四十六話 女王の猛攻 魔法使い、全滅間近!
「前と硬さが違っても関係ない、破壊するだけ」
ありさはアマツカに接近戦を仕掛けようとする。しかし背後からビームの銃撃を何発か受け動きが止まる。
「誰?」
ありさが振り向く。
「これって弾入れなくても動くんですね、じゃなくて逃げないと」
そこでは美海がライフルを触っていた。美海はありさに見つかったと悟ると即座に座っていたビル横の階段から飛び降り隠れる。
「どこに行った?」
ありさはすぐさま美海を追うがそこから見える範囲にはもう美海の姿はなかった。
「今よ二人とも、一気に決めるわよ!」
美羽羅がアマツカと李梨花に指示を出す。ありさの大きな隙を逃さないつもりだ。
「そんなこと分かっている!」
「命令すんじゃないわよ!」
美羽羅に続きアマツカと李梨花も反抗的な言葉を言いながらもそれぞれの武器に魔力を溜めソニックブームを放つ。ビームの斬撃を受けありさが吹っ飛ぶ。
「ざっとこんなもんね」
「やったか!」
「いや、まだよ」
ありさを見ると背中に受けた傷が徐々に修復されていき黒い魔力の渦が湧き上がっている。ありさはゆっくりと立ち上がるとその場から姿を消す。
「消えた?!」
李梨花が叫ぶとありさは背後に現れる。
「後ろよ!」
美羽羅の言葉でシールドを張りダメージを軽減するがありさの力には適わず弾き飛ばされる。
「李梨花!」
美羽羅が李梨花の身を案じ後ろを向く。しかしその一瞬が命取りだった。
「あ………」
気がついた時にはありさが現れていた。美羽羅は目の前にシールドを張るが敵の狙いはそこではなかった。ありさは美羽羅の胴体ではなく腹部を狙い膝蹴りを見舞ったのだ。ガード不能の攻撃を受け吹っ飛ぶ美羽羅。
「ガハッ」
一番威力が高いと思われる爪の一撃ではないがかなりのダメージだ。
今度はアマツカが双剣を振るいありさに飛びかかる。ありさはそれを硬い腕で弾き爪による打撃を食らわす。一度ではなく二度三度。三度目の攻撃で大きく後ろに吹っ飛ぶアマツカ。倒れるには至らないが痛みで足がよろめいている。
「ハァァァァァ、ハァッ!」
アマツカは双剣を交差させ溜めたエネルギーを発射する。防御するありさだがその威力に身体が押されていく。
「くっ」
しかしそれも長続きせず先程受けたダメージのせいか 双剣のエネルギーを止め片膝をつくアマツカ。
今度はありさは口の前にエネルギーを溜める。アマツカはダメージでまともに動けない。このままではやられる、そう思った時ありさの動きが止まる。
「あなたの好きにはさせません!」
美海が横に赤い石のついたそれよりそれより大きい黄色い石のついた槍をありさに向けている。ありさの足元に魔法陣を発生させ身体全体の動きを止めたのだ。
「グァァァァァ!」
ありさが悲鳴を上げるがすぐさま魔法陣に爪を立て破壊する。
「グルルゥ」
ありさが声ともならない唸り声を上げ美海を睨む。
「ひえっ」
美海が怯んだのを狙いありさが突進する。
「させるかっての!」
美海の背後からビームが飛びありさに当たり動きが止まるありさ。
「あなたは………」
「間一髪てとこね。あなたとははじめまして、かしら」
美海が新たに現れた女性を見る。以前ありさと戦った時にもいた悪魔のフヨウだ。
「あのわたし………」
「自己紹介はあと!まずはこいつを倒すわよ!」
「は、はい!」
「グルゥァッ!」
ありさは今度はフヨウに狙いを定める。
「来るんじゃないっての!」
フヨウは三叉の槍を出現させありさに向かい槍の柄を伸ばす。ありさは槍を掴むが思い通りにはいかない。フヨウは槍ごとありさを振り回し横のビルにぶつけ壁にめり込ませる。ビルの壁の一部が破壊されパラパラとコンクリート片が落ちる。
「なんてワイルドな……」
美海が唖然とする。
「どんなもんよ」
勝ち誇るフヨウ。しかしその笑顔はすぐに凍る。ありさが槍を握り今度はフヨウを振り回したのだ。
「がぁっ」
今度はフヨウがビルの壁に身体がめり込むことになる。
「そんなっ!」
美海が叫ぶ。これで本当に今立っているのは自分だけになってしまった。フヨウの槍から手を離し再びありさが美海の方を向く。ここから逃げるか。美海の使用する魔導システム、スメラギならこの場にいる全員は転移させることが可能だ。しかし転移させる対象の位置が離れていているので短時間でやるには不可能だ。そもそもスメラギには攻撃向きに出来てはいなかった。 美海が考えている間にありさが接近し爪を振るい吹っ飛ばされる。
フヨウと美海を倒すとありさはアマツカ、そしてその向こうの彩音と沙紀絵の方を向く。
「どうすんだよこれ!全滅じゃねえか!」
沙紀絵が叫ぶ。
「沙紀絵ちゃん?」
彩音が不安気に聞く。
「いや、大丈夫だよ。まだあいつがいる、あいつがきっとなんとかしてくれる」
彩音を心配させまいと強がりを言う沙紀絵。
『いくよアマツカ、まだ僕達は戦える』
司がアマツカの中で喋りだす。




