二百二話 ババ抜きと梨李香達の戦う理由
梨李香side
夕食後、あたしは同じ部屋の彩音や奈々子と寛いでいた。
「そういや彩音あんた沙紀絵と一緒にいなくていいの?」
あたしは彩音に聞いた。
「別に沙紀絵ちゃんとはいつも一緒てわけじゃないよ、バラバラでいる時もちゃんとあるって」
彩音が手を振って否定する。ふーん、金魚のフンみたいのとは違うのね。
「でもあの忌々しい天使とはまだ一緒に暮らしてるらしいじゃない」
奈々子があたしのポテチを食べながら言った。天使てのは多分司のことね、大分失礼な呼び方してるけど。
「ちょっと」
「いいじゃない、一晩全部食べるわけじゃないんだから」
勝手に人のお菓子食べといて悪びれもしないとかなんか腹立つー。
「それは…………はあ…………」
奈々子に聞かれた彩音は答えに窮する。
「なによ、何か事情でもあんの?」
あたしも気になって聞いてみた。
「大方あの天使を好きになって家を出たら離れ離れになるってのが嫌なことかしら?」
奈々子が答えを予想する。
「いや、それはないっていうか………」
何か煮え切らないわねー。
「じゃあ何よ?」
「実は………」
彩音は司に家に居候してるもう一人の女の子、須藤真奈美の話をしだした。なんでもその女の子は司とは家事で忙しくて普段はあまり遊べてないんだとか。その寂しい思いをしてる真奈美ちゃんだけど彩音が来てから彩音に構ってくれるようになって笑顔も増えたんだとか。
「その笑顔が可愛くて可愛いてもー、離れたくないの!もう真奈美ちゃんと離れ離れとかいやっ!」
とか彩音は言ってる。
「なにかしら。この悪魔、何かとても下らないものを見た気がするわ」
奈々子が言う。
「ええ、まったくしょーもないわね」
「しょーもなくないし!とても大事な問題よ!」
彩音はこう言い張るけどやっぱりしょーもないわね。はあ……………、くっだらな。
「あなた達、暇?」
美羽羅が部屋の扉を開けて顔を出してきた。特命係にしょっちゅう出入りしてる生活安全課の人みたいね。
「暇だからこうしてくっちゃべってるんでしょうが」
「ならババ抜きでもしない?」
トランプの箱が部屋に見えた。
「おじいちゃんも考えものよねー。戦う理由なんてなんでもいいじゃないもー」
ババ抜きの最中美羽羅が口を開く。
そして美海からカードを抜き取る。
「チッ、外れじゃないこれー」
捨てられるカードはなかったみたいね。
「正直急に変えろと言われても難しいです」
今度は美海があたしからカードを取る。
「あ、当たりです、やりました!」
捨てられる10のスペードとハート。ち、他のやつの手札が減ると普通に悔しいわね。
「はっ、敵は倒す、テンザだろうとアンダーウィザーズだろうと関係ないわ。あたしは自分の家族を殺したやつらに必ず復讐してやるんだから」
あたしは奈々子からカードを取る。ダイヤの5か、えーと………5、5、あったハートのやつね。あたしは二枚のカードを捨てる。
「それは同感ね。あのテンザとかいうやつをエセ占い師ごと殺してやるわ」
奈々子が彩音からカードを取る。元の手持ちを触れながらチェック、一枚取って新しく手にしたやつと一緒に破棄する。
「うわー、殺伐としてるねー。ま、わたしは魔法使い退治も魔獣退治も面白いからやってるんだけど」
彩音が美羽羅からカードを取る。口を尖らせて美羽羅に手の平を出す、同じ数字はなかったみたいね。
「いや、あなた達に魔法使いや悪魔としてのプライドはないのかしら?」
美羽羅が言う。
「ない」
「ないわね」
「ないよ」
美海以外のあたし達三人が口を揃える。
今度は美羽羅も当たりを引いた様子ね。
「変える気はないんですか?」
美海の手があたしの手札に伸びる、捨てられる美海の手札。
「ないわ」
「ない」
「ないよ」
再び否定するあたし達。
「正義の味方とか犠牲者を増やさないこととか色々あるけど元は復讐、かしらね」
あたしの手札がまた減る。
「ま、あたしはあくまで悪魔活動が基本だけ、ど」
奈々子が彩音に手伸ばすけど手札は減らない、と。あくまで悪魔活動て何の親父ギャグよ。
「そういう美羽羅ちゃんと美海ちゃんは?」
彩音の手札は今回減少したみたいね。こっちだけ答えてそっちはノーコメントとかなしにしてちょうだいね。
「代々魔法使いをやってる家系としてのプライド、かしら」
今回美羽羅の引いたカードは外れね。
「わたしもです、任されたからには最後までちゃんとやらないと」
美海の手札は今回減少。
「は、つまんない理由ね、かっこつけちゃって」
あ、今回あたしの引いたカードは外れね。
「人間もう少し欲望に忠実でいいんじゃないかしら?わたし悪魔だけど」
奈々子が首をしかめる。あら、外れね。
「なんか他に戦う理由、ないの?」
彩音のカードは減少。
「ないからあなた達に話してるんでしょう………がと」
美羽羅からあーという声が出る。
「本当、困りましたよ」
美海がであたしからカードを取る。減少する手札。ん、こいつの手札あたし達の中で一番減ってないかしら?
それから話すのもめんどくさくなってあたし達はババ抜きに集中した。
勝負が続くと美羽羅とあたしだけになる。まさかあたしとしたことが、油断したわ。互いに残り二枚、あたしの手にジョーカーがある。さあ、来なさい美羽羅!
美羽羅の手が飛ぶあたしの手から消えるジョーカー。絶望に歪む美羽羅。ふ、勝ったわね。あたしは美羽羅からカードを取る、よし同じ数字!上がりと!
「あーあ、負けちゃった」
「ふん、あんたは考えごとし過ぎなのよ。ていうか戦う理由とかアンダーウィザーズを倒すとか悪いやつらを倒すとか単純なのでいいのよ」
「そういうものかしら?」
「そういうものよ」
「とりあえず立ちはだかる人達はみんな倒せばいいんですよね」
美海が力強く拳を握る。
「分かってるじゃない美海」
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