二百五十四話 イービルクイーンの本当の姿
クイーンの柔らかい皮膚に当たって中から青い体液が出る。
クイーンが額から垂れてきた体液を舐める。
ゾクッとした。これから悪いことが起きるようなそんな予感が…………。
「人間のくせにようやりおるわ。なれば、我の本来の力を見せる時じゃのう…………」
本来の力、もかして魔界を壊しかけたっていうあの…………。
「はぁー」
クイーンの体からすごい量の魔力が放出される。
「アマツカ?」
僕は心なしかアマツカの背中が震えてるように見えた。
「ヴァミラお前、震えてるのか?」
豊太郎がヴァミラを見て言う。
「そうか。こいつらは無意識にイービルクイーンの本性を感じっといるんだ、それほどにやつの力は凄まじくなってるんだ」
悠が言う。
動物の本能てやつかな。
「なにが本性だ、関係ねえ!今の内にぶっ飛ばしてやるぜ!」
「ちょっと沙希絵!」
沙希絵さんがそんなクイーンの力を感じてるのか感じてないのか斬りかかっていってそれを梨李香さんが呼び止める。うん、どっちにしろ馬鹿だね。
「うわっ!」
弾かれて戻ってきた。
「なにやってんのよー」
「いいじゃん、パワーアップするならする前に倒した方がいいんだし」
「そういうもんじゃないっての」
「みんな見て」
さなえが指さすとクイーンの姿が変わっていく。今までの女の子の体型から大人の女の人になってドレスから硬い黒い皮膚に青い筋のある姿に変わる。柔らかい肌は薄い青色、手足も今までの体と不釣り合いの大きさのものから体と一体化した細身のものになる。顔には黒い仮面、頭には角、髪は長い銀色、背中には大きなコウモリの翼が左右三枚ずつあった。
「滅べ、ゲシュトアルト!」
クイーンが凄まじい量の黒いエネルギーを飛ばしてきた。速い、かわせない!
『うわー!』
僕達はクイーンの攻撃をまともに食らって吹っ飛んで行った。
「ぐ…………」
「なんだ今の、バケモノとかそういう次元じゃねえ!」
食らった攻撃の威力の大きさに驚いた。今までの攻撃の比じゃない。
「さしずめ魔王と言ったところかしら、人の世界には絶対にいない異界にすら脅威をもたらす魔王…………!」
僕は改めてイービルクイーンを見る。あれが僕の父さんと母さんを殺したやつの姿……………。
アマツカが腕を出して僕を止める。
「大丈夫だ、お前の仇は俺達が取る」
そうか、僕は気づかない内にクイーンの方に向かってたんだ。
「恐ろしいか我の姿が。殺したいか、我を。なあ、天使よ?」
クイーンが僕を見る?なんだろう、僕の中から何か嫌なものがこみ上げてくるような………………。
「取り込まれるな司!やつはお前のトラウマを抉って楽しんでるだけだ!」
アマツカの声が響くけど心には響かない。恐い、死にたくない、父さんと母さんみたいになりたくない…………。
「はあ、はあ…………」
気がつくと息も荒くなってきた。
ガシッ。
肩を急に掴まれてビクっとした。振り返ると梨李香さんがいた。
「大丈夫よ、司にはあたし達がいる。司はあたし達が守る」
「梨李香さん…………」
「司、恐いなら逃げてもいいんだぞ。無理に戦う必要はない」
アマツカが言う。
「いや、戦うよ。みんなが頑張ってるのに僕だけ逃げるわけにはいかないから」
さっきまで震えてた胸が少しだけ落ち着いてきた。
「わたし達は負けません。司も絵里香も、みなさんも守りきってみせます」
「うん、わたし達も頑張るから!司は後ろで応援してて!」
アンジュリアンさんと絵里香ちゃんが僕達を励ましてくれた。
「俺達と同じ後ろでモンスターを応援してるだけだ、気にすんな」
豊太郎が言う。
「戦うと決めたのはお前だ、やるからには全力で行くぞ」
悠が力強く言う。
「うん!」
僕は絵里香ちゃん、豊太郎、さなえ、悠と一緒にMギアをかざす。
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