四十二話 そしてボディーガードは再びヤクザのお嬢様に忠誠を誓う
大吾を抱えた美羽羅が沙紀絵の元に降り立ち沙紀絵が近づく。
「美羽羅、志村は………」
「大丈夫よ、別に殺したわけじゃ………あれ、意識がないわね?」
美羽羅は大吾を地面に下ろしつつ首をかしげる。
「ちょっと起きてますー?ねえってば」
負荷の大きい二段変身を解き美羽羅はそう言いながら大吾の頬をベシベシ叩く。
「何やってんだよ美羽羅!あたしの大吾に何してんだよ!」
沙紀絵が思わず叫び美羽羅を止める。
「あー、ごめんごめん、やりすぎちゃったわ。てかあたしの大吾って?」
美羽羅がめざとく反応する。
「え、いや、あの、その…………」
顔を赤くして逸らし、手を横に振る沙紀絵。
「ねえ、あたしのて何?やっぱりこの人のことただの執事じゃなくて一人の男の人て見てるの?」
沙紀絵態度など意に介せず美羽羅がなおも聞き続ける。
「あぁぁ、そうだよ!好きだよこいつのこと!昔からあたしの面倒見てくれて優しくしてくれて今も変わらず心配しやがって!ただの執事と主なのに心配し過ぎなんだよもうっ!」
ヤケクソとばかりに沙紀絵が叫び腕を振る。
「ふーん、殺していい?」
「なんでそうなる!?」
「なんとなく」
「ひでえ」
「う、うーん」
二人が騒いでいると大吾が目を覚ます。
「大吾!」
沙紀絵が大吾を呼ぶ。
「お嬢様!この度は、誠に申し訳ございませんでした!」
大吾が頭を下げる。
「大切な主にも関わらずお嬢様にあんな仕打ちを、悔やんでもくやみきれません!」
「いいってそんな、あたしだってさっきはあんなこと言っちまったし、おあいこだよ」
「いえそんな、今回の件はわたしのせいです。わたしが、あんなもの受け取ったから………」
自分をクビにしろと大吾が言いかけた時沙紀絵が言葉を被せる。
「あ、言っとくけど勝手にあたしの執事辞めたりすんなよ。ずっとあたしの側にいろよな 」
「あ、あ………」
大吾は驚きと感動で言葉が出ない、あんなに痛めつけた相手である自分をこの少女は許してくれるのかと………。
「なんだよ、あしか言ってねえで何か言えよ」
沙紀絵が焦れったそうにする。
「ありがとうございます!このご恩は一生忘れません!」
再び頭を深く下げる大吾。
「よせよ、そんな大したこと言ってないからあたし」
沙紀絵が照れたように手を振る。
「ねえ、やっぱりあなた達殺していい?」
二人を見て美羽羅が再び物騒なことを呟く。
『ひいっ』
思わず後ずさりする沙紀絵と大吾。
「と、冗談は置いといて、あなたさっきとキャラ違くない?正確には魔法使いだった時とは丸で別物のような……」
美羽羅の顔が真剣になる。
「言われてみれば確かに、あの機械を手にしてから何かドス黒いものが心の中に湧き上がってきたような……」
「どういうことだよそれ!」
「まさかアンダーウィザーズの魔導システム使い手は一部を除いて理性を壊されていた?いや、もしかしたらあたしも………」
美羽羅がアンダーウィザーズ製魔導システムの真実に気づき戦慄する。
「黒羽、紗栄子………」
美羽羅の拳が怒りで震える。やつはどれほど人々の心を弄んでいたのかと、そしてそれはこれからも同じことをするだろう。
「彩音の母ちゃんか、なんだってあんな………、昔はいい人だったのにな」
沙紀絵も頭を悩ませる。
「ま、いずれ本人に聞いてやるわ。と、そろそろ地上に戻らないと。みんな心配してるわ」
ー ー ー ー ー ー ー
「見つかった?」
「ううん、だめ」
「だめでしたー」
「こっちもよ」
司、彩音、美海、李梨花の四人は沙紀絵と沙紀絵と大吾を発見した美羽羅を探すが見つけられないでいた。
「たく、あいつらどこ行ったのよー。近くにいるのは分かってんだからね!」
李梨花が不満を漏らす。魔力の気配は感じるが細かい場所が分からず手をこまねいていた。
「近いのは分かるんだけど細かい場所がねー、ここビル入り組んでるし」
彩音が沙紀絵達を見つけられない状況を分析する。
「司さんは何してるんです?」
美海が司を見ると両手を広げた形で耳につけている。
「いやー、沙紀絵ちゃん達の声が聞こえるかなーて」
「天使て耳がいいんですね」
「さあ?」
「さあって……」
突如司達は近くで通常の魔法使いより強い魔力の気配を感じた。しかも覚えがあるタイプだ。
「ねえ、今のって………」
「ええ、間違いないわ」
司と李梨花が顔を合わせる。
「お姉様!」
美海が走る。
「行こう!」
彩音もあとを追う
「僕も!」
「あたしも!」
ー ー ー ー ー ー
ビルの屋上に向かう階段を登る司達。
「美羽羅ちゃん!」
「遅かったわねあなた達、もう終わっちゃったわよ」
これでこの章は終わり、ではなくもう一波乱ある予定です




