二百五十話 安剛健三郎との決着
安剛の後ろに出てきて左手から黒い腕を出して振り下ろす。
「なにっ」
安剛が気づいて急いで防御する。
彩音がぼそぼそと何か呟くと魔法陣が出てきてそこから弾丸が発射される。
「くっ」
安剛が弾丸に吹っ飛ばされる。
「なぜここまでの力を出せるのです。装置の影響を受けてるはずなのに………」
安剛が沙希絵や彩音の戦いぶりに驚く。
「魔法使い舐めんなし、これくらい普通だろ?」
沙希絵が言う。
「魔力とはそこにあるものじゃない、常に生み出すものだってね」
「水吾郎さんそんなこと言ってない」
わたしは彩音の捏造名言に苦言を呈した。
「今考えた、実際そうなんだしいいでしょ」
「確かに、魔力は自分で作れるもの」
「いいでしょう。たとえあなた達がこの状況で戦えるとしても性能の差は埋まりません」
安剛が手から魔力の弾を発射して彩音が鎌でそれを弾く。
『なあ、それ俺達でも出来るか?』
合宿の時魔導の話をした水吾郎さんに豊太郎はこう聞いた。
『魔力は魔法使いでしか持てないからのう、お主達では使えるかどうか…………。いや、待てよ?Mギア、とか言ったかの。あれの力ならばあるいはお主らも魔力と同じようなことが出来るかもやしれぬ』
わたしはMギアをかざして心に氷河とそれが乗る海を描いた。
「ガルム、行ける?」
わたしはガルムに声をかける。
「さなえがそう言うなら」
ガルムが素早く動いて安剛に噛み付く。
「離れろ、このケダモノ!」
安剛が腕を振り回すけどガルムはがっちり歯を腕に食いこませて離れない。
わたしはMギアに力を込める。
「ひいっ、腕が、腕があっ……………!」
ガルムの口から冷気が発生して安剛の体を腕を中心に凍らせていく。
「もういい、下がって」
体半分くらい凍らせたくらいでガルムを引かせる。
「く、体が思うように動かない…………」
「炎が欲しけりゃくれてやるよ!」
今度は腕から炎を出した沙希絵が安剛を殴りつけるていく。
「うおぉぉぉ!」
沙希絵のパンチが何度も安剛にぶつかって安剛の氷を割っていく。最後に大きく振りかぶって強い一撃を当てる。
そこで沙希絵の腕が掴まれた。
「ふふ、まさか同じ手に二度も引っかかるなんてねえ…………」
「そんな」
「沙希絵、今助ける!」
ガルムが沙希絵のところに行く。
「バーカ、引っかかったのはてめえだよ」
「え?」
安剛とガルムの動きが止まった。
沙希絵が笑っている。どういうこと?沙希絵は今片腕を掴まれて不利なはず。
わたしが不思議に思ってると安剛に鎖が巻きついてきた。
「とったー!」
安剛の後ろで彩音が鎖の先を持っていた。
「なにっ!体が動かない!」
安剛は体を揺らすけどガシャンガシャン鎖の音がするだけ。脱出には至らない。
「ライフドレイン!」
彩音が叫ぶと鎖を通して青白い光が彩音に流れていく。
「なんだ、力が、抜けて、い…………く……………」
しばらくすると安剛がだんだんまぶたを閉じていってとうとう地面に倒れてしまった。
すると彩音は手に大きな魔力の塊を出してきた。
「じゃ、これをこうしてドーン!」
その塊は魔力や生体エネルギーを吸う機械にぶつかって粉々に破壊した。これで彩音達が動きずらくなることはない。
「しゃあっ!やったぜ!」
「いえーい!」
沙希絵と彩音がハイタッチする。
「ガルムちゃんも」
「あ、ああ」
ガルムともハイタッチをする二人。
こっちにも来た。
「ラスト、さなえちゃん 」
わたしも無言だけど彩音のハイタッチに合わせて手を出す。
「いえーい!」
彩音とハイタッチしたわたしの手を勢いよく叩いてくる沙希絵。痛い、手がジンジンする。ハイタッチっていうかこれはただ叩いてるだけ。
「すげえよお前ら、魔力を吸われた状況で安剛を倒すなんてよぉ」
安剛以外の敵魔法使いの相手をしていた加藤が言う。一応味方なんだけど見た目がカエルみたいで気持ち悪い。
「君達みたいについこの間魔法使いになった人とは違うの。ちゃんと魔法の使い方も教わってるんだよ」
「それ今度俺にも教えてくれよ」
「この戦いが全部片付いたらね」
★★★★★★★★★★
悠side
「はぁー!」
テンザがパイルバンカーの杭を高速で出し入れし有島が円盤型の武器、チャクラムの面を使い防御する。
チャクラムのサイズのおかげで攻撃が体に当たることはないが体力はかなり消耗している。
「先ほどの勢いはどうしたんです?このままじゃわたしがあなた方を一人ずつ殺してしまいますよ」
テンザが挑発するように言うが城野もレオパルドも装置の作用でまともに動けずにいる。
「ふん、慌てなくても冥府に行くのはあなた方よ、我が深淵なる力であなたを葬ってあげる」
有島もこう言うがこいつだって装置の影響を受けてないわけじゃない、かなり無理してる状態だ。
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