三十六話 ボディーガードは鳥がお好き前編
「美羽羅ちゃん気づいてる?」
彩音はケーキ屋を出て美羽羅に電話する。
『当然よ、今向かってるわ』
「それなんだけど李梨花や美海には伝えないでくれるかな、来るなら司も加えて三人くらいで」
『え、なんでよ?てか沙紀絵は?』
電話の向こうで美羽羅は訝しげになる。人を増やせというならともかく人をあまり呼ぶというのは妙だ、戦力は多い方がいいというのに。それに沙紀絵が数に入っていない。
「その沙紀絵ちゃんを戦わせないようにするの!今あの子は、数少ない学校の友達と遊んでるから!」
『全く、あんたは………。分かった、あたしとあなた、司だけでやるわ』
「美羽羅ちゃん、ありがとう……」
* * * * * * *
「これで、これで俺にも力が、これさえあれば、お嬢様は俺を認めてくれる…………」
、大吾は女性から貰った機械を握り締める。
「魔法演奏」
大吾が機械のボタンを押し叫ぶ。大吾の姿が変わり全身緑の鳥を模したような姿になる。
「力が、力がみなぎるぞー!うぉぉぉぉー!」
両手を広げ雄叫びを上げる大吾。
「ん? 」
気が落ち着くと大吾は空の向こうに影を三つ見つける。
「この辺り、かな」
「ええ、近いわね」
「ねえ、あれじゃない?」
「あ、そうかもしれないわね」
「よし、行ってみようよ」
魔力反応を追い空を飛んでいた司、美羽羅、彩音はビルの屋上にいる人影らしきものを見つけ近づく。
「おや、天城さんに海浦さん、それに黒羽さんじゃないですか」
人影、頭だけ人間の顔をした全身緑の鳥男が司達に声をかける。
「え、あの人は…… 」
「あれ、志村さん?」
美羽羅と彩音が男の正体に気づく。
「ねえ、あれ志村さんだよね!沙紀絵ちゃんとこのボディーガードの志村さんだよね!」
司も男の正体に気づきテンションが高くなる。
「でもどうして彼が、それに胸のあれもしかしてアンダーウィザーズのじゃない?」
美羽羅が大吾の胸元にブローチとしてついている魔導システムらしき機械に目を付ける。
「志村さん、その姿は一体?髪の後をヘアクリップで留めたふわっとした怪しい女の人からもらったとかじゃないですよね?」
彩音が恐る恐る聞く。
「ほう、よくご存知で黒羽様。この胸の機械は恐らくその女性から頂きました」
大吾が胸の魔導デバイスに手を添える。
「な、志村さんそれがどういうものか分かってるんですか!使い続ければ命に関わるかもしれないんですよ!」
彩音が声を荒らげる。
「それがどうしたというのです。わたしはお嬢様に認められなければならないのです、そのためには力が必要なんです、力さえあれば、力さえあればお嬢様に認めて貰えるのです!あなた方にはその礎となって頂きましょう!」
大吾が腕を振り上げ力強く言い張る。
「いや意味分かんないし、強いから沙紀絵に認めて貰えるて何があったんですかあなた達、元々あなたと沙紀絵は仲が良かったはずですよね?」
美羽羅が聞く。大吾は元々こんな追い詰められたような性格だったろうか。
「今は昔とは違う、お嬢様は近頃頻繁にわたしに隠れてどこかへ行っている、どこへ行くのかと何度も聞いた、それなのにお嬢様はお前には関係ないといい何もいってくれない、わたしは悲しい!お嬢様はいつも何かあるとわたしを頼ってくれた、けど今のお嬢様はそうではなくなった、だからわたしは自分のこの強さを見せつけてお嬢様が頼ってくれる昔に自分に戻るのです!」
「あの、大吾さん、それって多分あなたが頼りないてわけじゃなくて……」
沙紀絵は大吾頼りないと思ってるのではなく魔法使いとしての戦いに彼を巻き込むまいとしてるだけだと彩音が言おうとするが司に肩に手を置かれ首を振られる。
「無駄だと思うよ、こういうのは」
「なんていうか、ちょっと大きなショック受けて頭がいかれちゃったみたいな。ま、倒すしかないって感じ?」
美羽羅も髪をいじりながら言う。
「知り合いだからって容赦はしてらんないか」
彩音も腹を括る。




