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魔導奏者りりかさん  作者: 兵郎
五章 ヤクザの娘さんとそのボディーガード
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四十七話 魔法天使アマツ対魔王院ありさ!



「戦える?何を言っている、この状況が分からないのか。今のわたし達が奴を倒すのは無理だ、諦めろ」

アマツカが辺りを見回す、周囲には李梨花、美羽羅、美海、フヨウが倒れ伏している。後ろに彩音と沙紀絵はいるが戦力にはならない、まともに戦えるのはアマツカと司、二人だが肉体を共有してるので実質1人だ。


「魔導システムの力を手に入れ前より強くなった、仲間も増えた。だが見ろ、所詮我々の力では奴には決して敵わない、逃げるしかないんだ」

アマツカは悔しさで拳を握る。


『嫌だ、逃げない。大体みんなバラバラで倒れてるのにどうやって逃げるのさ』


「だから奴を倒すと?無茶を言うな」


『もういい』


「おい」

「君がやらないなら僕がやる」

人格が後退し司のものになる。まだダメージが残り身体はまともに動かないが気力はまだ充分残っている、戦える。


翼をはためかせ空中から接近戦を仕掛ける。それを難なく受けるありさ、しかし司の攻撃はそんな単純ではなかった。剣をありさの腕から離し、その勢いで蹴りを見舞ったのだ。衝撃で怯むありさ、そこへさらに剣を突き立てる。皮膚が硬いのか身体に傷をつけた感触はない。


「まだまだぁっ 」


司はなおも諦めず攻撃を続ける。双剣による連続攻撃、横に斜めに縦に斬り刻んでいく。


「でゃぁぁぁ」


魔力のエネルギーを剣に纏わせた上段からの垂直斬り、ありさの服を引き裂き肉にまでダメージが通る。肉が引き裂かれ黒い肉体内部から青い体液が流れる。


「グッ、ガッ」

ガクリと膝をつくありさ。


「やったぜ!」

「うん、すごいよ司くん!」

沙紀絵も彩音と共にガッツポーズを取り司の勝利を喜ぶ。


「はぁ、はぁ………。そんな、うそでしょ………!?」

力を出し尽くし満身創痍の司だが目の前の何かを見て驚く。なんと、先ほど剣で肉を引き裂いたはずのありさの身体が修復されていくのだ。


「冗談だろ、司でもあいつにはかなわないのかよ」

沙紀絵もありさの再生能力に驚きを隠せない。


ありさが唸り声と共に爪を突き出す。司は後退するが双剣を交差し防御する。さらに口にエネルギーを溜めていくありさ。


「何かヤバくないあれ?」

彩音がありさを指差し言う。

「ああ」


「やらせない!」

司は羽を広げビームの雨を降らせる。ありさの口からエネルギーが発射されぶつかる。


「ぐ、ぐうぅぅぅ………」

徐々に押され始める司。


「負けない、負けるもんか!」

司は羽から出すビームの出力を上昇させる。均衡する二つのエネルギー、しかし次第にありさを押し始める。


「はぁーーーーーー!」

司の放ったエネルギーがありさにぶつかる。吹っ飛んで転ぶありさ。片腕をかかえ、その場から離れるありさ。


「はあ、はあ、今度こそ………、やった、か………」


「司ー!」

沙紀絵が走ってくると司に後ろから抱きつく。

「やったじゃねえか司、あの化物を倒しちまうなんてよー!」

「いたいいたいいたいって!そんな強くしないでよ」

司が悲鳴を上げる。

「わりいわりい」

沙紀絵がばつが悪そうに離れる。腕だけでなく少女特有の胸の膨らみも当たってたが敢えて言わなかった、言えば間違いなく大吾に殺される。


「天城様、よくぞご無事で」

大吾がいつの間にか現れ司を労う。

「まあ、なんとか」

大吾の目が司を睨む。大方よくもお嬢様とあんなに馴れ馴れしくしやがって、自分は普段そんなことされないのにとでも思ってるのだろう。


「母さん!ねえ、母さん!起きてよ!」

遠くを見ると彩音が紗栄子を揺すり呼びかけている。


「ひとまず病院に送った方がいいわ。あたしに任せて」

変身を解いた李梨花と共に美羽羅が現れ紗栄子を抱きかかえる。


「ねえあなた、大丈夫?しっかりして」

悪魔の姿からメイド服になったフヨウが美海を揺する。

「う、うーん」

気絶していた美海が目を覚ます。

「フヨウ、さん?」

「あなた、どうしてあたしの名前を?まだ名乗ってないはずだけど」

「美海です、海浦美海。五年前までわたしの家で家政婦さんやってましたよね、覚えてませんか?」

美海は変身を解き本性を見せる。


「あなたは…………」

フヨウはじっと美海を見つめる。すると何かを思い出したように目を見開く。

「美海お嬢様!!」

「フヨウさん、覚えててくれたんですね!」

「美海お嬢様、ようやく、会えましたね………」

抱き合う二人。


「どういうこと?あの二人知り合いだったの?!」

李梨花がフヨウと美海を見て驚く。

「あの人五年前と今で顔変わってなかったてこと?」

司も驚きを隠せない。司はフヨウもフヨウの別人格と思っていた雨宮恵子も司とアマツカ同様五年前魔王院ありさと戦った際に重症を負い、生きるために人間と融合したのでは思っていたがどうやら違ったようだ。


「みたいね」

「まあ、いいや。とりあえず彩音ちゃんのお母さんが心配だし美羽羅ちゃんについていこう」

「大吾、送り迎え頼むわ」

「仰せのままに」

車を取りにいく大吾。


「ふう、これで一安心」

変身を解く司。しかし、そこで予想だにしなかったことが起こる。なんと、今まで一つに融合していた司とアマツカの身体が元の二つに分離したのだ。


「え………」

「なに………」


『えーーーーー!』


あまりの現象に言葉が出ない司とアマツカ。周囲からは驚きの悲鳴が上がる。

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