二百十九話 アイドルを探せ!
「はい、帰りのホームルーム終わりよ。掃除やって寄り道なしで帰りましょう」
担任の先生がホームルームの終わりを告げる。終わりの挨拶とかないよ。
先生の言葉が終わると同時に豊太郎が荷物を持って走り出した。
「ちょっと二宮くん?!」
先生が豊太郎を呼ぶ。
教室から消えた豊太郎、静まりかえる教室。僕を含めクラスのみんなはこう思っただろう。いや、掃除してけよ……………!てね。
★★★★★★★★
掃除も終わり放課後、僕はクラスメイトと一緒に豊太郎の言っていた大見え橋の辺りに行っていた。みんな一緒てわけじゃなくて相原唯を探すために手分けして探している。肝心の豊太郎は見当たらない、もうここに来て唯ちゃんがいなかったからよそに行ったのかな。
「うーん、この辺りにはいないなー」
彩音ちゃんが周りを見渡けど唯ちゃんは確認できない。
「司、司はどこにいると思う?」
さなえが言う。
「うーん」
僕は考える。朝この橋にいたってことは何かこの橋に目的が縁があったってことだ。てことは、またここにいてもおかしくはないってことだ。
でも橋の上にはいない、じゃあどこに……………。僕は欄干から下の方を見る。やっぱりいない。うーん…………。
「ちょっと司くん?」
「落ちるよ?」
二人が止めるけど構わず欄干に登る、そして体を曲げてさっきより橋の真下に近いところを見る。あ、いた!唯ちゃんかは分かんないけど女の子が体育座りしてる。
「うわっ」
僕は足を滑らせて橋から落ちそうになってしまった。彩音ちゃんとさなえがガシッと僕の足を掴んで下に落ちるのを阻止する。二人に引っ張られて橋に戻ってくる。
「ふう………危機一髪」
僕は額の汗をぬぐう。危うく死ぬかと思った。
「それはこっちのセリフだよ!もう、なにしてんのさ君は!」
彩音ちゃんが怒って言う。
「小学生の真似はいけない」
さなえが言う、確かに小学生に見えなくもないかな。
「いやー、橋の下の方に唯ちゃんいないかなーて、あはは………」
僕は笑ってごまかす。笑ってはいるけど空笑いて感じだね。
「はあ……………。で、唯ちゃんは見つかったの?」
彩音ちゃんがため息をついて聞いてきた。
「唯ちゃんかは知らないけどそれっぽい子はいたよ」
「じゃあ下に降りて確かめてみよっか」
というわけで橋の端っこの方から橋の真下に移動する。
「ねえ、あれじゃない?」
彩音ちゃんが僕がさっき見たと同じ川原に体育座りでたたずむ女の子を指差す。
「間違いない、相原唯だ」
さなえが言う。ここへ来る前にクラスのみんなで図書室のパソコンを拝借して顔を確認してるから人違いということはない。
「どうする?話しかける?」
彩音ちゃんが何故か後ろから言ってきた。
「話しかけるって誰に?」
さなえが反応する。
「だから唯ちゃんに」
「彩音ちゃんは唯ちゃんと話さないの?」
彩音ちゃん急に何言ってんだろう。
「いや、だって………」
彩音ちゃんはためらって理由を言わない。
「なに?何かあるなら早く言って」
さなえが怒ったように言う。さなえは彩音ちゃんに対する怒りの沸点が低いんだ。
「だってアイドルだよ?本物の、話しかけるとか無理でしょ」
あー、そういうこと。
「司、どう思う?」
さなえが僕に振ってくる。
「別に僕はそういうのはないかな」
ステージの上ならともかく今のあの子は普通の女の子にしか見えないし。
「じゃあ行こう」
前に進むさなえ。
「あ、ちょっとー、待って………」
彩音ちゃんは先を行かれて手を伸ばす。このくらいの距離なら離れても大丈夫かな。




