中で会った時はこんなだった。
「ホータロー、ホータロー。ねえホータロー、起きてってば!」
頭の上で低い唸るような、でも甘えたような不思議な声がし俺は起きあがる。そこは何もない暗黒の空間だった。俺がわけも分からず立ち上がるとそこにやつがいた。赤い巨大な身体に長い頭、手足の鋭い爪、頭に生えた角、背中に生えた翼、間違いない、やつはドラゴンだ。ファンタジーの世界にしかいないやつがどうして?あ、もしかして夢か?夢なら何が出てもおかしくないし何もない空間も頷ける。
「あー、やっと起きた。ホータロー、ボクだよボク、分かる?」
「いや、分からんが」
なにこいつ、初対面のやつに知ったやつのふりするとか新手詐欺?モンスターのくせに姑息な真似しやがって。
「そんなー、ボクずっと待ってたのにー。ショックー」
ドラゴンが爪で頭をかかえる。牙とか爪あって見た目は恐い見た目してるくせに可愛いポーズしやがる。
「で、お前は誰なんだ?」
「ボク?ボクはヴァーミリオンドラゴンだよ、覚えてない?」
「すまん、やっぱ分から………ヴァーミリオンドラゴン?!」
どっかで聞いたような気がするその名前はどこか懐かしい感じがした。そうだこいつは…………!
「お前、なのか………?」
昔小さい頃に描いたドラゴンにそういう名前をつけたことがあった、確かその名前がヴァーミリオンドラゴンだった気がする。でもそれがなんで今さら、わけわかんねえ。
「そう、ボクだよボク。やっと分かってくれたんだね!」
ドラゴンは両手を上げ子供みたいに喜ぶ、ドラゴンのくせになんて表情豊かなんだ。
「で、なんでお前が?」
一応夢だからこういう発言は野暮だがあえて聞く。
「それなんだけどね、ボクもうすぐホータローに会えるみたいなんだ。それを知らせたくて」
「いやもう会ってるだろ」
変なこと言いやがるドラゴンだ。
「そうじゃなくて、キミの世界でだよ」
「俺の?」
夢とかじゃなくて現実て意味か?本当にこいつが俺の目の前に出てくるのか。
「あ、そろそろ時間みたい。また会おうねホータロー」
「お、おい!待てよ!」
気がつくと朝を知らせる目覚まし時計が鳴っていてもう起きる時間になっていた。朝か、学校行かないとな。夢にしてはリアルなのか夢なのか分かんないけど。
ー ー ー ー ー ー ー
そして現在、俺はまた同じ夢を見ている。
「ホータロー、ホータロー、起きてってば」
「んっ」
いつものようにドラゴンに起こされる。夢の中で起きるというのも変だがこいつと会う時はいつも寝てる状態なのを起こされる。
「おはようホータロー」
「おはよう。で、今日は何の話をするんだ?」
いつものように挨拶を交わす。
おかしい、いつもならすぐ会話を始めるところなのにやつは黙ったままだ。
「おい、どうした?」
「人間の世界に危機になってる、侵略者が来てるんだ。もうすぐ新しい勢力も現れる、ボクはそのために戦わなきゃならない。そのために人間であるキミの力が必要だ、力を貸して欲しい」
やつの声は珍しく淡々としており妙に機械じみていた。
「どういう、ことだ?」
「そもそもボクはそのためにキミに会いに来た」
「なんで俺に」
「キミには素質がある、ボクらの世界の力を操れる力が」
「なんじゃそりゃ、俺はただの人間で特別な素質なんてないぞ」
「あるんだそれが。キミは元々ボクらの世界との繋がりがわずかにあった、だからキミは小さい頃からボクらを知っていた。キミは素質がある人の中でも特別なんだ」
「お前を、知っていた?」
何を言ってるんだこいつは。そもそもこいつは俺が昔考えたモンスターじゃないのか?
「小さい頃のキミはボクらの姿を思い浮かべたんじゃない、ボクらの姿を夢を通して何度も見ていたんだ。だからキミはボクらの姿を簡単に絵に描けたんだ」
「そんな記憶、どこにも………」
「小さい頃だからね、多分忘れちゃったんだよ」
「そう、なのか」
「それよりも、そろそろボクがそっちの世界に行くよ。そっちに行ったら呼ぶからちゃんと来てよね」
「そろそろっていつだよ」
目の前のドラゴンにもう詳しく話を聞こうと思ったら外から声がした。
「あの、二宮くん?二宮くん?ちょっと」
誰だ、俺の眠りを妨げるのは!折角いいところだったのに何しやがるんだ、ちょっと怒ってやろうか!




