二百二十四話 ターゲットは護衛と共に
司side
「はい、唯の家に到着よ。正確には唯のお祖母さんの家だけど」
矢野さんが目的地についたことを知らせる。唯ちゃんてお母さんが亡くなったらしいけどお父さんもいなかったんだね。
車から降りると鬼龍さんがいた。鬼龍十一、十一と書いて”とおいち”って読む。魔法使いの衣装をまとっていていつでも戦える状態だ。
「十一さん、お久しぶりです!」
僕は十一さんに挨拶する。
「久しぶり、か。最近では魔法使いやお前の学校の友人が組織に出入りするようになってわたしと話すことなどなくなってしまったな」
十一さんが哀愁を漂わせながら言った。
「それは………ほんとごめん」
前は梨李香さんも入れてよく三人で動いてたっけ。あの時がずっと昔に思えるよ、てか…………僕女の子と絡み過ぎじゃない?美海ちゃんとか沙紀絵さんが仲間になってから組織ではずっと魔法使いの女の子とばっか仲良くしてるし豊太郎とはプライベートだけの付き合いだし悠と再会したのも最近だしほんと、なんで僕女の子とばっか仲良くしてるんだろ。
「今度ゆっくり茶でも飲もうか」
「はい!」
「あ、この人鬼龍十一、僕達魔法使いの組織の人なんだ。唯ちゃんの護衛をやってくれるんだって」
僕は唯ちゃんに十一さんを紹介する。
「相原唯です。今日はよろしくお願いします!」
「屋内にもう一人いますが今日は彼と一緒に全力であなたをお守りしますのでどうぞご安心を」
「はい、ありがとうございます!」
「おいおいおい!気流だが水流だか知らねえが唯に勝手なことしたら許さねえからな!」
豊太郎が唯ちゃんと十一さんの間に割って入る。なんかお気に入りのおもちゃが取られるんじゃないかて怯えてる子供に見える。
「するわけないだろう、仕事なんだから」
なに言ってんだ感じの十一さん。
「司、君の友人はなぜこんなに興奮してるんだい?」
十一さんが聞いてくる。
「あ、気にしないでください、こいつ相原唯の熱心なファンなんで」
僕は豊太郎を引きはがす。
「ほら、行くよ豊太郎。僕達も家に帰るよ、十一さん後はお願いします」
「ああ」
「あなたが豊太郎の昔の仲間………」
さなえが十一さんを見る。
「君は確か藤田さなえだったか、どうした?わたしに興味でも出たか」
「特にない」
さなえはすぐにきびすを返して車に戻っていく。
「じゃ、わたしも一旦本部に戻るから後よろしく」
彩音ちゃんも十一さんに挨拶する。
「ああ」
★★★★★★★★★★
唯はポストの中身を確認する。封筒とダイレクトメールがあった、封筒には宛名がなくただ緑色をしているだけだった。
十一と共に家に中に入ると祖母が出迎える。
「おかえりなさい唯ー!聞いたよ、ライブ大変だったねー!」
「心配してくれてありがとうおばあちゃん。でも大丈夫、友達が助けてくれたから」
「あーそうそう、うぃざなんちゃらて人が来てあたしらを守ってくれるって言うんだよ。よかったよ、これで安心して暮らせるの」
唯の祖母の顔が十一と同じ衣装の男に向く。三十代の屈強な肉体を思わせる姿だ。
「相良です、本日はよろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「おばあちゃん、郵便着てたよ」
相良との挨拶を終えダイレクトメールを祖母に渡す唯。緑の封筒は後ろ手に隠して見せないようにした。
「相原さん、爆発物の恐れがあるので私が確認します」
相良が唯の祖母からダイレクトメールを預かる。
「おー、助かるのー」
離れた場所に移動し封筒を開ける相良。
「爆発物ではなさそうです」
「ほんとにただのダイレクトメールか、つまらんの。捨てていいぞ」
「あ、はい」
言われるがままダイレクトメールをゴミ箱に入れる相良、その際に住所の部分を破くのを忘れない。
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