二百七話 姿消す道化師ピエロッサクラウン②
「てめえ、卑怯だぞ!姿を現しやがれ!」
豊太郎が叫ぶ。
「なに、卑怯もかんぴょう巻きもありませんよ」
という返事が返ってきた。そこはらっきょうじゃない?
「ガルム!」
さなえが叫ぶ。今度はガルムの上だ。
「分かっている」
ガルムは前に移動して回避して振り返った。
「フリージングブレス!」
ガルムの口から冷気が飛んでピエロッサクラウンにまとわりつく。
「な、なにいっ」
彼は慌てるがもう遅い、その足にはもう氷がまとわりつき地面にへばりついている。
「う、動けません!」
困ってしまうピエロッサクラウン。
「今だアマツカ!」
「ああ!」
アマツカが上に飛んで光の矢を構える。
「エンジェリックアロー!」
光の矢がピエロの人めがけ飛ぶ。
「う、うわぁぁぁぁ!」
悲鳴を上げるピエロッサクラウン、巻き起こる爆発、やったか?
「なーんちゃって」
『え?』
そこにはトランプをたくさん出してアマツカの攻撃を防いでいたピエロッサクラウンがいた。そんな、効いてない!
「はぁぁぁぁ」
気合いと共にピエロッサクラウンの足にオーラが溜まっていく。
「はあっ」
最後に一喝、するとピエロッサクラウンの足元の氷がバキィンという音と立てて割れてしまったんだ。
そしてピエロッサクラウンが消える、次に現れたのはアマツカの前だ。目の前に敵がいるのにアマツカはとっさのことで反応出来なかった、ピエロッサクラウンの蹴りを受けて僕のところに吹っ飛んでしまう。
「大丈夫?アマツカ」
僕はアマツカを受け止める。
「ああ、なんとかな」
「面倒になったな」
悠が呟く。
「面倒って?」
「あの姿を消す技をどうにかしない限りやつには勝てない。だが攻撃を回避し動きを止めたところで攻撃を防がれてしまう打開するには難しい状況だ」
向こうの攻撃は当たりほうだいなのにこっちの攻撃は全然当たらないて嫌な敵だね。
「そんなこといいから早く遥香を返せ」
なんであそこからそういう台詞になるの?!こいつ頭いいように見えて実は遥香ちゃんのことしか考えてないの?!
「嫌ですよ、彼女は大切な客人ですし」
だめだよ、さっきから言っても遥香ちゃん返すって言う気ゼロだから。
「なら死ね、レオパルド!」
悠が命令を出す。
「ちょっと!そんなことしたら遥香ちゃんの居場所聞けなくなるでしょ!」
僕は慌てて止める。
「そんなん知るかー!いいからそいつ殺せレオパルド!」
もうだめだこいつ。
レオパルドは悠の命令でピエロッサクラウンに襲いかかる。悠の迫力にダメージを追うピエロッサクラウンだけど腕でとっさにガードする。けどレオパルドの勢いは止まらない、次々と攻撃を繰り出してダメージを与えていく。
「とどめだ、レオパルドガンナーで決めろ!」
「イエス、マスター!」
レオパルドの口にエネルギーが溜まっていく。ちょ、これ完全に倒しちゃう流れじゃない?このままじゃほんとに遥香ちゃん返ってこないよ、いいの?
いよいよとどめか、そう思えた時ピエロッサクラウンの腕がバッと伸びた。
「マジックボックス!」
そう叫ぶとレオパルドの足元からマジックとかで剣を刺してく箱のようなものが出てきてレオパルドがその中に入っちゃったんだ。
もしかしてマジック?今からマジックやるの?ちょっとワクワクしてきた。
そしてピエロッサクラウンの手がスッと上に伸びる。
「イッツショータァーイム!」
掛け声と共に指が鳴ると箱の周りにナイフにしては大きめの剣が出てきて箱に次々と刺さって行った。
その光景にさなえが目を反らして絵里香ちゃんが口元を両手で抑える。正直僕から見ても見るに耐えない状況だ。
「グオォォォォ!」
箱の中からレオパルドの悲鳴が聞こえる。
「レオパルドー!」
悠が叫ぶ。さっきの箱の中にレオパルドがいたということはレオパルドは箱に刺さった剣の餌食になってしまったということなんだ。あの悲鳴にあの剣の量、中にいるレオパルドはひとたまりもないだろう。
役目を終えた箱は姿を消して中にいたレオパルドが現れる。その姿はやっぱり痛々しくて硬い装甲のあちこちにはヒビが入っていた。
「レオパルドー!」
悠がまた叫びレオパルドのところに走ろうとする。
「駄目だ悠!今いけば君もやられる!行っちゃだめだ!」
僕は急いで悠を止める。
「でも、このままじゃレオパルドが………」
「だから駄目だって」
悠が前に行こうとするのを必死に止める。もう、遥香ちゃん返せって言ったりレオパルド心配したりさっきからなんなのさこの子は。
アマツカが僕達をかばい前に出るけど攻撃を仕掛けようとはしない。いや、アマツカだけじやない。ヴァミラとガルムもピエロッサクラウンをにらむだけで動こうとはしない。違う、動かないんじゃない、動けないんだ。さっきレオパルドにダメージを与えた箱、あれに閉じ込められればあいつらもただじゃ済まない、だから動けないでいるんだ。
「おやおや、恐くて足が震えちゃいましたかぁ?」
ピエロッサクラウンが馬鹿にするような笑みを浮かべる。
「馬鹿にすんじゃねえ!ヴァミラ!てめえの本当の力を見せてやれ!」
豊太郎が激を飛ばす。
「おおっ!」
ヴァミラが飛び立つ。
「アマツカ、僕達も行こう。今は止まってる方が危険な気がする」
僕は前にいるアマツカに話しかける。
「いや、お前は残れ。やつの力が脅威的な以上誰か一人は生身の人間を守れる状態にした方がいい」
「分かった」
僕が魔法天使の姿に変身して残りアマツカがヴァミラを追って飛ぶ。
「同時に仕掛けるぞ!」
「分かった!」
アマツカとヴァミラは空から火炎弾や光の矢を飛ばしていく。でもその攻撃をピエロッサクラウンが右へ左へ踊るように避けてしまう。力や守りだけじゃない、スピードも圧倒的だ。
ピエロッサクラウンのナイフを指の間に構えて投げていく。ヴァミラとアマツカは攻撃どころじゃない。ああっ、どう攻めればいいの?二体は相手の攻撃を避けてる内にピエロッサクラウンに蹴り落とされてしまう。
「ヴァミラ!」
「アマツカ!」
隙を少しでも見せたらさっきの箱にやられる。ピエロッサクラウンが両手を広げる。あのモーションはもしかして…………
「マジックボックス!」
予想した通り黒い箱が二体を包み込んだ。まずい、やられる………。
「ガルム!」
さなえが叫ぶ。
「任せろ!」
ガルムが黒い箱に体当たりを仕掛け箱を破壊する。中から出てくるアマツカ。
「やった!」
僕は思わずガッツポーズをした。
「よし、ヴァミラの方も頼むぞ!」
豊太郎が叫ぶ。
「させません!」
ヴァミラの箱の周りにナイフが出てくる。けどガルムのが速い、ヴァミラの箱も体当たりを受けて破壊される。
「ふー、あぶねえあぶねえ」
安心感からため息をつく豊太郎。
ガルムの活躍にさなえが無言で親指を立てる。
「やりぃ!ばーかばーか!あっかんべー」
絵里香ちゃんが舌を出してピエロッサクラウンを馬鹿にする。君は何もしてないけどね、モンスターいないし。
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