二十六話 魔導システムの作り手ルシフェル・エルナンテ
司達の目の前に現れた新たな人物は長身にたわわな胸を蓄え褐色の肌に尖った耳、アップに結い上げた黒髪に黒の楕円形眼鏡、ボタンの上を開けた黒いシャツと黒いスカートに白衣というエキゾチックな出で立ちの女性だった。
「全く、本来の用を忘れて楽しく談笑とはな。天使というのは無駄な行動が多い種族なのか?」
女性が眼鏡の鼻部分に指をかけアリエルを侮蔑したように言う。
「年上とはいえ後輩にとやかく言われたくないんですが」
アリエルの目が嫌悪を示すものになる。
「ほう、貴様らが例の天使と魔法使いか」
司達を舐め回すように一瞥する女性。
「ルシフェル・エルナンテだ、お前達の変身用デバイスを作ることになっている」
女性が名を名乗り司に右手を差し出す。だが司は動かない。
「どうした?」
「あ、いえ、ルシフェルさんて悪魔なんですか?」
ルシフェルは名前も特殊だが彼女が有する独特の雰囲気をまとっていた。
「悪魔とは手を結べんか?」
「その前に聞かせてもらおう、悪魔が魔導システムを作れるという話は本当か?」
ルシフェルには答えずアマツカが質問を投げる。
「魔導システムを作るのはこの世界でいえばコンピュータ機器をプログラムを作って組み立てる程度のことだ、ある程度の技術力があれば製造可能だよ。それに私は魔界でも名のある技術者だ。
その私が新たな魔導システムを作ってやろうと言うのだ。どうだ、悪い話ではないだろう?」
「あの、わたし今魔導システムを持ってなくて……一から新しいのを作ることも出来ますか」
美海が恐る恐る聞く。
「出来るぞ、なんならお前用にカスタマイズしてやろう」
難なく答えるルシフェル、その言葉は本当に彼女魔導システムを作れるという真実を裏付けてるかのようだ。
「美海ちゃん?」
「おい、お前には魔導システムは使えないんじゃなかったのかよ」
以前聞いた美海が魔導システム使い魔獣を倒しそこねたという話を持ち出す周囲の者達。
「確かにあの時のわたしは魔獣を倒せませんでした。けど、李梨花さんやお姉様があんな目にあってるのに自分だけ何も出来ないなんて嫌なんです。もし出来るならわたしも前に出て二人のために戦います!」
美海は自分の無力さを嘆きながらも力を求める。
「ふむ、話を聞く限りお前は前線に出るより回復や防御など支援型に特化したタイプにするのが良さそうだな」
ルシフェルが美海用の魔導システムの開発案を思考し始める。
「な、そんな細かい調整出来るんですか?!」
司が魔導システム開発の実態に驚く。
「出来るぞ、攻撃型や支援型の他に遠距離用や近距離、ブレードやランス、高速戦闘用や重装備型、あとは……まあ色々細かく決められるからな、好きに選べ」
ルシフェルが自慢げに喋りだす。
「テンザが出てきた以上これから戦いが激化することは間違いない、そのためにも戦力は多い方がいい。この際だ、こいつも数に入れた方がいい」
アマツカが冷静に言う。
「僕もそう思う。それに本人がやりたいて言ってるんだ、可能性があるならやってみる価値はあるよ」
アマツカに同意しつつも独自の考えで美海を後押しする司。
「おい司、いいのかよ」
「美海ちゃんを危険に巻き込む気?」
美海の身を案じる彩音と沙紀絵。
「全く、とんだクソ保護者共ですね」
「アリエル?」
「それ、どういう意味?」
アリエルが突如彩音達に噛み付く。
「子供ってのはね、守られるだけじゃないんですよ。時には無茶するかもしれない、そういうのを助けながら応援するのが親ってもんでしょ。子供の挑戦を妨げるなんてどうかしてますよ。仲間でもそれは同じです」
「ホント気にいらないわねあんた………」
「それは、そうだけど……」
アリエルの言葉に反抗的な態度を見せながらも言い返せずにいる彩音と俯くしか出来ない沙紀絵。
「ふぉっふぉっふぉ、わしは構わんぞ。孫が二人揃って魔法使いをやれるんじゃ、こんな嬉しいことはないぞ」
水吾郎が口を開く。
「おじい様!ありがとうございます!わたし、頑張ります!」
水吾郎に感謝を述べる美海。
「水吾郎さん!?」
「いいのかよおい」
「面白いから許可する。好きにせい!」
ズバリ言い切る水吾郎。
「これで決まりだな。これからお前達のものも新しく作り直す、各自要望を言いたまえ」
ルシフェルがいよいよ話の本筋を持ち出す。




