四十一話 美羽羅、決意の変身、魔導奏者ハヤテ!
大題がりりかさんなのに初めて劇中で魔導奏者を名乗るはハヤテになります。主役は後から来るもの
「あなたに用はありません、お帰り下さいませ」
大吾が美羽羅に向かい言う。
「そっちになくてもこっちにはあるのよ。おとなしくその子から離れなさい、さもなくば……」
「さもなくばどうするというのです?」
美羽羅は返事の代わりにボウガンを撃つ。大吾はそれを上に飛翔し回避する。美羽羅は空中にいる大吾目掛け動きを制限するよう威嚇射撃を仕掛ける。当然射撃はかわされるがそれで良かった。美羽羅はその間に沙紀絵に接近し肩から担ぎ上げる。
「沙紀絵、ねえ起きてる?」
「なあ、沙紀絵。あいつのこと、あたしが悪かったのかな」
美羽羅が声をかけると沙紀絵が顔を上げずに言う。
「あなたも悪いけど多分あっちも悪いと思うわ、ちいうかあなた達もっとコミュニケーション取りなさいよもう」
「こ、こみゅっ、なんだよそれ」
「まあいいわ、後で話すし」
「キシャァァァ!」
大吾が奇声と共に接近戦を仕掛ける。
「はっ」
美羽羅が腕を突き出し腕から風を発生させる。大吾は強風に押され後ろに大きく下がる。
「ここまではさっきと同じ、となるとやっぱりこのままじゃ…………」
デバイスを握り締め見つめる美羽羅。
模擬戦の記憶が蘇る。
「うっ」
「ああっ」
「美羽羅ちゃん!美海ちゃん!そんな、これはいったい……」
倒れる美海と美羽羅を心配する司。
「どうなってんだよあれ!」
管制室で沙紀絵が叫ぶ。
「わたしちょっと行ってくる」
彩音は演出室の方へ倒れてる二人を見に行く。
「あ、あたしも!」
ついて行く沙紀絵。
「ちょっとあんた、どういうつもり?パワーアップさせろとは言ったけどこんな物騒なの作れとは言ってないんだけど」
李梨花がルシフェルを問い詰める。
「分不相応な力を得るには代償が必要なのさ、通常の形態なら問題はないがあれくらいとなると多少なりとも肉体への負荷は免れないよ」
ルシフェルはあくまで冷静に答える。
「でもこれじゃあアンダーウィザーズの魔法天使や魔王院ありさを倒す前に負けるんじゃないの?」
「安心したまえ、ちゃんと改良して肉体への負荷も減らすさ。時間はかかるが」
いいのかそんなので、あまり改良に時間かけるとアンダーウィザーズの幹部と戦った時に負けるんじゃないだろうか。司に肩を担がれながら美羽羅は悩まされた。
その新型魔導システムの真の力を解放するとはやはり躊躇われる。だが今の美羽羅は命のかからない模擬戦でも助けてくれる仲間がいるわけでもない、ましてや大吾との戦闘でダメージを負っている沙紀絵がついている。下手に手加減すればこちらが痛手を追う。 もしかしたら相手が組織の幹部でない以上短期決戦に持ち込めば勝機があるかもしれない。
いや、迷っている暇はない。現に目の前に大吾が迫っている。美羽羅は決意を固めるとデバイスのダイヤル番号を押していきリミッター解放の準備を始める。
「魔法、いや、魔導演奏!」
最後に呪文を叫び決定ボタンを押す。
美羽羅の周囲を光と風が舞い魔法使いに変身した姿がさらに変わっていく。先ほどまで着用していたジャケットが消えシャツとスカートの上から全身に黄色い縁取りに赤い石が埋め込まれた淡緑を基調にした三角形をかたどられたアーマーが装着されさらに背中からは金属パーツの翼が生える。魔法使いを超える魔法使いにしてより戦闘用にブラッシュアップされたもの、ルシフェルをこれを魔導奏者と呼んだ。
変身時に発生した風に煽られ体勢を維持出来ない大吾。
「おい、それって……」
沙紀絵が美羽羅の姿を見る。
美羽羅も後ろにいる沙紀絵の方を向く。
「わたし行ってくる」
沙紀絵に笑いかけ飛び立つ。
「魔導奏者ハヤテ、飛翔する!」
「ひっ」
美羽羅は大吾に急速接近すると膝蹴りを顎に見舞い上空へ飛ばす。怯んだ隙にさらに接近両拳で腹部を連打する。顎を掴み、さらにビルの屋上が小さく見えるほど空中へ移動するとそこで手を離し大吾の周囲を旋回する。ただの旋回ではない、小さい円を描きつつ高速で移動することで円内部に竜巻を起こしている。大吾はなす術なく竜巻に煽られる。
竜巻を止めると美羽羅は下降し二等兵三角形の形をした刃が砲身の下についたライフルを出現させる。魔導システムの支援機能による網膜にロックオンカーソルを出現させる。その間にも標的である大吾は体勢を立て直し美羽羅に接近する。美羽羅は標的に狙いを定め、ライフルの向きを微調整する。 空中に移動する標的のため普通の狙撃ではまず正確に当てることは難しい。しかし魔導奏者としての力を解放したハヤテならば違う、動く標的であろうと正確に捉え的を撃つことが可能である。
「狙いは……………、外さない!」
美羽羅がトリガーを引き光の矢が飛ぶ。矢大吾の胸元の魔導システムのデバイスを正確に射抜く。デバイスは破壊され、大吾の変身が解ける。
「うわぁぁぁぁ!」
飛行能力を持つ鳥男の姿から執事服に戻った大吾は空を自由落下する。地面に落下し死んでしまうかと思われたがそうはいかない、美羽羅は大吾に接近し抱きとめる。
「さ、あの子のところに戻るわよ。わたしの仕事はまだ終わってない」
「え?うわぁぁぁぁ!」
大吾が言われた言葉の意味を理解する間もなく沙紀絵のいる場所へ勢いよく飛ぶ沙紀絵。大吾の絶叫が再び空に響く。こんなに悲鳴を上げて沙紀絵を守れるのかしらん?男なのに?執事なのに?と思いながら美羽羅は空を飛ぶ。




