十九話 美羽羅、仮面騎士と司の再開
司が町で偶然会った少女が天使としての司を見て突如発狂した。少女がおとなしくなると司は少女についていたメイドと共に彼女の屋敷へ来ていた。少女をメイドが寝かしつける。
「一体お嬢様はどうしたというのだ」
「さあ、僕を見て何か思いつめちゃったみたいだけど」
少女つきのメイド、雨宮恵子が呟き司はさっぱり分からないという感じで答える。恵子には適当に答えた司だが反応を見る限り少女はもしかしたら夢で見た記憶の怪物ではないかと疑うばかりだ。
「ありさっちー、遊びに来たよー」
メイドが付き従う少女、魔王院ありさ(まおういんありさ)の私室に新たな来客が現れる。その顔を見て司とその相手は驚愕の声を上げる。
『あー!』
新たな来客は先日李梨花に敗れ謎の仮面騎士に連れてかれた海浦美羽羅だったのだ。
「おやおや美羽羅お嬢様、あなたのような負け犬風情がなぜこんなところに?」
「あらあら天使様、あなたこそなぜウィザードマテリアルの身でありながら我々アンダーウィザーズの屋敷にいるんです?」
「ほう、ここは敵の本丸でしたか。ちょうどいい、久しぶりに稽古つけてあげましょうかお嬢様?」
「稽古と言わず殺すつもりで来ていいんですよ?」
『はあぁぁぁ!』
司と美羽羅は変身もせず拳を突き出す。
『え?』
が、その拳が届くことはなかった。何者かが間に入り二人を投げたのだ。司は部屋の壁に美羽羅は扉が開いていたため部屋を通り抜け通路の壁にそれぞれ激突する。
「おい、貴様ら。お嬢様の部屋で狼藉とはいい度胸だな、命を出す覚悟はいいか?」
恵子が司と美羽羅投げ壁にぶつけたのだ。
「そんな、冗談ですよ冗談」
「そうそう、ちょっと運動しようかなって思っただけで……」
「ああ?」
司と美羽羅は必死に言い訳のようなものを口にするが恵子には通用しない。鋭い目つきで二人を睨むばかりだ。
「ちょ、ちょちょちょ、美羽羅ちゃんどうするの?!」
司は通常ではありえないスピードで美羽羅に駆け寄り耳打ちする。
「知らないわよ、てかあれどこのヤクザ?」
「とにかく、ここは逃げよう」
「え、ええ」
司と美羽羅は先ほどの部屋から脱兎のごとく離れて行った。
「ゼェ、ゼェ……、何なのさこの屋敷のメイドは」
「分かんない、多分あの人がおかしいだけじゃない。ゼェ、ゼェ」
広間の辺りに出ると司と美羽羅は息も絶え絶えになってしまう。
「やあ、美羽羅女史。こんなところでどうしたんだい?」
「あ、鬼道さん」
見ればスーツにピンクシャツ、金のカフスボタンを付けた男が現れる。
「鬼道さんて?」
司が聞く。
「鬼道京之助さん、この間あたしを助けてくれた人だよ」
美羽羅が李梨花との戦いで負けて倒れた時の話だ。
「あ……」
「おや、君は……あの時の……?」
京之助が司の存在に気づく。
「あ、どうも」
司が手を軽く上げる。
「どうだ?ここでこの間の決着でも付けるか?」
「いや、今はちょっと……」
「おや、お疲れの様子とは、美羽羅女史とかけっこでもしてたかい?」
「まあ、そんなところです。ところでこの屋敷のお嬢様付きのメイドさんて何者です?」
「私にも分からないな、五年前からふらっと現れてお嬢様付きになったとしか」
「あ、ところで……」
司がもったいぶって切り出す。
次回、敵の本拠地に乗り込む、かもしれない




