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魔導奏者りりかさん  作者: 兵郎
十七章 GW特別合宿
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二百六話 姿消す道化師ピエロッサクラウン!



「おやおや、みなさんお楽しみのようですねえ」

僕達の前に紫色の衣装に肩に顔の上下が逆になった仮面をつけたピエロが出てきた。


「お前は………」

「そうだ、あいつは………」

「司くんの部屋に飾ってあった絵の人!」

絵里香ちゃんが声を上げる。合ってるけど表現としては何か違う!


「なんです?それは」

ピエロの人もわけがわからないて感じになってる。


「そうじゃなくて!名前だよ名前!えっと確か………、ピエロッサクラウン!」

僕はピエロッサクラウンを指さす。


「ほう、よくご存知で。どこで私の名を?」

「君、ここじゃ有名人だよ。人を誘拐したり殺したりしてるって噂になってる」

「ほう、それは少々興が過ぎましたね」


「戯言はいい。お前、妹をどこにやった?妹は無事なんだろうな?」

悠が彼に聞く。


「ええ、元気ですよ。あなたが来ればもっと元気になりそうですが」

「黙れ、妹は返してもらうぞ」

そう言って悠がMギアを構える。


「レオパルド!」

「分かっている」

構えるレオパルド、ガルムやヴァミラ、アマツカも同様だ。悠にならって僕達もMギアを取り出す。


『召喚!』

僕達の声で背が伸びたり大きくなるモンスター達。絵里香ちゃんだけMギアは出してるけどまだモンスターがいなくて戸惑ってる。


悠がレオパルドをけしかける。ピエロッサクラウンはそれを後ろに飛んで回避、そこへヴァミラの爪が飛んでピエロッサクラウンにヒットする。


「流石は魔界の抑止力とも言うべきモンスター、中々のダメージです。ですが!」

ピエロッサクラウンが手を上にかざすとたくさんのトランプが出てきた。彼の手が前を向くとトランプがヴァミラとレオパルド目掛け飛んでいく。


『うわぁぁぁぁ!』

こっちに吹っ飛んで来る二体。


「大丈夫か、ヴァミラ!」

「やはり一筋縄ではいかんか」


「あれ、あたしのMギア光ってる、なんだろうこれ?」

絵里香ちゃんが自分のMギアを見回す。

「何か起きるの?」

「さあ?」

さなえが絵里香ちゃんに呼びかける。


「ねえ、君は遥香ちゃんを連れ去って何を企んでるの?」

僕はピエロッサクラウンに聞いてみた。


「崇高なる魔界の理想郷、と言いましょうか。そのためにも五十嵐遥香という現実と理想の乖離がある若い少女が必要なんですよ。彼女はきっと我々の力になってくれます」

だめだ、何を言ってるのかチンプンカンプンだ。


「ねえ、あの人なんて言ってるの?」

絵里香ちゃんが聞いてきた。

「僕だって分かんないよ、魔界の理想郷てなにさ」

でも我々て言ってたよな。


「暗黒ジャグラーズて聞いたことあったな、確かキングオーガがそんなこと言ってた」

豊太郎の言葉にあ、と言う音が僕達から漏れた。絵里香ちゃんだけがピンと来てなかったけど。キングオーガてのはアンダーウィザーズの元首領で彼を倒す時に悠が暗黒ジャグラーズて名前を聞いたんだよね、人間の少女をさらった魔界の集団の名前てことみたい。


「ほう、そちらの名前もご存知でしたか」

「ピエロッサクラウン!てめえはいや、てめえらは何を企んでやがる!だいたい、理想郷てなんだ!分かるように言いやがれ!」

豊太郎が彼に問う。


「我々の理想郷、それはモンスターの理想郷!」

そう叫ぶと同時にピエロの人がバッと両手を広げる。


モンスターの理想郷?なにか変だ。

「なあ、そもそも魔界てモンスターのいる世界じゃないのか?」

豊太郎が聞き返す。だよね、モンスターの世界なのにモンスターの理想郷作るとかおかしいよ。


「確かに。ですがそこは我々モンスターにとって住みやすい世界ではないのです」

ピエロの人がおでこに指を当ててうーんて悩むポーズを取る。


「どういうことだ?」

「魔界には何か我々にとって不都合なことでもあるのか?」

ヴァミラ達も反応する。


「恐らくあなた達は魔界でもまだ影響のないところに住んでいたのでしょう。しかし、今魔界は亜人達が大陸を席巻し我々モンスターの住処を奪おうとしているのです」


「亜人?」

それは僕もマカイターミナルで知ってるので解説する。

「亜人てのは人みたいな姿してるけど動物の耳やしっぽがついてたり龍の角や羽が生えてる人達でいわゆる獣人や竜人て言われたりするね。エルフもその中に入るのかな」


同じくマカイターミナルを持ってる悠が続ける。

「普通ゲームや漫画だと俺達の世界の中世や近世の文明レベルでしかないがあっちのは俺達と何ら変わりない町を持ってる連中もいるらしい」


「で、その亜人さん達がどうしたの?環境破壊でもしてるの?」

絵里香ちゃんが言う。確かに僕達と同じ文明の人達ならやってもおかしくなさそう。


「その領域にはまだ達してませんが少なくとも侵略行為は幾度もなされてるんですよ、悩ましいことに」

やれやれという感じに体の横で手を広げるピエロの人。異世界も人間界も人間が自然にとって悪さしてるのは変わんないんだね。


「くだらん理由だな、第一お前が他のモンスター達の味方という保証もない。妹は返してもらうぞ」

急に悠が話を元に戻したせいで脈絡ないこと言ってるように見える。


「はあ、私達の崇高な目的を分かってくれると思ったんですが残念です」

ピエロの人がため息をつく。すると彼の姿が消えた。


「消えた?」

「どこだ!出てこい!」

混乱する僕達。


「ここですよ」

ピエロッサクラウンが出現した。

「ヴァミラ、後ろだ!」

豊太郎が知らせる。

「後ろか!」

ヴァミラが振り向く。

「遅いですよ」

ヴァミラが振り向くより速くピエロッサクラウンの蹴りが飛ぶ。

「ぐあぁぁぁ!」

吹っ飛ぶヴァミラ。


「また消えた!」

今度はどこだ、どこから来る…………。

「レオパルド、右だ!」

悠が叫ぶ。

「ふん!」

今度は反応する暇もなく膝蹴りが飛んで吹っ飛ばされた。


また姿を消すピエロッサクラウン。

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